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日本/子どもの貧困問題解決
(公開日:2022.09.19)

「子どもに我慢をさせたくない」-子ども給付金を利用した保護者Aさんの思い-

 
7人に1人―現在、日本で相対的貧困下におかれた子どもたちの割合です。

セーブ・ザ・チルドレンは、2022年春、新入学に関わる家庭の経済的負担を軽減するために、経済的に困難な状態にあり、かつ病気や障害がある、在留資格がないなど生活上で特定の困難がある世帯の中学生・高校生を対象にして給付金を提供する「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金〜新入学サポート2022〜」を行いました。

今回、「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 新入学サポート2022」を利用した世帯の保護者に、給付金を利用した経緯や、現在の状況などについて話を聞きました。

「いつも我慢させているので、お下がりでなく、子どもが恥ずかしくないものをそろえることができて、すごく助かりました」
Aさん(九州地方在住)

お話を聞いたAさんは、現在中学1年生と4歳の子ども、夫の4人家族です。夫に心臓の病気があり、Aさん一人の収入で家族の生活を支えています。

セーブ・ザ・チルドレンの給付金を利用しようとしたきっかけは、「子どもが中学校に入学するにあたって学用品をそろえるのに、予想していた以上に費用がかかって困っていたとき、子どもが学校から申込書をもらってきたんです。受かるか受からないかわからないけど申請するだけしてみようと思いました」と、話してくれました。


新型コロナウイルス感染症拡大による生活への影響
Aさんは、当時、新型コロナウイルス感染症の濃厚接触者になったことで仕事に行けない期間がありました。夜勤にも入れず、その分の手当てが給料に反映されず少なくなってしまい、生活がきつかったと言います。
制服の受け渡しの日に手持ちのお金が足りず、給料が出るまで待ってもらって受け取りにいったりして、精神的にもつらかったそうです。おかずを減らして食費を削ったり、光熱費の支払いを1ヶ月遅らせたりしたこともありました。

かさむ入学準備費用

制服の購入などは、あらかじめ予想できたそうですが、自転車通学に必要なヘルメットや、筆記用具も新しく買わないといけないことが後からわかりました。学校指定のカッターシャツもそろえると費用がかさんでしまうので、市販のシャツを探したけれど、それでも思っていた以上に費用がかかったと言います。

ヘルメットやカッターシャツは、知り合いからお下がりを譲ってもらったものの、ヘルメットは傷があったり前の持ち主の名前が書かれていました。また、カッターシャツは黄ばみや破れもあり、子どもにそのまま使わせようか、生活費を削って無理にでも新しく買おうかと悩んでいました。

Aさんの家庭では、学校にかかる費用負担を軽減するために、公的支援である就学援助制度を利用しています。就学援助制度では、新入学児童生徒の学用品費などのために、中学入学にあたって約6万円の費用が給付されます*。しかし、このように卒業や新入学にかかる高額な費用を賄えない現状があります。

Aさんは、今回の「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金」で、新しいヘルメットや新品のカッターシャツを購入しました。また、文房具も必要最低限ではなく、ほかの子たちが持っているような流行りのキャラクターがついているものや色ペンなど、子どもが欲しがっているものを購入できたそうです。

さらに、学校で体育の着替えなどで子どもが恥ずかしい思いをしないように、新しい下着などもそろえることができ、「とても助かりました」と話してくれました。
子どもには「お下がりで我慢してくれる?」と話していたけれども、子どもは友だちから笑われないかと心配していました。ですが、新しいものが買えて子どもも「よかった」と言って学校に通っていると言います。

家族のケアを担う子どもの様子

また、父親(Aさんの夫)が病気を患っていることで、4歳の妹の世話を中学1年生の姉が担うこともあります。

Aさんが夜勤に行くときは、お姉さんがご飯を温めて妹に食べさせたり、寝かしつけをするそうです。そして、月に1回ほど、父親が血圧が高くて朝起きられない時に、Aさんが夜勤明けで帰ってくるまで、お姉さんが学校に行くのを遅らせて妹を見てくれることもあります。Aさんが仕事に行かないと生活ができないので、「頼りになるのが中学1年生の長女になってしまう」と言います。

そういった生活の中で、今回のような給付金や、(勉強する時間を削って)家族のケアをする子どもがきちんと学びのサポートが受けられる、といった支援があると助かると訴えます。



政府や社会に期待すること
配偶者の病気のためにAさんの収入だけで生活をしていますが、公的支援制度にある収入要件をぎりぎり満たせないこともあり、さまざまな支援を受けられないということにも制度上の課題を感じています。

Aさん一家の場合、Aさん一人の収入で生活していてもひとり親家庭の給付金などは利用できません。市の広報などで紹介されている公的や民間の給付金でも、対象に当てはまらないことが多いそうです。

Aさんと同じような状況の人がたくさんいるのではないか、ということも踏まえて、国や社会への要望についてこう話してくれました。
「最近は物価が上がっているので、1つの商品だけ見るとそうでもないかもしれないけれど、いろんなものを買ったら、前は収まっていた金額を超えてだいぶ高くなってしまう。給付金の対象がもう少し広がればいい」。

今回お話を聞いたAさんのように、かさむ入学費用の捻出に苦労している家庭では、手放しに子どもの新入学を喜べない現状があります。Aさんのお話からは、子どもの気持ちを傷つけないように学びの環境を整えるにはどうしたらよいか、と葛藤する保護者の切実な姿が浮かび上がりました。

そして、義務教育なので本来なら無償であるはずの中学校で、学びのために高額な費用が必要になっているという問題とともに、小学校や中学校の入学にあたって利用できる就学援助制度など公的支援制度の改善の必要性もうかがえます。

セーブ・ザ・チルドレンは、今後もこうした状況や声を国や社会に届け、すべての子どもが経済状況などの環境に左右されず、すこやかな成長や学びの機会を持てるために、必要な支援や制度改善につなげていきたいと考えています。

*文部科学省『就学援助実施状況等調査結果(令和3年12月)』

(国内事業部 岩井)

 

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