日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2023.10.20)
「離婚前のひとり親へも実態に即した支援を」子どもの食応援ボックスを受け取った保護者Hさんの声
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「数年別居していても、児童扶養手当は受け取れません」(関東地方在住、Hさん)
「セーブ・ザ・チルドレンの子どもの食応援ボックスは、お米や副菜などバランスが考えられていて、これがあれば、子どもと生きていけると思いました。」と、今回利用した「夏休み 子どもの食 応援ボックス」の感想を話してくれました。
Hさんは、数年前から夫と別居し、世帯も生計も分けています。別居中の夫から養育費は一切受け取っておらず、子どもと一緒に暮らし、子どもに関わる費用はすべてHさんが賄っています。しかし、離婚は成立していないため、制度上はひとり親とは認められておらず、ひとり親のための児童扶養手当を利用できません。
離婚調停中のひとり親が児童扶養手当を利用できる場合もありますが、Hさんの状況では、市役所に何度相談しても利用にはつながりませんでした。
「別居中の夫が、子どもの扶養を外さないんです。そのため、夫も子育てに関与していると判断されてしまって、児童扶養手当も利用できないようです。実際は私が子どもを育てているので私も扶養申請していますが、子どもが16歳になって扶養控除の対象になったら、年収の高い方、つまり夫の扶養になってしまう見込みです。」 Hさんは税務署にも相談していますが、年収の高い方の夫の扶養になってしまうのは、夫が扶養を外す申請をしない限り仕方がないとの回答だったそうです。
「児童手当は、住民票を確認してもらって、夫とは同居せず私と子どもで住んでいることが認められて利用できたので、児童扶養手当やひとり親の医療費控除も同様にしてほしいと思っています。」 養育費については、裁判所の権限で給与から強制執行することも制度上可能ですが、Hさんの夫は自営業のため、この制度を利用することはできません。
■「いろいろな体験をして視野を広げてほしいが・・・」
Hさんの子どもは今年から中学生になりました。
平日は部活動に通うHさんの子どもですが、土日や長期休暇に家族で出かける家計の余裕はありません。
「学校の友だちはきっと夏休みにどこかに行った、という話になると思いますが、我が家では難しく、体験の差が同級生と出てしまうことを危惧しています。視野を広げるためにももっといろいろな体験をさせてあげたいのですが、そうしたサポートはなかなか見つけることができません」
経済的に困難な状況にある世帯向けに、さまざまな体験機会の提供をしている自治体や民間団体もありますが、そうした情報を役所の窓口に行って調べるには、平日に仕事を休んで行かなければなりません。
「離婚が成立したら児童扶養手当を利用できるので、少し体験活動などもさせてあげられるかと思いましたが、児童扶養手当は所得の限度額があり、働けば働くほど手当は減らされてしまいます。これでは生活の自立も、まして体験活動への参加も難しいと感じています」
Hさんのように、離婚成立前のひとり親世帯は、実質はひとり親であっても、さまざまなひとり親支援制度の対象外となってしまう場合があり、より困難な状況に置かれることがあります。児童手当に関しては、実質ひとり親であっても子ども本人と同一住所の養育者が受け取れるという改善がなされていますが、児童扶養手当を含む他の制度に関しても養育の実態に即した柔軟な運用が求められます。また、離婚前のひとり親を含め、困難な状況にある世帯への支援制度の情報も、より分かりやすい周知が必要です。
セーブ・ザ・チルドレンでは、子どもの食応援ボックスや、多様なまなびの機会を提供する「体験プログラム」、給付金など、こうした経済的に困難な状況にある世帯への支援を引き続き行うとともに、すべての子どもが健康に生き、育ち、学ぶ権利を保障するよう、制度の改善について政府や自治体に訴えていきます。
(国内事業部 鳥塚早葵)
セーブ・ザ・チルドレンでは子どもの食応援ボックス以外にも、子どもの貧困問題解決に向けさまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は随時こちらのページで更新しています。ぜひご覧ください。