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日本/子どもの貧困問題解決
(公開日:2021.11.01)

「私たちが望んでいること」−子ども給付金利用保護者へのインタビュー

 
7人に1人ー現在、日本で相対的貧困下におかれた子どもたちの割合です。
セーブ・ザ・チルドレンは、2016年から経済的に困難な状況にある子どもが安心して就学できるようにするために、東北で給付金支援を行ってきました。

今回、「セーブ・ザ・チルドレン子ども給付金 新入学サポート・高校生活サポート2021」を利用した世帯の保護者4人に、給付金を利用した経緯や、現在の状況などについて話を聞きました。

セーブ・ザ・チルドレンは、子ども給付金の提供や社会啓発、政策提言などを通じ、子どもの貧困のより良い解決を目指します。


「経済的理由から子どもが大学進学を断念。親として申し訳ない気持ちだが全力で応援したい」
Aさん 宮城県在住

お話を聞いたAさんは、現在高校1年生の子どもとふたり暮らしの母子家庭です。もうふたり年上の子どもたちがいますが、すでに独立しているそうです。

セーブ・ザ・チルドレンの給付金を利用しようとしたきっかけは、「子どもが中学生にあがるタイミングで、学校からセーブ・ザ・チルドレンの給付金についてのプリントをもらったことがきっかけです」と、話してくれました。以前から子ども給付金について知っていたので、今年は、高校入学に合わせて「高校生活サポート2021」を利用したそうです。

Aさんは、当時、収入も少なく、入学準備も余裕がなかったと言います。高校生活を迎えるにあたり、新しい制服を一式そろえたり、いろいろとお金がかかります。そのため、給付金は制服のブラウス購入に充てることができ、大変助かったそうです。



勤め先では、特殊な水産関係の出荷と加工をしています。月曜日から金曜日の8時から17時まで勤務し、繁忙期は残業や、休日出勤もあります。

新型コロナウイルス感染症が流行してから働けない人も多い中、仕事があるということは、恵まれているかもしれないと話すAさん。現在の職場は5年目ですが、収入の増加に伴い、ひとり親家庭に支給される児童扶養手当の額は減ったそうです。また、子どもが高校生になると児童手当もなくなります。その他にも、就学するために設けられている支援制度のほとんどは非課税世帯が対象のため、非課税世帯に該当しないAさん世帯は、支援を利用することはできません。

「今日、その日の生活を生き延びるためには十分な収入という判断なのかもしれませんが、私たちにとって全く十分ではないのです」と、利用できる支援と実際の家計の状況に乖離があると話します。

また、通っている高校が家から遠いため、バスと電車を乗り継いで片道1時間50分位かけて通学しています。通学費だけで月に3万5,000円程度かかるため、家計にとって負担となっています。

そうした状況について、Aさんは、「うちだけでなく、同じ地域に住む子どもたちは、皆高校が離れているため通学費用がかさみます。もう少し自治体などがそのあたりの補助などもしてくれれば、助かる人はたくさんいるはずです」と、毎月かかる高額な通学費に対する行政からの支援の必要性を訴えます。

高校生の子は、自分のことより友だちの幸せがうれしいと思える優しい性格で、上の子が看護師のため、小学生の頃から同じ看護大学への進学を目指して頑張っていたそうです。しかし、今は経済的なことから地元の病院付属の看護専門学校への進学を目指しています。

子どもが大学進学を断念せざるを得ない状況について、親として少し申し訳ないと思うものの、子どもは今の環境を冷静に受け止め、目標は定まっているそうで、親としてそのためにできることを全力で応援したいと話します。

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「ふたり親世帯でも生活は厳しい。生活状況を把握し、子育て世帯に平等な支援を」
Bさん 岩手県在住

東日本大震災で、自宅が被災したというBさん。配偶者と子ども2人の4人暮らしです。当時2人の子どもは2歳と4歳。被災を受けなかった配偶者の実家に間借りして、夫妻で飲食店を営みながら、なんとかここまで生活してきたと言います。あれから10年―。
「今度は新型コロナウイルス感染症の流行で、飲食店は大打撃を受けました。売上げが30%から50%減ってしまい、とても厳しい状況です。住まいも、経済的に余裕がなくまだ見つかっておらず間借りの状態が続いています。」 



2人の子どもたちは、現在中学1年生と3年生の育ち盛りの男子で、体を動かすことが大好きです。下の子が通う学校から配られた資料で「新入学サポート2021」のことを知り、利用しました。
「中学では、学校指定の体操服や部活用品などにお金がかかります。特に下の子は剣道部に入部したので、防具など道具を一式そろえる必要があります。そのための費用に給付金を利用しました。」

就学援助も利用していますが、中学生1人につき月額約1万円の学校の集金が、とても負担になると話します。
「給食費、教材費、修学旅行の積立、卒業アルバム積立、時々のPTA費用など、2人あわせて毎月2万円はかかります。後から戻ってくる費用もありますが、この月々の支出は、今の私たちにはとてもきついです。」

2人の子どもたちについて、長男は中学3年で部活は引退しましたが、釣りなどアウトドアの活動が好きでやさしい性格、2人目の子どもは小学校の頃は水泳も得意で、今は剣道1本に取り組んでいると話すBさん。子どもたちには、将来、専門学校や大学など希望する学校に進学してほしいと願う一方、今後の経済状況を考えると、子どもの希望をかなえてあげられないかもしれない、と不安な心境も明かします。

新型コロナウイルス感染症の影響が長引く中、「ふたり親世帯でも、生活は厳しい。国や自治体には、ひとり親とかふたり親とかで決めるのではなく、大変なのは皆同じだから、実際の所得や生活状況などをきちんと調査、把握したうえで、平等に支援をしてもらいたい」と訴えます。

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「子どもが学生のうちは医療費の軽減を」
Cさん 宮城県在住

6年前から夫妻で造園業を営むCさん。以前は、親族が経営する会社で長年働いていましたが、親族間のトラブルが原因で退職を余儀なくされました。その際、退職金も支払われなかったと言います。
「ようやく始めた造園業の仕事は、天候に左右されるため週何日とか決まった日数での仕事はありません。今は新型コロナウイルス感染症の影響で、不景気のため今年の注文をお客様に断られることもありますが、どうにか頑張りたいところです。」
3人の子どものうち、一番上の子どもは独立しましたが、下の子ども2人は中学1年生と高校1年生。児童手当は利用していますが、学校での年間の集金や教材費など、費用がかさむと話します。



今回、学校からのお知らせで「新入学サポート2021」について知り、申し込みをしたそうです。
「中学、高校の運動着や制服、部活のジャージ代が高かったので、給付金を利用することができ助かりました。」
2人の子どもたちは、小さい頃から走ることが好きで、小学校の運動会でもリレーの選手として活躍。現在は2人とも陸上部に所属しています。
特に中学1年生の子は、地域の陸上大会に出場し優勝したり、県大会では入賞を果たしたりするなど活躍しているそうです。

一方で、中学や高校では、以前より医療費がかかるといった心配事も増えたともらします。
「夏場は熱中症のため、病院へ行く事が多くなりましたし、足腰の不調があれば整形外科へ行きます。今は、胸に湿疹ができてしまったのですが、女の子なので専門のクリニックで診察してもらっています。」
医療費は中学生までは無料でしたが、高校生以上になると無料ではなくなるため、以前より治療代など医療費の負担が増えたと話します。
「無料とまではいかなくても、学生のうちは医療費をもう少し軽くしてくれてもいいのでは、と思ってしまいます。」

高校1年生の子は、絵のデザインに興味があるためデザイン系の専門学校へ、中学1年生の子は陸上が強い高校への進学をそれぞれ希望していると話すCさん。
経済的に厳しい時もあるそうですが、「なんとか造園業の仕事を頑張っていきたい」と話します。

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「子どもたちには自分の好きな道に進んでほしい、子どもの夢はかなえてあげたい」
Dさん 宮城県在住

「セーブ・ザ・チルドレンの支援には、震災当時から感謝しています。」と話すDさん。
9年前に離婚し、ひとり親で3人の子どもを育てています。子どもは、昨年高校を卒業した子どもと、高校2年生と中学1年生の子どもがいます。離婚後、長い間養育費が支払われていない状況が続いていると言います。
「建設会社で経理事務の仕事をしていますが、私が持病を抱えているため、毎日仕事に行くことで精一杯の状況です。」



Dさんの給与収入に加え、児童手当なども利用していますが、生活するには十分ではないため、一番年上の子どもの給与や、高校2年生の子どものアルバイト代などにも頼り、なんとか生計を立てています。
「いろいろな給付金や手当があり、とても助かっていますが、生活していくのは本当に大変なことだと日々感じています。」

以前も、セーブ・ザ・チルドレンの子ども給付金を利用したことがあり、今回「新入学サポート2021」「高校生活サポート2021」に申し込みをしました。
「新型コロナウイルス感染症の影響で突然学校がオンライン授業になり、光熱費もかさみ、預金口座の残高を見て、どうしようと思う時もありました。給付金は、(一番年上の子どもの)卒業後の生活に必要な日用品や、教材の購入、通学定期代、ジャージの購入などに充てました。」

仕事を頑張るDさんを、いつも支えてくれるのは子どもたち。
「持病の影響で家事ができないときや、仕事で帰りが遅いときには、子どもたちが洗濯やお風呂掃除、買い物、夕食づくりなどを手伝ってくれるのでとても助かります。ですが、感謝とともに同時に申し訳ない気持ちにもなります。」

Dさんは3人のお子さんについて、(一番年上の子どもは)歌や音楽、絵を描くこと、動物が好きで優しい性格、(高校2年生の子どもは)思いやりが人一倍ある子、(中学1年生は)陸上部に所属して活発で穏やかであると語ってくれました。

子どもたちの将来について、障害のある一番年上の子どもは、社会人になっても継続してサポートが必要ですが、利用できる支援が限られていたり、地域差があったりするため、今後地域で利用できる支援が増えることを期待しています。

高校2年生の子どもは、小さい頃から憧れていた美容師になるという夢に向かって頑張っており、中学1年生の子どもにも自分の良いところをどんどん生かしていってほしいと願うDさん。「子どもたちには自分の好きな道に進んでほしいです。母子家庭ですが、子どもの夢はかなえてあげたいと思い働いています」と語ります。

 

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