(公開日:2014.03.10)報告書「シリア内戦の大きすぎる犠牲:3年に及ぶ医療の崩壊が子どもたちに与える影響」を発表(2014.03.10)
適切な医療が受けられずに苦しむ子どもは数百万人
?国内の医療システムが壊滅的状況に?
?国内の医療システムが壊滅的状況に?
子ども支援専門の国際組織セーブ・ザ・チルドレンは、3月10日に新しい報告書「シリア内戦の大きすぎる犠牲:3年に及ぶ医療の崩壊が子どもたちに与える影響(A Devastating Toll: The impact of three years of war on the health of Syria’s children)」を発表し、シリアの医療システムの壊滅的な状況により、子どもたちは紛争に巻き込まれて犠牲になっているだけでなく、予防や治療が可能な病気で苦しみ、命を落としていることが、明らかになりました。
報告書では、医療システムの崩壊が、医療従事者に非人道的な治療行為を強いている他、命を脅かす感染症に苦しむ子どもが数百万人にのぼることを伝えています。シリアの医療システムの崩壊の度合いは、以下のような、様々な恐ろしい形で現れています。
●怪我をした子どもたちを治療する機具がないため、四肢を切断しなければならない
●停電が頻繁に起きるため、新生児が保育器の中で亡くなっている
●麻酔がないため、患者が意識を失うために金属の棒で気絶させられることを希望する
●病院に子どもを連れて行っても医療スタッフがいないため、医療知識のない親が子どもに対して点滴を投与している
「シリアの人道危機は、瞬く間に医療危機を引き起こしました。シリア国内に残っている子どもたちは悲惨な状況に耐えています。現在のシリアでは、医者を見つけられるだけでも幸運なことで、治療に必要な医療機器や薬を持っている医者を見つけるのは、ほぼ不可能です。子どもの命を救うために、医療従事者は目を覆うような処置を施さねばならなくなっています。」セーブ・ザ・チルドレン中東ディレクター ロジャー・ハーン
シリア国内で働く一人の医者は、セーブ・ザ・チルドレンに次のような証言をしてくれました。「瀕死の火傷や骨折を負った子どもの患者が、ほぼ毎日運ばれてきます。しかし、わたしたちの病院には複雑な手術を施す設備がなく、出血多量で命を失う危険を防ぐために、四肢を切断しなければならない場合があります。」
停電のため携帯電話の明かりを利用 して、赤ちゃんの手術を行う医師たち
また、ポリオやはしかなどの感染症の流行も大きな問題です。今のシリアでは、8万人の子どもたちがポリオにかかっていて、身体の麻痺、不具、命の危険に脅かされています。強力なウィルスが密かに拡大していることも懸念されています。
重要なのは、ポリオ、はしか、下痢、呼吸器系疾患といった幼い子どもにとって命の危険が伴う病気は、医療システムが健全に機能してさえいれば防げるものだということです。
シリアではこの3年間で、日々の医療や必要な薬へのアクセスができずに、がん、喘息、糖尿病などの慢性疾患で亡くなった人の数が、紛争の巻き添えで亡くなった人の数の2倍もの20万人に達しました。この中には多くの子どもが含まれています。
紛争前は水準の高い医療システムを誇っていたシリア全体で、現在60%の病院が被害を受けたり、破壊されたりしています。シリア国内にいた医者の半分近くが国外に避難し、もともと2,500人の医者がいたアレッポには、現在36人しか残っていません。多くの医療従事者が紛争の犠牲になったり、投獄されたり、国外へ避難しました。また、国内の救急車の93%が、盗難や破壊により機能していません。
家族で経営する薬局の、ほぼ空になった 商品棚を見つめる子ども
このような状況を打破するために、セーブ・ザ・チルドレンは、国連安全保障理事会が人道アクセスに関する決議2139を即時施行し、必要な人びとのもとにワクチン、食糧、水、薬やその他の命を救うための支援が届けられることを求めます。
「シリアの子どもたちが傷を負い、本来であれば予防できるポリオなどの感染症の犠牲になり、治療薬にアクセスできないために苦しみ亡くなっていく現状は、国際社会の責任でもあります。世界の指導者たちは立ち上がり、シリア内戦によって罪のない子どもたちが犠牲になることをこれ以上許容することはできない、という明確なメッセージを送らなければなりません。」ロジャー・ハーン
■セーブ・ザ・チルドレンのシリア人道危機支援活動
2012年よりシリア人道危機への支援活動を開始し、紛争下のシリア国内で、これまで50万人に対して食糧、水、薬やシェルターなどの生活必需品を提供しました。また、ヨルダン、レバノン、エジプト、イラクでは、シリア難民や受け入れ国に対する支援を実施。物資配布だけでなく、子どもたちへの教育や社会心理的サポートを積極的に行っています。
■ セーブ・ザ・チルドレンについて
1919年設立。子ども支援の世界的リーダーとして、国連経済社会理事会(UN ECOSOC)のNGO最高資格である総合諮問資格(General Consultative Status)を取得。日本を含め、世界30カ国の独立したセーブ・ザ・チルドレンがパートナーシップを結び、現在、約120の国と地域で活動しています。日本のパートナーであるセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、1986年に設立されました。http://www.savechildren.or.jp/
シリアの子どもたちが置かれた状況を広く伝えるために、貴メディアで報道いただけますよう、お願いいたします。写真の提供なども可能です。
本件に対するお問い合わせ
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 広報 担当 田代範子
TEL:03-6859-0011