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日本/子どもの貧困問題解決
(公開日:2023.08.24)

【インタビュー】高校生への就学支援と外国につながる子どもへの日本語サポート:子ども給付金を利用した保護者の声:前編

 
セーブ・ザ・チルドレンは、経済的に困難な状況にあり、病気や障害がある、日本語を母語とせず支援を受けている、在留資格が不安定であるなど、生活上で特定の困難がある世帯の中学生・高校生を対象に新入学・卒業時期に給付金を提供する「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金〜新入学サポート2023〜」を行いました。


今回、近畿地方在住で、給付金を利用した世帯の保護者Hさんに、生活状況や日本語を母語としない子どもの学習面での困難などについて話を聞きました。


記事は前編と後編に分けて紹介します。後編の記事はこちら
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「中学校のときのシューズを無理して履いて練習してもらっています」
(高校1年生の父・Hさん、近畿地方在住)


印刷工場のパートとして働くHさんは、高校1年生の子どもと2人で暮らす父子家庭です。Hさん自身は、日本出身で日本国籍を持ち、日本語を母語としています。パートナーとは結婚せずに離れて暮らし、子どもは東南アジアの国で生まれ育ちました。しかし、子どもの養育環境に不安があり、数年前に子どもを呼び寄せ、日本で一緒に暮らしています。


■子どもが部活動で必要なものを買ってあげられない状況
今回の子ども給付金が受け取れるという通知を仕事場で確認し、「本当にうれしかった」と話すHさん。
「子ども給付金をもらえることになったから入学で必要なものを買いに行こうと子どもに言ったら、すごく喜んでいました。子どもが自分で選んだカバンと靴を買えました。」


Hさんは、給付金が決定するまでは、新入学の時期を控え、子どもが希望しているものが買えないのではと不安を抱えていました。子どもが選んだものが無事に購入できて「すごく気持ちが楽になった」と言います。子どもは、給付金を利用して購入した靴や通学用のバッグで毎日楽しそうに高校に通っています。


しかし、所属するバスケットボール部の活動で必要なものが、経済的な理由で買ってあげられない状況が続きます。
「子どもは週3、4日ぐらいバスケの練習に行っています。ただ、体操服が1枚しかなく、授業で体育がある日は、体育の授業後にもう1回その体操服を着てバスケの練習に行ってもらっています。本人にしたら、汗もかいてるし気持ち悪いと思うんですが」


他の部員はバスケットボールの練習着を用意していますが、Hさんの子どもだけが体操服で練習に参加しています。その体操服も1枚しかないため、天気が悪いときは乾かないまま持っていかざるを得ないこともあると言います。


「中学校のときもバスケ部に入っていて、(そのときのシューズを今も履いているため)シューズが小さくなってきているから、買ってあげたいのですが、1万円を超えるような値段なので買ってあげられません。今は中学校のときのシューズを無理して履いて練習してもらっています」


子どもにやりたいことをやらせてあげたい一方、必要なものが十分に購入できていません。子どもが、我慢しなくてはならない経済状況を理解して「わかったよ」と言ってくれることに、Hさんは救われていると言います。
 



■国の給付金制度の運用に対する切実な思い
子どもが今年高校に入学し、高等学校等就学支援金と高校生等奨学給付金  に申し込みしました。しかし、すぐの給付とはならず、実際に子どもが必要なものを揃えるために利用できたのは、数ヶ月先のことでした。Hさんは、「早く振り込んでほしい」と訴えます。「必要なときにお金がないのが困るし、申請したらできるだけ早く給付して欲しいし、入学前支給とかあればより助かります。」


Hさんのように低所得世帯の子どもたちが高校入学後に利用できる教育費助成制度には、高校生等奨学給付金制度などがあります。しかし、部活動で必要な道具をそろえるだけの十分な費用の補助はなく、入学の時期に利用できる給付金制度はほとんどありません。


また、入学前の給付もなく、申請してから振り込みまでに時間がかかっているため、必要な時に必要なものを購入するなど利用できないという声は、他の保護者からもよく聞かれます。就学援助や高校生等奨学給付金の増額や、必要な時期の振り込みなど柔軟な運用が望まれます。


■日本語ができないことによる学校生活での困難
Hさんの子どもは来日後に日本語を学び始めたため、日本語学習の困難も語ってくれました。学校で友だちはたくさんできたそうですが、日常生活で「言葉の壁」を感じると言います。
「子どもは東南アジアで生まれ、日本に来て数年になりますが、まだ日本語で自分の気持ちをはっきり言うことができず、ちょっと口数は少ない方です。」


Hさん自身、子どもの母語は基本的な内容しか理解できないこともあって、子どもの気持ちや表現をすべて受け止めることは難しいそうです。子ども自身は明るく、親しみやすい性格で友だちもたくさんおり、日常的には困っていないように見えますが、学校で先生から子どもに伝える連絡事項など上手くHさんに伝えられないことも多く、Hさんが直接学校に連絡を取って確認することも多いそうです。


言葉が分からないまま学校生活を送ることは子どもにとって大きな負担であり、教室で孤立したり、基礎学力を上げることが難しくなったりして進学に影響することもあります。


しかし、外国につながる子どもへの日本語教育は、自治体や地域によって対応に差があるのが現状です。外国につながる子どもの割合が少ない場合、学校での日本語支援が十分に整わず、子ども自身の努力で言葉の壁の困難を乗り越えるしかないこともあります。
 


■新型コロナウイルス感染症拡大により中止が続く地域の日本語教室
Hさん自身は子どもの来日以来、日本語能力を心配し学校以外でもさまざまなサポートを探していました。地域で自治体が開催する日本語教室に参加を希望していましたが、新型コロナウイルス感染症の拡大で中止が続いたそうです。
「地域の日本語教室を探し、1回だけ行きました。外国から日本に働きに来ている人に日本語をしっかり教えているような教室でした。うちの子は、小学生だったので、結構遊びやゲーム感覚で日本語を教えてくれましたね。子どもが楽しそうに学べ、来週も行くと言っていたのですが、結局コロナで中止となってしまいました。」


地域によっては、自治体やNPOが日本語教室を実施していることも多くあります。しかし、感染症拡大予防のため、長く中止となっているところもあります。生活に欠かせない言語学習が途切れてしまうことは、外国ルーツの子どもたちにとって大きな損失です。


また、親も外国出身などの場合、Hさんのように自ら子どものために日本語教室を探すことが難しい家庭もあります。どのような家庭であっても、日本語学習に必要な情報を得られるような仕組みづくりが必要であることが、Hさんのお話からうかがえました。

(国内事業部 岩井さくら)
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続いて、後編の記事ではHさんの子どもが学校で受けた日本語指導や高校進学の状況についてお聞きしました。
後編の記事はこちら

セーブ・ザ・チルドレンでは新入学サポート以外にも、子どもの貧困問題解決に向けさまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は随時こちらのページで更新しています。ご関心がある方はぜひご覧ください。


 

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