日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2018.11.06)
ひとり親家庭を支援するためのイベントを宮城県石巻市で開催しました(2018年7月)
セーブ・ザ・チルドレンは、2017年から宮城県石巻市で、ひとり親家庭の保護者が生活や子育てに役立つ情報を知ることができるように、また、子どもたちが多様な活動に参加できるように、ひとり親家庭を支援するためのイベントを開催しています。2018年の第2回目は、これまでの活動のアンケート結果等を通じて、ひとり親家庭にとって家族での遠出が難しい傾向にあることを受け、夏休みの思い出となるよう、親子で一緒に参加できるイベントを7月28日に開催しました。
(2018年度第1回ひとり親家庭応援イベント@石巻のブログはこちら )
◆親子で美術館にお出かけ
今回のイベントには、保護者8人、子ども10人の8組の親子が参加しました。宮城県大崎市にある感覚ミュージアムを自由に見学し、親子でのキャンドル作りや子どもだけでの缶カラカリンバ作りを体験しました。バスでの移動時間にも親子の会話が弾んでおり、親子でゆっくりとした時間を過ごせたようで、実施後のアンケートでは以下のような参加者からの声がありました。
〜保護者〜
「普段、一人で連れてこられない場所で普段やらないことをやらせていただき楽しかった。」(30代母・子ども小1)
「親子でゆっくり見学でき、ツアーのようなかたちで参加できたことで子どもに集中できたので良かったです。」(30代母・子ども小5と小3)
〜子ども〜
「学校の合宿でも体験できないようなものや場所にいけて、とても勉強になった。他学年ともふれあえてよかったです! すごくたのしかったので夏休みのいい思い出になりました! 」(高1女子)
「キャンドル作りや楽器を作るのがとっても楽しかったです!感覚ミュージアムがとても楽しかったです!」(小5女子)
今回のイベントを通して、親子の夏休みの思い出をつくる機会を提供することができ、子どもたちにとっても、他学年との交流や体験活動の機会になったようです。
◆保護者同士の交流会
子どもがものづくりのワークショップをしている間、参加した保護者同士が、日頃子育てで感じていることや悩みを共有する交流会を設けました。参加者同士がお互いのことを知り、子育てで困っていることを出し合いながら、必要な支援について考えました。保護者からは、以下のような声があがりました。
・就学援助制度の自治体間格差の解消(給食費や修学旅行費の立替が必要なところとそうでないところがあるなど)
・住宅費の補助
・対象・利用条件の拡大などの病児・病後児保育の充実(石巻市の現在の対象は保育所や幼稚園などに通っている就学前の子ども)
・児童扶養手当の毎月支給(現在は4ヵ月に1回、2019年11月分からは2か月に1回の支給)
・ひとり親の状況把握・カウンセリングサービスの充実
・高校生対象の経済的な支援の充実
・事前申請不要な、必要な時にすぐに使える支援(一時預かり保育やファミリーサポートセンターなど、事前登録や申し込みが必要で、いざという時に使いづらい)
・公的なサービスの案内などが全員に届くような周知の徹底
交流会では利用している制度や支援についての情報交換が活発になされ、知らなかった情報を得た参加者から、「みんなの声を聞いてとっても役に立っています。それを利用したいです。 」(50代母・子ども中3)といった感想があげられました。また、「普段、友人とかには話せないことや聞けないことを話す機会が欲しい」(40代・子ども小2と小4)など、ひとり親同士での交流会を希望する声もありました。
◆ひとり親家庭への支援施策の充実に向けて
セーブ・ザ・チルドレンが2016年と2017年に行った経済的に困難な状況下にある子育て世帯に対する調査結果から、医療・進学・生活といった点さまざまな面で、ひとり親家庭が深刻な状況に置かれていることが浮き彫りとなりました。また、厚生労働省の「平成28年国民生活基礎調査」によると、ひとり親世帯の相対的貧困率は、50.8%であり、国がすすめる子どもの貧困対策でもひとり親家庭に対する情報交換事業といった支援策の充実がうたわれています。 今回のイベント参加者からは「今後もひとり親家庭の交流会・イベントをたくさんやってほしいです(30代・子ども小1)」「普段、友人とかには話せないことや聞けないことを話す機会が欲しい(40代・子ども小2と小4)」など今後のひとり親家庭への支援施策の充実に期待する声があがりました。
今回セーブ・ザ・チルドレンが実施したようなひとり親家庭の交流・情報交換事業は、厚生労働省のひとり親家庭等生活向上事業 の一つとして位置づけられるような事業であり、自治体が実施した場合に国から事業の実施に対する補助金が出されます。しかし、自治体の中には、こうした取り組みが進んでいないところもあるのが現状です。今後も、セーブ・ザ・チルドレンは、地域の中でこのような取り組みが継続されるように行政に働きかけながら、ひとり親家庭への支援施策の充実に向けた活動を続けていきます。
(報告:東京事務所 林)