日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2022.10.03)
「子どもに我慢をさせたくない」-子ども給付金を利用した保護者BさんとCさんの思い-
7人に1人ー現在、日本で相対的貧困下におかれた子どもたちの割合です。
セーブ・ザ・チルドレンは、2022年春、新入学に関わる家庭の経済的負担を軽減するために、経済的に困難な状態にあり、かつ病気や障害がある、在留資格がないなど生活上で特定の困難がある世帯の中学生・高校生を対象にして給付金を提供する「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 〜新入学サポート2022〜」を行いました。
今回、「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金〜新入学サポー2022〜」を利用した世帯の保護者に、給付金を利用した経緯や、現在の状況などについて話を聞きました。
Aさんのインタビューはこちらhttps://bit.ly/3Do91NB
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「子どもたちが食べたいものがあっても、『それは体に悪い』とうそをついて買ってあげられなかった」
Bさん 中部地方在住
Bさんは、父子家庭で高校生と大学生の2人の子どもを育てています。10年ほど前に脳梗塞で倒れ、今でも後遺症のために生活や仕事上の困難を抱えています。
給付金を受け取ったことで、Bさん自身は「すごく助かりました」と話してくれました。
今回の給付金は息子さんの高校入学金や教科書の購入の一部に使ったというBさん。実際には制服代や通学に必要なものを揃えるため全部で10万円以上かかったと言います。7月以降に授業で使うパソコンは、入学時に購入できなかったため、後から購入することにしています。
病気の後遺症による厳しい家計状況
新型コロナウイルス感染症の家計への影響について質問すると、「もともと苦しいので、あまり変わらない」という答えが返ってきました。Bさんは、父親が所有していた部品製造の工場で働いていますが、脳梗塞で倒れる前と比べると、今は5分の1程度の仕事量しかできません。
体の左側の自由があまりきかないので、手伝ってもらわないとできないこともあります。周りのサポートがあって、何とかできる範囲で仕事を続けています。しかし1ヶ月仕事をしても、祖母を含めた家族4人が食べていくのがやっとの収入しか稼ぐことができず、病気の後遺症で利用している障害年金を足しても日々の暮らしに余裕はありません。
子どもに我慢させてしまったこと
これまで、近所の人が食べ物を分けてくれたり、子どもの通学用に自転車をゆずってもらったりなど、いろいろな人に助けてもらいながら生活してきました。
ほかにどのような支援があったら良かったかを聞いたところ、過去に子どもたちに我慢させてしまったことがあると話してくれました。
子どもたちが、塾や習い事に通いたいと言ったとき、通わせてあげたかったけれども、家計が厳しく通わせることができませんでした。「行っても無駄だ」などと言って、子どもたちに我慢させてしまいました。
また、子どもたちが食べたいものがあっても、「それは体に悪い」とうそをついて買ってあげられないこともありました。周りの子どもたちの間で流行っていたゲームも、「そんなのどうせ飽きるから」と言って、買ってあげられなかったそうです。
国や行政による給付金のような支援で、子どもたちが我慢することなく食べたり遊んだり、学んだりすることができれば良かったという、Bさんの気持ちが伝わってきました。
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「家族3人で住む家がないのが、何とかならないか」
Cさん 関東地方在住
Cさんは、現在2人の子どもを育てる母子家庭のひとり親です。2012年に中国から来日し、飲食店を営む親戚の家で暮らしています。Cさんは日本語での会話が難しいため、今回のインタビューは中国語の通訳を通して行いました。
Cさんの家族は、経済的に困難で、日本に来てからずっと親戚の家に身を寄せています。Cさん自身のアルバイト代と、自治体からの給付金で生活していて、親戚には一部生活費を払ってはいるものの、家賃も払えない状況と言います。
今回、セーブ・ザ・チルドレンが行った子ども給付金は、子どもが参加している日本語教室で知りました。
入学費の安い学校に進学したCさんのお子さん
Cさんは、子ども(現在高校1年生)の成績がいいことを、うれしそうに話してくれました。経済的な理由で塾に通うことはできませんが、自分で勉強をして、中学生のときはテストで100点をとっていました。
そのため大学進学率のいい高校へ進むことを希望しましたが、その学校の入学金が高いため諦めました。そのかわりに、中学校の先生に勧められて、入学費がほかの学校に比べて安い今の高校に決めたそうです。
高校入学に必要な費用は30万円以上
給付金はすべて、学校関係で必要なものの購入費に使いました。春冬用の制服だけでも6万5,000円かかり、他にも靴やカバン、夏用の制服、部活用の服などもあり、セーブ・ザ・チルドレンの給付金だけでは足りない状況だと言います。学校の授業用にパソコンも購入したので、高校入学にかかった費用は全部で30万円以上になりました。
日本語を母語としないCさんの状況
Cさんは日本語が分からないので、日常生活で困ったことがあると、日本語のできる親戚に聞いています。生活上で必要な手続きなど自分をうまく説明ができない場合は、親戚が代わりに電話して対応することがよくあるそうです。
また、Cさんの子どもたちは日本語でコミュニケーションが取れるので、学校のプリントなどは、子どもたち自身で確認してからCさんに話すようにしています。子どもたちが日本語を理解して説明してくれるためとても助かっていると言います。行政などが実施する給付金の情報は、日本語で書いてあることがほとんどなので、子どもたちが自分で書きこんで説明してくれました。
現在困っていることは、家族3人で住む家がないということです。
日本に来てからずっと親戚の家に居候している状況で、まわりとの交流もない状況です。中国から日本に来ている人たちで、同じような状況の人がいるのかどうかも分かりません。言語の壁もあるため行政への支援にも頼りにくいと感じます。
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今回お話を聞いたBさんとCさんは、ともに高校の入学費用の捻出に苦労していました。入学金や制服代などかさむ入学時の費用は経済的に困窮している家庭にとっては大きな負担です。
高校の入学にあたっては、高校生等奨学給付金という国の制度があり、入学に関する費用も対象の費目となっていますが、入学後に申請し、あとから振り込まれる仕組みになっているため、家庭の一時的な負担額が多くなっています。
さらに高校は義務教育ではなくなるため、入学金、教科書代などの教材費もかさみ、通学のための費用や、昼食代も家庭の負担となっています。
BさんとCさんは、子どもがやりたいことを経済的な理由で我慢せざるを得ない状況をもどかしく感じている様子でした。
経済的な状況に関わらず、すべての子どもに自分の学びたいと思うことや、学びたいと思う場所で学んだり、やりたいことを選択できる権利があります。そうした権利が侵害されないための公的な支援が求められています。
セーブ・ザ・チルドレンは、今後もこうした状況や声を国や社会に届け、すべての子どもが経済状況などの環境に左右されず、すこやかな成長や学びの機会を持てるために、子どもの学びに必要な支援や制度改善につなげていきたいと考えています。
(国内事業部 岩井)
セーブ・ザ・チルドレンは、2022年春、新入学に関わる家庭の経済的負担を軽減するために、経済的に困難な状態にあり、かつ病気や障害がある、在留資格がないなど生活上で特定の困難がある世帯の中学生・高校生を対象にして給付金を提供する「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 〜新入学サポート2022〜」を行いました。
今回、「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金〜新入学サポー2022〜」を利用した世帯の保護者に、給付金を利用した経緯や、現在の状況などについて話を聞きました。
Aさんのインタビューはこちらhttps://bit.ly/3Do91NB
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「子どもたちが食べたいものがあっても、『それは体に悪い』とうそをついて買ってあげられなかった」
Bさん 中部地方在住
Bさんは、父子家庭で高校生と大学生の2人の子どもを育てています。10年ほど前に脳梗塞で倒れ、今でも後遺症のために生活や仕事上の困難を抱えています。
給付金を受け取ったことで、Bさん自身は「すごく助かりました」と話してくれました。
今回の給付金は息子さんの高校入学金や教科書の購入の一部に使ったというBさん。実際には制服代や通学に必要なものを揃えるため全部で10万円以上かかったと言います。7月以降に授業で使うパソコンは、入学時に購入できなかったため、後から購入することにしています。
病気の後遺症による厳しい家計状況
新型コロナウイルス感染症の家計への影響について質問すると、「もともと苦しいので、あまり変わらない」という答えが返ってきました。Bさんは、父親が所有していた部品製造の工場で働いていますが、脳梗塞で倒れる前と比べると、今は5分の1程度の仕事量しかできません。
体の左側の自由があまりきかないので、手伝ってもらわないとできないこともあります。周りのサポートがあって、何とかできる範囲で仕事を続けています。しかし1ヶ月仕事をしても、祖母を含めた家族4人が食べていくのがやっとの収入しか稼ぐことができず、病気の後遺症で利用している障害年金を足しても日々の暮らしに余裕はありません。
子どもに我慢させてしまったこと
これまで、近所の人が食べ物を分けてくれたり、子どもの通学用に自転車をゆずってもらったりなど、いろいろな人に助けてもらいながら生活してきました。
ほかにどのような支援があったら良かったかを聞いたところ、過去に子どもたちに我慢させてしまったことがあると話してくれました。
子どもたちが、塾や習い事に通いたいと言ったとき、通わせてあげたかったけれども、家計が厳しく通わせることができませんでした。「行っても無駄だ」などと言って、子どもたちに我慢させてしまいました。
また、子どもたちが食べたいものがあっても、「それは体に悪い」とうそをついて買ってあげられないこともありました。周りの子どもたちの間で流行っていたゲームも、「そんなのどうせ飽きるから」と言って、買ってあげられなかったそうです。
国や行政による給付金のような支援で、子どもたちが我慢することなく食べたり遊んだり、学んだりすることができれば良かったという、Bさんの気持ちが伝わってきました。
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「家族3人で住む家がないのが、何とかならないか」
Cさん 関東地方在住
Cさんは、現在2人の子どもを育てる母子家庭のひとり親です。2012年に中国から来日し、飲食店を営む親戚の家で暮らしています。Cさんは日本語での会話が難しいため、今回のインタビューは中国語の通訳を通して行いました。
Cさんの家族は、経済的に困難で、日本に来てからずっと親戚の家に身を寄せています。Cさん自身のアルバイト代と、自治体からの給付金で生活していて、親戚には一部生活費を払ってはいるものの、家賃も払えない状況と言います。
今回、セーブ・ザ・チルドレンが行った子ども給付金は、子どもが参加している日本語教室で知りました。
入学費の安い学校に進学したCさんのお子さん
Cさんは、子ども(現在高校1年生)の成績がいいことを、うれしそうに話してくれました。経済的な理由で塾に通うことはできませんが、自分で勉強をして、中学生のときはテストで100点をとっていました。
そのため大学進学率のいい高校へ進むことを希望しましたが、その学校の入学金が高いため諦めました。そのかわりに、中学校の先生に勧められて、入学費がほかの学校に比べて安い今の高校に決めたそうです。
高校入学に必要な費用は30万円以上
給付金はすべて、学校関係で必要なものの購入費に使いました。春冬用の制服だけでも6万5,000円かかり、他にも靴やカバン、夏用の制服、部活用の服などもあり、セーブ・ザ・チルドレンの給付金だけでは足りない状況だと言います。学校の授業用にパソコンも購入したので、高校入学にかかった費用は全部で30万円以上になりました。
日本語を母語としないCさんの状況
Cさんは日本語が分からないので、日常生活で困ったことがあると、日本語のできる親戚に聞いています。生活上で必要な手続きなど自分をうまく説明ができない場合は、親戚が代わりに電話して対応することがよくあるそうです。
また、Cさんの子どもたちは日本語でコミュニケーションが取れるので、学校のプリントなどは、子どもたち自身で確認してからCさんに話すようにしています。子どもたちが日本語を理解して説明してくれるためとても助かっていると言います。行政などが実施する給付金の情報は、日本語で書いてあることがほとんどなので、子どもたちが自分で書きこんで説明してくれました。
現在困っていることは、家族3人で住む家がないということです。
日本に来てからずっと親戚の家に居候している状況で、まわりとの交流もない状況です。中国から日本に来ている人たちで、同じような状況の人がいるのかどうかも分かりません。言語の壁もあるため行政への支援にも頼りにくいと感じます。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
今回お話を聞いたBさんとCさんは、ともに高校の入学費用の捻出に苦労していました。入学金や制服代などかさむ入学時の費用は経済的に困窮している家庭にとっては大きな負担です。
高校の入学にあたっては、高校生等奨学給付金という国の制度があり、入学に関する費用も対象の費目となっていますが、入学後に申請し、あとから振り込まれる仕組みになっているため、家庭の一時的な負担額が多くなっています。
さらに高校は義務教育ではなくなるため、入学金、教科書代などの教材費もかさみ、通学のための費用や、昼食代も家庭の負担となっています。
BさんとCさんは、子どもがやりたいことを経済的な理由で我慢せざるを得ない状況をもどかしく感じている様子でした。
経済的な状況に関わらず、すべての子どもに自分の学びたいと思うことや、学びたいと思う場所で学んだり、やりたいことを選択できる権利があります。そうした権利が侵害されないための公的な支援が求められています。
セーブ・ザ・チルドレンは、今後もこうした状況や声を国や社会に届け、すべての子どもが経済状況などの環境に左右されず、すこやかな成長や学びの機会を持てるために、子どもの学びに必要な支援や制度改善につなげていきたいと考えています。
(国内事業部 岩井)