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日本/子どもの貧困問題解決
(公開日:2022.08.30)

「妊娠中・産後の一番の不安は経済的なこと」ハロー!ベビーボックスご利用のUさんへのインタビュー

 

セーブ・ザ・チルドレンは、20226月、初めての試みとして、誕生時から「健康に、安心、安全な環境で育つ」といった子どもの権利を保障するため、また、低所得世帯の育児費用の負担軽減を目的として、新生児に必要な育児用品を詰め合わせた「ハロー!ベビーボックス」の提供を行いました。初回となる20226月には、全国117世帯と、連携する10自治体、1医療機関に合計500箱を提供しました。


 今回、「ハロー!ベビーボックス」を申し込まれた後に、無事出産を終えたUさんに、ボックスを利用した経緯や、現在の状況などについて話を聞きました。




「産休は貰ってるけど、手当のようなものが一切ない」


お話を聞いたUさんは、現在7月に生まれたばかりの赤ちゃんと、夫の3人家族です。夫は外国人で日本語が得意ではないため、なかなか待遇の良い仕事を見つけることができず、夫の給料だけで生活していくことは大変です。


妊娠前はUさんも週に3回から4回、アルバイトをしていたため、2人の給料で生活していけましたが、妊娠を機に休職。産休育休といった制度は一切利用できないため、経済的な不安を抱えており、産後はなるべく早く仕事に復帰したいと思っています。

 

「(勤め先は)子どもが大事だから、子どもとの時間を大切にしてって、仕事は後でもいいからって。」

 

Uさんは勤め先の言うこともわかりますが、現実の問題として、生活費を稼ぐ必要があるため、友人に数時間預けて、少しでも働けないか考えています。





 

妊娠・出産にかかる費用―のしかかる経済的負担



今回、Uさんは妊娠と同時にガンが発覚しました。妊婦健診の補助券は自治体から貰いましたが、病気の検査代も合わせると支払いは高額になりました。また、妊婦健診は家から遠い病院だったため、車のガソリン代もかさみました。

 

「夫の給料もあまり高くないですし、妊婦健康診査費用の補助券を使用しても高くて、とても大変でした。出産時は(一時金を利用しても)私の場合、11万円支払いました。」

 

また、妊娠・出産には赤ちゃんを迎えるための育児用品の購入にもお金がかかります。Uさんの場合は、友人からの協力を得ることができました。

 

私の場合、全部中古ですよ。ベッドは友だちから1,000円で譲ってもらって、ベビーカーも友だちから無料でもらいました。」

 

妊娠・出産にかかる費用の助成については各自治体による妊婦健診の補助券や、健康保険法による出産一時金42万円の支給はありますが、補助券だけでは賄いきれない場合や、医療機関によっては一時金の42万円*以上かかる場合も多くあります。

 

妊娠中に体調面や職場の問題から仕事を辞めざるを得ず、また産休や育休といった公的制度を利用できない場合は、こうした妊娠・出産にかかる費用は大きな負担となります。

 

加えて、赤ちゃんを迎えるための育児用品も高額になりますが、ほとんどの自治体で経済的支援はありません。(先駆的な事例として、東京都はコロナ下の出産応援事業として10万円分の育児用品や支援サービスを利用できる制度を2021年(令和3年)1月から2023年(令和5年)3月までの3年間の期間限定で実施中です。)

 

 

周りの協力・支援


Uさんは近くに家族が住んでいるものの、子どもの頃に親のDVが原因で児童養護施設で暮らしていたこともあり、頼ることは難しい状況です。今回の「ハロー!ベビーボックス」については、退所後も何かと気にかけてくれる施設の先生が教えてれたということでした。

 

「(親は)孫ができることに関してはとてもよろこんでいますね。私にしてきたことへの罪滅ぼしかもしれませんが。手伝いとかは全くないですね。本当に緊急時しか関わってくれないです。(施設の先生は)今コロナだし、先生たちも仕事があるし、生活もあるしということで、全然もう23年くらい会ってないんですけど、連絡は月一で話してます。赤ちゃんが生まれた後でテレビカメラでつないで見せたら、よろこんでくれました。」

 

 

今回、「ハロー!ベビーボックス」の応募時に行った調査では、全体の約1割が「相談できる相手がいない」と答えました。近くに協力してくれる家族や、友人・知人がいない場合、孤立する妊婦の方も多い現状があります。

 

 

 

妊娠・出産期の経済的不安について


Uさんは妊娠中、そして産後の今も経済的不安が一番の心配事です。子育てにかかる費用については、就学時や学校・塾にかかる教育費が大きな問題となりますが、実際には妊娠・出産を通して子どもが生まれる前からすでに経済的負担はのしかかります。

 

特に低所得世帯では、妊婦健診費や出産時の入院費、育児用品の購入などが家計に与える負担は重く、今回の応募時のアンケートでも「生活が厳しく赤ちゃんに必要なものを何も買えていない」といった声が多く聴かれました。

 

昨今、日本国内でも、子どもの貧困対策として、生活の安定に向けて妊娠・出産期からの切れ目のない支援の重要性が広く認識されており、支援が必要な妊婦の把握や早期介入に力を入れている自治体が増えています。

 

一方で、妊娠・出産期を通した経済的支援については入院助産制度、出産費貸付制度などといった出産に関する制度はあるものの、妊娠を機に退職した場合や産休・育休といった制度を利用できない人にとって、生活費を補填するための制度はほとんどなく、経済的不安を抱えたまま出産を迎える妊婦も少なくありません。

 

セーブ・ザ・チルドレンは、生まれてくる赤ちゃんが健康に、安心、安全な環境で育っていけるよう、引き続き「ハロー!ベビーボックス」を通じて、誕生時からの支援や、行政による支援の拡充に向けて取り組んでいきます。

 

 


 






 

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