日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2021.06.14)
宮城県石巻市、岩手県宮古市・山田町で「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 〜新入学サポート2021〜」ならびに「〜高校生活サポート2021〜」を実施しました
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの貧困問題解決へ向けた取り組みの一環として、2016年から子どもたちへの給付金提供を実施してきました。2021年1月から4月にかけて、新入学に関わる費用の一部を給付する「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 〜新入学サポート2021〜」と、家庭の私費負担が相対的に高くなる高校生活、高校生の卒業時期を支えようと「〜高校生活サポート2021〜」を実施しました。2つの給付金の詳細についてはこちらをご覧ください。
今回の給付金では、岩手県宮古市・山田町、宮城県石巻市にて、2021年4月に小学校・中学校・高校に入学した子ども460人、また岩手県山田町、宮城県石巻市にて2020年度に高校2年生以上であった396人へ支援を届けました。
■東日本大震災や新型コロナウイルス感染症の子育て世帯への長引く影響
今年で6年目となる給付金支援でしたが、受給世帯からは依然として厳しい生活状況が数多く寄せられました*。東日本大震災の被災による影響が10年を経過した今現在もなお継続している様子や、新型コロナウイルス感染症の影響が及んでいる実情、それらが重なり合った困難も見受けられます。
■入学、進級、卒業を手放しに喜べない家計の状況
また、本来であれば喜ばしいはずの子どもの成長に対しても、家計の厳しい状況によって心配や不安を抱える保護者の姿も浮かび上がっています。
こうした就学に関わる経済的な負担を軽減するために、小中学校では就学援助制度があります。しかし、申請手続きが必要なため、各家庭が申請しないと利用することができないなど周知や申請の制度的課題があります。本給付金実施時には、制度につながっていない方を制度につなげようと、申請時に各家庭の就学援助の利用状況を確認し、制度の周知を図ることにも取り組みました。
■児童手当の対象外、義務教育外となる高校生を取り巻く課題
また、高校生は、公立も私立も授業料は実質無償だと言われていますが、小中学生と比べると、教育に関わる家庭の私費負担が増加します。さらに、就職や進学など進路検討も具体化し始める時期であり、進学であればそのための塾や教材費、就職であれば資格取得など、子どもたちの希望をかなえるための費用も必要です。それにもかかわらず、児童手当は中学生までであったり、医療費の負担割合が大人と同じになったりするなど、高校生の生活を支えるための公的支援は十分とは言えません。
■子育て世帯を取り巻く経済的な困難
この他にも、子どものくらしや学びに関する経済的な不安や心配、制度の不備に対する憤りの声も上がっています。
今回紹介したように、いまだ東北沿岸部で子どもや子育て世帯を取り巻く経済的な環境は厳しい状況が続いています。そして、日本全国で見ると、日本における子どもの貧困率は依然として高いまま推移しており、新型コロナウイルス感染症による社会・経済への影響が、全国各地で子どもたちのくらしを一層厳しくさせていることが危惧されます。ユニセフは、先進国の子どもの貧困は、2020年より少なくとも5年間は新型コロナウイル感染症流行前を上回るレベルが続くと警鐘を鳴らしています。(ユニセフ・イノチェンティ研究所『COVID-19を越えて家族と子どもを守る:先進国における社会的保護』)
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利を実現する国際NGOとして、子どもの貧困問題解決のために、どのようなことに取り組むべきか、改めて検討を続けています。
東北での子ども給付金は、東日本大震災から10年を区切りとし今回で完了となります。しかし、この経験を踏まえ、来年度以降も日本国内において経済的に困難なことによって、さまざまな面で不利な状況に置かれた子どもたちを支え、政策をより良いものに改善・拡充することができるよう取り組みを進めていく予定です。
東北での子ども給付金を終了するにあたり、これまで応援してくださった個人や法人企業のみなさんに、改めて感謝申し上げます。
*保護者の声は、原文から一部を抜粋し、文意が変わらない範囲で編集しています。
(報告:東京事務所 田代光恵)
今回の給付金では、岩手県宮古市・山田町、宮城県石巻市にて、2021年4月に小学校・中学校・高校に入学した子ども460人、また岩手県山田町、宮城県石巻市にて2020年度に高校2年生以上であった396人へ支援を届けました。
■東日本大震災や新型コロナウイルス感染症の子育て世帯への長引く影響
今年で6年目となる給付金支援でしたが、受給世帯からは依然として厳しい生活状況が数多く寄せられました*。東日本大震災の被災による影響が10年を経過した今現在もなお継続している様子や、新型コロナウイルス感染症の影響が及んでいる実情、それらが重なり合った困難も見受けられます。
- ●東日本大震災で家屋が流失し、高台に集団移転したため、住宅建築のための住宅ローンがあり、祖父母と協力して支払っているため、生活が苦しいところへ、令和3年3月会社の都合で退職することとなったので、教育費の負担に耐えられるか心配しています。(岩手県・新高1・ひとり親家庭・父)
- ●わかめや昆布の養殖加工して売っていたけれど、コロナのせいで売り上げあまりなく、政府の補助金は、私たち個人事業者には、あまり保障していただけない。(宮城県・高3・ふたり親家庭・母)
- ●母子家庭で一人稼ぎで生活しているため生活が困難です。昨年派遣業で働いていましたがコロナ禍により派遣切りになってしまいますます生活するのが大変な状況になってしまいました。(宮城県・高2・ひとり親家庭・母)
- ●自営業ですが震災で自宅、店舗とも全壊となり、二重債務に苦しんでいる最中コロナ禍により更に売上減で頭が痛い。債務の支払いについて、また子ども達は進学希望ですが掛かる教育費について悩んでいる。(宮城県・新高1・ふたり親家庭・父)
■入学、進級、卒業を手放しに喜べない家計の状況
また、本来であれば喜ばしいはずの子どもの成長に対しても、家計の厳しい状況によって心配や不安を抱える保護者の姿も浮かび上がっています。
- ●小学校に入学になると、体操着や学童、今までかからなかった給食費など様々な費用がかかるようになるので、お金の面は心配があります。(岩手県・新小1・ひとり親家庭・母)
- ●手当を頂いていますが、義務教育とはいえ細々とした物にお金がかかります。娘からは、おさがりがあればそれで良いよ、自分の貯めてるお金使ってと言われ涙が止まりませんでした。子どもにお金の心配させてしまって情けないのです。(宮城県・新中1・ひとり親家庭・母)
- ●進級にともない、制服やその他必要な物が多く、どうしても、学校指定になると価格が高くなるため、全てそろえるのが大変です。(宮城県・新中1・ひとり親家庭・母)
- ●制服代や中学や高校入学にかかる費用が高学年になれば、なるほどかかってくるものなので、その辺の費用などの事も正直支払うのだけでも大変です。ひとり親家庭でなくても子どもが多い家庭など、生活が厳しい状況の家庭など色々な家庭がある事など政府の方々には、そういった家庭にも目を向けて欲しいと思います。(宮城県・新高1・ひとり親家庭・母)
こうした就学に関わる経済的な負担を軽減するために、小中学校では就学援助制度があります。しかし、申請手続きが必要なため、各家庭が申請しないと利用することができないなど周知や申請の制度的課題があります。本給付金実施時には、制度につながっていない方を制度につなげようと、申請時に各家庭の就学援助の利用状況を確認し、制度の周知を図ることにも取り組みました。
■児童手当の対象外、義務教育外となる高校生を取り巻く課題
また、高校生は、公立も私立も授業料は実質無償だと言われていますが、小中学生と比べると、教育に関わる家庭の私費負担が増加します。さらに、就職や進学など進路検討も具体化し始める時期であり、進学であればそのための塾や教材費、就職であれば資格取得など、子どもたちの希望をかなえるための費用も必要です。それにもかかわらず、児童手当は中学生までであったり、医療費の負担割合が大人と同じになったりするなど、高校生の生活を支えるための公的支援は十分とは言えません。
- ●これからが金銭的に何かと大変な時だと思います。児童手当は中3までですし、高校生からは、お弁当を持参しないといけません。勉強に必要な教科書や教材なども、社会的な支援を、大学までして頂けると、経済的な理由で進学できない子どもが減ると思います。(宮城県・新高1・ひとり親家庭・母)
- ●高校の修学旅行の金額が高すぎるので、かなりの負担。(宮城県・新高1・ひとり親家庭・母)
- ●一人で子どもを育てていくのに、もっと国でいろいろな面で保証をしてもらいたい。私立(注:高校)の学費はないですが、他に施設管理費や教材、部活をやるうえでかかる費用など、子どもに普通に高校生活を送ってもらいたい。(宮城県・新高1・ひとり親家庭・母)
- ●コロナの影響で、給料が減ってしまい子どもが高校卒業するまで支払いができるか不安。(宮城県・新高1・ひとり親家庭・母)
■子育て世帯を取り巻く経済的な困難
この他にも、子どものくらしや学びに関する経済的な不安や心配、制度の不備に対する憤りの声も上がっています。
- ●自分自身が体調を崩したり、仕事が出来なくて、生活するためのお金が無くならないか、いつも不安です。子ども達の好きな物を食べさせたり、欲しい物を買ってあげられないので、悲しい気持ちになります。お金の不安で、頭がいっぱいになる時が有ります。(宮城県・新中1・ひとり親家庭・母)
- ●収入が減り、子どもたちの入学資金や生活費も上がり大変です。コロナの影響で元旦那さんから、養育費をいつまで支払えるかわからないと伝えられ養育費がなくなった時、どうやって生活したらよいのか、考えてしまいます。(宮城県・新高1・ひとり親家庭・母)
- ●子どもの病気のため、転職をせざるを得なくなりました。収入が激減したのですが、児童扶養手当は前年の収入で計算されるため少ないままです。満足にご飯も食べさせられず、とても苦しい生活を送っています。教育支援費を申請したとしても十分な収入にはなりません。その他の手当や貸付も申請することは出来ませんでした。生活保護を受けると職を失います。先のことを考えると本当にどうしたら良いのか分かりません。毎日お金の心配ばかりで精神的に疲れてしまいました。(岩手県・新高1・ひとり親家庭・母)
今回紹介したように、いまだ東北沿岸部で子どもや子育て世帯を取り巻く経済的な環境は厳しい状況が続いています。そして、日本全国で見ると、日本における子どもの貧困率は依然として高いまま推移しており、新型コロナウイルス感染症による社会・経済への影響が、全国各地で子どもたちのくらしを一層厳しくさせていることが危惧されます。ユニセフは、先進国の子どもの貧困は、2020年より少なくとも5年間は新型コロナウイル感染症流行前を上回るレベルが続くと警鐘を鳴らしています。(ユニセフ・イノチェンティ研究所『COVID-19を越えて家族と子どもを守る:先進国における社会的保護』)
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利を実現する国際NGOとして、子どもの貧困問題解決のために、どのようなことに取り組むべきか、改めて検討を続けています。
東北での子ども給付金は、東日本大震災から10年を区切りとし今回で完了となります。しかし、この経験を踏まえ、来年度以降も日本国内において経済的に困難なことによって、さまざまな面で不利な状況に置かれた子どもたちを支え、政策をより良いものに改善・拡充することができるよう取り組みを進めていく予定です。
東北での子ども給付金を終了するにあたり、これまで応援してくださった個人や法人企業のみなさんに、改めて感謝申し上げます。
*保護者の声は、原文から一部を抜粋し、文意が変わらない範囲で編集しています。
(報告:東京事務所 田代光恵)