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日本/子どもの貧困問題解決
(公開日:2020.06.18)

「子どもの貧困は行政が解決すべき」 子どもの貧困と子どもの権利に関する意識調査結果

 
2019619日、子どもの貧困対策の推進に関する法律の一部を改正する法律が公布されました。大きな改正点の1つは、子どもの権利条約の精神に則って子どもの貧困対策を推進する、と明記されたことです。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利を基本理念として明確に据えた本改正法を非常に歓迎しており、子どもの権利の視点から子どもの貧困を捉える必要があると考えています。

この節目となる法改正の2ヶ月後、セーブ・ザ・チルドレンは、全国の15歳から80代までの3万人を対象に子どもの貧困と子どもの権利の意識に関するアンケート調査を実施し、子どもの権利条約の理解度によって、子どもの貧困の捉え方が異なることがわかりました。
※子どもの権利に関する結果はこちら






貧困に関する結果はこちら:見開き版A4
データ集(質問票含む)はこちら


本調査では、子どもの貧困の実態や法律の認知度、現在の日本社会における子どもの貧困に関する問題認識などを質問しました。子どもの権利条約の理解度とあわせてクロス集計と分析を行った結果、以下の4点が明らかになりました。(回答数:子ども(15-17歳)2,149件、大人27,851件)





1. 日本における子どもの貧困の実態に関して、子ども31.0%、大人28.8%が「聞いたことがない」と回答。一方、子どもの権利条約をよく知っていると回答した子どもと大人では「聞いたことがない」という回答は10%以下であった。子どもの貧困対策法や大綱に関しては約半数以上の子どもと大人が聞いたことがなかった。





2. 子ども70.7%、大人65.2%が、子どもの貧困は第一に国や都道府県、市区町村が解決すべきだと回答したが、次いで大人の21.1%は保護者が解決すべきと回答した。子どもの権利条約を知っている大人では、保護者を選択する割合が12.4%と低くなり、国や都道府県、市区町村を選択する割合が73.4%と高くなった。





3. 現在の日本社会で、子どもの貧困対策として税金を使うべきだと思うことの割合が最も高かったのは、「小中高校生活にかかる費用をすべて無料にすること」で、子ども60.9%、大人52.3%であった。子どもの貧困の実態をよく知っていると回答した大人は、すべての項目について選択する割合が高くなった。




4.
子どもの所有物や環境、体験について、現在の日本の社会における子どもの生活に必要であるかを、聞いたところ、以下の2点が明らかとなりました。

4.1. 塾や習い事、家族旅行など、家庭の経済状況によって差がある子どもの経験や体験について、現在の日本の社会における子どもの生活に必要であると回答した割合は、子どもも大人も3割以下であった。しかし、子どもの権利条約を内容までよく知っていると回答した子どもと大人では、3割以上だった。





4.2. スマートフォンや自分の部屋など、子どもの生活に必要であると大人が回答した割合が子どもより大幅に低くなる項目もあり、子どもと大人の意識の差が見られた。これらの項目を含む、様々な項目において子どもの権利条約を知っていると回答した人の場合、子どもと大人双方ともに、子どもの生活に必要であると回答する割合が高くなった。






この調査を実施した20198月時点で、多くの人々が子どもの貧困問題解決に向けた国や自治体の役割を期待していることが分かりました。一方、大人21.1%は第一に保護者が解決すべきと回答しており、子どもの貧困を家庭の問題、自己責任ととらえる人が一定数いることも分かりました。しかしながら、子どもの貧困は社会構造の問題です。子どもの貧困を解決していくためには、こうした自己責任という社会の意識を変革していく必要があると考えます。

また、今回の調査からは、子どもの権利条約をよく知っている人は、子どもの貧困の認知度が比較的高いこと、子どもの貧困の解決主体として国や自治体を選択する割合が高くなること、子どもにとって必要だと回答する物や体験が多いことなど、子どもの貧困を社会構造の問題としてとらえ、子どもの生活実態に寄り添って捉えようとする様子が見られました。

この結果から、子どもの権利への理解が、子どもの貧困解決に対するより深い理解に関係していると考えられます。そこで、セーブ・ザ・チルドレンは、国や自治体が法改正の理念に則り、子どもの権利を基盤として子どもの貧困対策を推進することの重要性を、改めて訴えていきたいと思います。


今、新型コロナウイルス感染症はあらゆる人々の生活に影響を与えていますが、とりわけ平時から厳しい経済状況にある世帯の生活への影響が深刻化しており、このような世帯は、今回のような突然の危機的事態を乗り越えるだけの経済的余力がないことが危惧されます。セーブ・ザ・チルドレンは、特に社会保障や所得再分配、教育費の負担など、現行の制度では必ずしも十分な保障がなされているとはいえない経済的に困難な状況にある子育て世帯への影響を懸念しています。

新型コロナウイルス感染症対応において、国や自治体は、経済的に困難な子育て世帯に対する迅速で適切な支援策を講じていくべきです。同時に、コロナ禍による一過性の施策だけでなく、子どもの貧困問題の本質的な解決に向けた取り組みを促進する必要があるのではないでしょうか。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの貧困対策法改正から1年となる今こそ、改めて子どもの貧困に着目し、子どもの権利保障の観点から子どもの貧困対策を議論すべきだと、考えます。

―本意識調査のオンライン報告会を6/27(土)に実施します。詳細はこちら

<調査概要>
調査方法:調査会社による WEBアンケート
調査対象:全国15歳(中学生除く)〜80
回答者数:子ども(1517歳)2,149人、大人(18歳以上)27,851
調査期間:201985日〜同年810
集計・分析:セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(性別・年齢の人口構成比に合わせて、データに重み付けをして集計)
調査協力(50音順):阿部彩教授(東京都立大学)、安部芳絵准教授(工学院大学)、山野良一教授(沖縄大学)













 

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