日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2024.06.21)
子どもの貧困の“解消”へ―子どもの貧困対策法改正を受けて―
2024年6月19日、「子どもの貧困対策の推進に関する法律」の改正案が、参議院本会議にて可決、成立しました。
※2024年6月19日、参議院本会議での採決の様子(参議院インターネット審議中継より)
セーブ・ザ・チルドレンは、法改正に向けて、子ども・若者の貧困対策に取り組む他団体と連携して共同提言を今年3月に公表し、超党派「子どもの貧困対策推進議員連盟」に提出するなど、国会議員や省庁関係者に対して働きかけてきました。今回の法改正では、共同提言の内容も多く盛り込まれています。
最も大きな変更の一つは、法律名が「子どもの貧困対策推進法」から「こどもの貧困の解消に向けた対策推進法」へと改称された点です。対策を推進するのみならず、子どもの貧困をなくす、解消することが強く打ち出されています。
第1条(目的)においては、「貧困により、こどもが適切な養育・教育・医療を受けられないこと、多様な体験の機会を得られないこと」など、貧困によって生じる具体的な課題を明示するとともに、「こどもがその権利利益を害され、社会から孤立することのないよう」と法律の目的が明確化されました。
また、第3条(基本理念)では「貧困により、こどもがその権利利益を害され及び社会から孤立することが深刻な問題」と、貧困が子どもの権利の侵害であると明記されています。
子どもの権利の実現を目指すセーブ・ザ・チルドレンは、今回の法改正を通じて、子どもの貧困の解消を目指すことが法律名に冠され、貧困による権利侵害が生じないよう目的・基本理念に掲げられたことを高く評価しています。
他にも、現在の子どもの貧困の解消とともに将来の子どもの貧困を予防すること、妊娠から出産までの切れ目ない支援、子どもの貧困が家族の責任のみではなく社会的に対策を推進する課題であることも明記されており(第3条)、国の責務としてより一層の対策を推進することが読み取れます。
第2章(基本的施策)では、生活支援の対象を「子ども・保護者」から「こども・その家族」に変更し、「住居の確保・保健医療サービス利用の支援」が追加されています。また、保護者の就労支援においては「雇用の安定」が明記され、子どもの貧困の指標に「ひとり親世帯の養育費受領率」が加わるなど、より貧困の実態に即した施策推進と検証を図っていく内容に改定されました。
一方、共同提言で強調した、経済状況による教育格差の改善、公教育の体制整備、教育の無償化といった教育に関する支援については、「こどもに対する学校教育の充実」、「学校教育の体制の整備」が追記されるにとどまりました。教育の無償化については、セーブ・ザ・チルドレンが経済的に困難な状況にある子育て世帯に行った調査でも、小中高校にかかる費用の無償化を求める声は圧倒的に多い現状です。同様の調査結果がメディアでも報道されており、その対策を推進することは急務です。
セーブ・ザ・チルドレンは、今回の法改正によって明記された内容が実効性のある具体策として進むのか注視するとともに、学ぶ権利をはじめとする子どもの権利保障の観点から、子どもの貧困の解消に向けた対策が拡充するよう、今後も働きかけを続けていきます*。
私たちは、政策提言活動以外にも、子どもの貧困問題解決に向け、さまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は随時こちらのページで紹介しています。ぜひご覧ください。
*公益財団法人あすのば、認定NPO法人キッズドア、特定非営利活動法人しんぐるまざあず・ふぉーらむ、認定特定非営利活動法人Learning for Allらとともに行ってきた、子どもの貧困対策法改正に向けた働きかけについての報告はこちら。
(報告:国内事業部 田代光恵)