日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2024.01.29)
【インタビュー】「中身が全部必需品ばかりだったので助かりました。」2023年秋「ハロー!ベビーボックス」を利用したRさんのインタビュー
セーブ・ザ・チルドレンは、誕生時から「健康に、安心、安全な環境で育つ」子どもの権利を保障するため、また、低所得世帯の育児費用の負担軽減を目的として、新生児に必要な育児用品を詰め合わせた「ハロー!ベビーボックス」の提供を行っています。4回目の実施となった2023年秋(応募期間9/6〜10/25)では、全国216世帯と自治体、支援団体、乳児院等を通して合計750箱を提供しました。
今回、「ハロー!ベビーボックス」をご利用いただいた方に、妊娠時のことや現在の状況などについて話を聞きました。(2023年春のインタビュー記事はこちらから)
中国地方に暮らすRさんのインタビューをご紹介します。
Rさんは今回受け取った「ハロー!ベビーボックス」について
「こんなにたくさんの品をいただくことができ、とても助かりました。60サイズの長袖で長い裾のロンパースがなかったので早速着せたり、赤ちゃん用綿棒や大量のおしりふき、洗剤にボディーソープ、Sテープオムツなど。すぐ使える育児に欠かせないものばかりで、本当にありがたいです。」
とボックスの受け取り直後に感想を送ってくれました。
インタビューで現在の赤ちゃんの様子をたずねると、
「赤ちゃんは今2ヶ月くらいで、初めての予防接種もしました。元気にすくすく育っています。成長曲線の上めいっぱい。ミルクをたくさん飲むからこんなに大きいんじゃないかって。」と、話がありました。
(※使用している写真はRさんから提供を受けたもの)
Rさんは、今回の「ハロー!ベビーボックス」については、インスタグラムで知ったそうです。
「長女の妊娠がわかった時からインスタをやっていて、インスタの広告で流れてきました。市や療育センターからは特に知らせてもらわなかったですね」*1。
「ミルクとオムツは消耗品でどんどん無くなっていくし、高いので良いタイミングでボックスが届いてありがたかったです。あと、(ボックスの)中身が全部必需品ばかりだったので助かりました。」
(※使用している写真はRさんから提供を受けたもの)
Rさんに妊娠中や出産後に特に心配だったことや不安だったことについてお聞きしたところ、上の子どもと生まれたばかりの赤ちゃんの両方のお世話の両立が心配だったということでした。
「上の子どもが難病で療育センターに行ったり、児童発達支援を受けている中で下の子を育てないといけないのが大変です。今は夫が育休をとっているので大丈夫ですが、育休が終わったらワンオペになってしまうので。療育センターは週1、児童発達支援は週2で合計週3回、上の子を連れていかないといけないです。あと、保育園に上の子が通っているのですが、2歳までの保育園なので3歳からは別の保育園に移らないといけなくて、できれば上の子と下の子、同じ保育園が良いのですが、行けるところが見つかるかどうか心配です。」
また、経済面では特に上の子どもの医療用器具や環境を整えるにあたって、費用面での不安があるということでした。
「上の子の歩行器具やバリアフリー化の工事とか、公費の補助があるのですが、全額ではないので、そこが経済的に負担です。今後医療的ケアが増えたらさらに大変だと思います。」
Rさんは精神疾患があるため働くことが難しく、夫の収入のみに頼っていることも不安があるということでした。
ただ、妊婦検診や出産費用などはさほどかからずに済んだそうです。
「選んだ産院が高くなかったので、補助クーポンを使えばなんとかなりました。非課税世帯なので、高額医療を使っても入院費用は3万円くらいで済んだので、助かりました。」
妊婦検診の補助費や非課税世帯への補助などは自治体によっても異なりますが、Rさんが住んでいる自治体では、産後のケアも手厚かったといいます。
「上の子が難病を抱えているので、赤ちゃんのことだけでなく上の子どもの相談もできました。保健師さんに話せなかったことはなかったです。保健師さんとは産後も連絡をとっていて、産後ケアの利用についても保健師さんに教えてもらいました。助産院に産後1週間、非課税世帯なので1週間7,000円で、安くゆっくり入院できて、とても助かりました。」
国は2022年に、子育て世帯の切れ目のない支援や子育ての悩みや不安、負担に対応するためのサービスの向上や相談支援機能の一体化を目的として、市町村などの各自治体がこども家庭センターの設置に努める義務を定めました*2。
子育て支援については、2023年より出産・子育て応援給付金や出産一時金の増額といった経済的な負担の軽減や伴走型相談支援の強化など、さまざまな新しい取り組みが始まっています。
また、保護者の就労要件を問わずに時間単位で利用できる「こども誰でも通園制度」など、少子化対策の流れを受けて、こども家庭庁を中心に子育て支援や子育て政策の強化が進んでいます。
しかしその一方で、こうした支援や制度があっても、そのサービスの質や運用については自治体間の格差があります。
インタビューしたRさんは、今回産後ケア施設を安価で利用できたことがとても助かった、と話していましたが、そもそも産後ケア施設がない自治体も多くあります。また施設の利用料も、非課税世帯や生活保護世帯は低めに設定されているとはいえ、自治体が設定している金額には幅があり、必要な人が誰しも気軽に利用できるとは限りません。
Rさんは上の子どものことも含めて、保健師にはなんでも相談できたということでしたが、過去の「ハロー!ベビーボックス」のアンケート調査結果からは、保健師に経済的支援の情報や知識があまりない人もおり、妊娠、出産以外の生活や経済面での支援については具体的な支援情報をあまり聞けなかった、という意見も聴かれています。また、「ハロー!ベビーボックス」の過去のアンケート調査結果からも、住んでいる地域によって個人の負担感や満足感が大きく異なることが明らかになっています。
日本政府は、「次元の異なる少子化対策」を掲げ、これまで以上に妊娠・出産・子育て支援に注力しています。
すべての世帯が、こうした子育て支援の制度を利用できるようになることは歓迎される一方、「ハロー!ベビーボックス」の利用者のように、さまざまな困難を抱える世帯にとって、一律の支援だけでは解決できない場合が多くあります。
経済面、生活面の両方から困難な世帯を支えるためにも、経済的な支援をより充実させ、伴走支援や継続的な見守りなど、一歩踏み込んだ支援の強化が求められます。
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの貧困問題解決に向けさまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は随時こちらのページで更新しています。ぜひご覧ください。
*1 「 ハロー!ベビーボックス」の案内は全国の自治体の子育て支援課や子ども家庭課等の関連課に送付し、自治体を通して必要な方への案内をお願いしている。
*2 2022年(令和4年)6月に改正児童福祉法が成立、施行期日は2024年(令和6年)4月1日。
(報告:国内事業部 北見)