日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2023.03.17)
「子どもたちといられる時間を大事にしたい」−食の応援ボックスを受け取った保護者Gさんの声
セーブ・ザ・チルドレンは、2020年より、子どもたちの食の状況改善を目的に経済的に困難な状況にある家庭を対象に、食料品などを提供する「子どもの食 応援ボックス」を行ってきました。
2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響をより大きく受けたと考えられる地域を中心に提供してきましたが、2022年からは対象を全国に広げ、夏休みと冬休みの学校の長期休暇の時期に「子どもの食 応援ボックス」を実施しました。
今回、「冬休み 子どもの食 応援ボックス」を利用した世帯の保護者に、申し込んだ経緯や、現在の状況などについて話を聞きました。
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「子どもたちといられる時間を大事にしたい」
(Gさん、東北地域在住)
お話を聞いたGさんは、東北地域に住んでいるひとり親の男性です。数年前に離婚し、現在は、仕事を探しながら給付金や貸付などで家計をやりくりしています。
家族は、小学生の子ども2人との3人暮らしです。
ボックスが届いたときの様子について、「夕方で子どもたちもいたのでみんなでびっくり!開けたらお正月用におもちが入っていたので、お汁粉にしたり、のりを巻いたりして食べました。あとはやっぱりお米がすごく助かりました。育ち盛りで本当によく食べるので。子どもたちはお菓子をじゃんけんでとりあっていました」とうれしそうに話してくれました。
Gさんは元々営業職としてフルタイムで働いていましたが、離婚を機に退職し、現在は求職中です。子どもたちの送迎や家事などをするためにパートタイムで働ける仕事を探していますが、なかなか見つからないと言います。
「家に子どもだけという状況を作りたくないので、在宅でできたり、パートタイムで働けたりする仕事を希望しているのですが、男性のひとり親にはそうした仕事の門戸が非常に狭いと感じています。」
子どもたちのための時間を確保しようとすると、どうしても仕事の種類が限られてしまう、そうしたジレンマを父子家庭の視点から語ってくれました。
新しい資格を得て在宅勤務などもできるように、「もっと柔軟に、例えばプログラミングスキルを身に着けるための研修を受けられたりするといいのですが・・・」という希望があり、これまでもハローワークや役所に相談に行きました。
支援金を受け取りながら資格取得ができるような研修制度の利用について、窓口へ相談に行っても、担当者は資格取得に消極的だったと言います。
「通常の就職活動を案内されて、在宅勤務ができるような資格取得にはつながりませんでした」とGさん。
担当者はGさんの経歴を見て、資格取得がなくても働けるような職場を積極的に紹介してくれたようです。しかし、フルタイムの仕事に就けば、夜は子どもたちだけで過ごす日が増えることも考えられます。子どもたちとの時間を確保しながら在宅で働く、というGさんの希望がかなうような制度を利用することは難しかったと話してくれました。
また、Gさんの住む地域では他にシングルファーザーはおらず、ひとりで子育てをすると決めた当時は、「すごく悩んだ」と言います。
しかし、今はインターネットも活用しながら「給食のしみ落としたり、アイロンのやり方を調べたり。裁縫が苦手で針に糸を入れるのも苦手だったんですが、便利なグッズを買ってからは簡単にできるようになりました。」と、工夫しながら家事に取り組んでいる様子を教えてくれました。
一方、子どもの同級生の保護者が連絡をとりあうのは母親同士である場合が多いので、父親であることで難しさも感じていると言います。
そのような中でも何か分からないときは学校に連絡したり、地域の子育て相談なども活用しているGさん。ひとり親家庭同士でつながりたいと、SNSも立ち上げたと教えてくれました。そうしたつながりの中で、セーブ・ザ・チルドレンの活動も知ったと言います。
ちょうど新型コロナウイルス感染症の流行した時期とひとり親になった時期が重なり、緊急小口資金、生活総合支援資金などを「生き延びるために使いました」と話すGさんの家計に、決して余裕はありません。
上の子どもが中学生になるにあたり、制服などを購入するために就学援助の入学前手続きをしたようですが、6万円の援助はあるものの、結局10万円ほどかかることが心配だと言います。
中学に入ってからも就学援助制度を利用できるよう、継続手続きをしなくてはなりませんが、まだ体調が悪く手が付けられていないそうです。
Gさん自身が体調を崩してしまう時には、Gさんの体調を気遣いながら子どもたちは率先して手伝いをしてくれるそうです。
「申し訳ないなという気持ちもあるのですが、自分が横になっていると子どもが物をとってくれたり、湿布貼る?と気遣ってくれたり。お風呂掃除をしている子どもが歌を歌いながら楽しんでやってくれているのを見ると、本当にうれしいです。本当に助かっています」。
今、光熱費の節約のために、夜は1つの部屋に家族3人で寝ています。体調が良いときは子どもたちとSNSでルームツアーの動画を見ながら、いつかこういう大きな家に住みたいね、と話しているそうです。
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今回お話を聞いたGさんは、子どもたちのために家事や送迎などを行いながら職を探していましたが、ひとり親の男性がパートタイムで就ける仕事が少ないという問題に直面していました。
また、自ら親同士のつながりをつくろうと奮闘していましたが、自分からそのようなつながりを作るのが難しい保護者もいます。Gさんのお話からは、ひとり親の男性ならではの視点に立った支援の必要性も浮かび上がりました。
さらに、さまざまな公的支援金を利用しながら厳しい家計をやりくりしていましたが、中学校の入学費用は就学援助制度があっても十分ではありません。
卒業・入学の時期を不安な気持ちで過ごす子どもや保護者は少なくなく、セーブ・ザ・チルドレンはこれまで一貫して、教育にかかる私費負担を軽減するよう制度改善を訴えてきました。
2023年4月は、入学や進級の喜ばしい節目であると同時に、こども家庭庁が発足する月でもあります。こども家庭庁は、その設置法第3条で、子どもの成長において、発達の程度に応じてその意見を尊重し、最善の利益を優先して、子育て支援や子どもの権利を保障するための取り組みをすることが任務であると定めています。
子どもたちが新たな節目を経済的不安なく安心して迎えることができるよう、セーブ・ザ・チルドレンは、これからも、日本政府に対して経済的に困難な状況にある子育て世帯への迅速な支援を講じるよう求めていきます。
※「食の応援ボックス」を受け取った保護者Dさんのインタビューはこちら
※「食の応援ボックス」を受け取った保護者Eさんのインタビューはこちら
※「食の応援ボックス」を受け取った保護者Fさんのインタビューはこちら
※新入学サポート2022を利用した保護者Aさんのインタビューはこちら、BさんCさんのインタビューはこちら
(国内事業部 鳥塚早葵)
2020年と2021年は、新型コロナウイルス感染症の影響をより大きく受けたと考えられる地域を中心に提供してきましたが、2022年からは対象を全国に広げ、夏休みと冬休みの学校の長期休暇の時期に「子どもの食 応援ボックス」を実施しました。
今回、「冬休み 子どもの食 応援ボックス」を利用した世帯の保護者に、申し込んだ経緯や、現在の状況などについて話を聞きました。
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「子どもたちといられる時間を大事にしたい」
(Gさん、東北地域在住)
お話を聞いたGさんは、東北地域に住んでいるひとり親の男性です。数年前に離婚し、現在は、仕事を探しながら給付金や貸付などで家計をやりくりしています。
家族は、小学生の子ども2人との3人暮らしです。
ボックスが届いたときの様子について、「夕方で子どもたちもいたのでみんなでびっくり!開けたらお正月用におもちが入っていたので、お汁粉にしたり、のりを巻いたりして食べました。あとはやっぱりお米がすごく助かりました。育ち盛りで本当によく食べるので。子どもたちはお菓子をじゃんけんでとりあっていました」とうれしそうに話してくれました。
Gさんは元々営業職としてフルタイムで働いていましたが、離婚を機に退職し、現在は求職中です。子どもたちの送迎や家事などをするためにパートタイムで働ける仕事を探していますが、なかなか見つからないと言います。
「家に子どもだけという状況を作りたくないので、在宅でできたり、パートタイムで働けたりする仕事を希望しているのですが、男性のひとり親にはそうした仕事の門戸が非常に狭いと感じています。」
子どもたちのための時間を確保しようとすると、どうしても仕事の種類が限られてしまう、そうしたジレンマを父子家庭の視点から語ってくれました。
新しい資格を得て在宅勤務などもできるように、「もっと柔軟に、例えばプログラミングスキルを身に着けるための研修を受けられたりするといいのですが・・・」という希望があり、これまでもハローワークや役所に相談に行きました。
支援金を受け取りながら資格取得ができるような研修制度の利用について、窓口へ相談に行っても、担当者は資格取得に消極的だったと言います。
「通常の就職活動を案内されて、在宅勤務ができるような資格取得にはつながりませんでした」とGさん。
担当者はGさんの経歴を見て、資格取得がなくても働けるような職場を積極的に紹介してくれたようです。しかし、フルタイムの仕事に就けば、夜は子どもたちだけで過ごす日が増えることも考えられます。子どもたちとの時間を確保しながら在宅で働く、というGさんの希望がかなうような制度を利用することは難しかったと話してくれました。
また、Gさんの住む地域では他にシングルファーザーはおらず、ひとりで子育てをすると決めた当時は、「すごく悩んだ」と言います。
しかし、今はインターネットも活用しながら「給食のしみ落としたり、アイロンのやり方を調べたり。裁縫が苦手で針に糸を入れるのも苦手だったんですが、便利なグッズを買ってからは簡単にできるようになりました。」と、工夫しながら家事に取り組んでいる様子を教えてくれました。
一方、子どもの同級生の保護者が連絡をとりあうのは母親同士である場合が多いので、父親であることで難しさも感じていると言います。
そのような中でも何か分からないときは学校に連絡したり、地域の子育て相談なども活用しているGさん。ひとり親家庭同士でつながりたいと、SNSも立ち上げたと教えてくれました。そうしたつながりの中で、セーブ・ザ・チルドレンの活動も知ったと言います。
ちょうど新型コロナウイルス感染症の流行した時期とひとり親になった時期が重なり、緊急小口資金、生活総合支援資金などを「生き延びるために使いました」と話すGさんの家計に、決して余裕はありません。
上の子どもが中学生になるにあたり、制服などを購入するために就学援助の入学前手続きをしたようですが、6万円の援助はあるものの、結局10万円ほどかかることが心配だと言います。
中学に入ってからも就学援助制度を利用できるよう、継続手続きをしなくてはなりませんが、まだ体調が悪く手が付けられていないそうです。
Gさん自身が体調を崩してしまう時には、Gさんの体調を気遣いながら子どもたちは率先して手伝いをしてくれるそうです。
「申し訳ないなという気持ちもあるのですが、自分が横になっていると子どもが物をとってくれたり、湿布貼る?と気遣ってくれたり。お風呂掃除をしている子どもが歌を歌いながら楽しんでやってくれているのを見ると、本当にうれしいです。本当に助かっています」。
今、光熱費の節約のために、夜は1つの部屋に家族3人で寝ています。体調が良いときは子どもたちとSNSでルームツアーの動画を見ながら、いつかこういう大きな家に住みたいね、と話しているそうです。
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今回お話を聞いたGさんは、子どもたちのために家事や送迎などを行いながら職を探していましたが、ひとり親の男性がパートタイムで就ける仕事が少ないという問題に直面していました。
また、自ら親同士のつながりをつくろうと奮闘していましたが、自分からそのようなつながりを作るのが難しい保護者もいます。Gさんのお話からは、ひとり親の男性ならではの視点に立った支援の必要性も浮かび上がりました。
さらに、さまざまな公的支援金を利用しながら厳しい家計をやりくりしていましたが、中学校の入学費用は就学援助制度があっても十分ではありません。
卒業・入学の時期を不安な気持ちで過ごす子どもや保護者は少なくなく、セーブ・ザ・チルドレンはこれまで一貫して、教育にかかる私費負担を軽減するよう制度改善を訴えてきました。
2023年4月は、入学や進級の喜ばしい節目であると同時に、こども家庭庁が発足する月でもあります。こども家庭庁は、その設置法第3条で、子どもの成長において、発達の程度に応じてその意見を尊重し、最善の利益を優先して、子育て支援や子どもの権利を保障するための取り組みをすることが任務であると定めています。
子どもたちが新たな節目を経済的不安なく安心して迎えることができるよう、セーブ・ザ・チルドレンは、これからも、日本政府に対して経済的に困難な状況にある子育て世帯への迅速な支援を講じるよう求めていきます。
※「食の応援ボックス」を受け取った保護者Dさんのインタビューはこちら
※「食の応援ボックス」を受け取った保護者Eさんのインタビューはこちら
※「食の応援ボックス」を受け取った保護者Fさんのインタビューはこちら
※新入学サポート2022を利用した保護者Aさんのインタビューはこちら、BさんCさんのインタビューはこちら
(国内事業部 鳥塚早葵)