(公開日:2015.03.31)【第3回国連防災世界会議】仙台防災枠組についての所感(2015.03.31)
子ども支援専門の国際NGOである公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(理事長:深田宏 /専務理事・事務局長:千賀邦夫、以下SCJ)は、国連児童基金(UNICEF)およびパートナーNGO(チャイルド・ファンド、プラン、ワールド・ビジョン *五十音順)とのグローバルネットワーク「気候変動の時代を生きる子どもたち」の一員として、東北をはじめ世界の子どもたちが仙台防災枠組の採択に向け、意見を表明し、そのプロセスに参加できるように、サポートしました。具体的には、東北をはじめ世界の子どもたちの事前ワークショップや第3回国連防災世界会議での各種活動の企画・運営です。
その結果、子どもたちは、本体会議をはじめ様々な場所で、災害の経験や防災に関する活動をもとに政策決定者に働きかけることができました。特に、3月17日(火)14:00−15:30に実施された第3回国連防災世界会議・本体会議分科会(Working Session)「Children & Youth “Don’t Decide My Future Without Me”(仮訳:子どもとユースと共に築く未来)」では、子ども代表2名が登壇し、発言の機会を得ました。子ども代表の1名は、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが東日本大震災復興支援事業の一環として支援する「山田町子どもまちづくりクラブ」の外舘ひなたさん。子どもが防災や復興プロセスに参加することの意義を訴えました(外舘さんのスピーチ全文はこちら)。
また、第3回国連防災世界会議のパブリックフォーラムにおいて、セーブ・ザ・チルドレンは3月14日(土)に「子どもと養育者のための心理社会的ケア〜子どもにやさしい災害時の支援を考える〜」「東日本大震災の教訓を漫画で学ぼう!〜子どもが考え、行動できる防災へ〜」という2つのセミナーを主催しました(子どもと養育者のための心理社会的ケアの報告はこちら、東日本大震災の教訓を漫画で学ぼう!の報告はこちら)。
仙台防災枠組採択まで
今回の会議では、昨年6月から会議開始直前の3月13日までに3回の準備会合、そして、12月と1月に準備会合の準備ともいわれる成果文書に関する事前会合(交渉)が行われました。しかしながら実際に会議が始まると、各国代表団による交渉が難航。会議最終日の18日の深夜近くに合意がなされ、兵庫行動枠組の後継となる新しい国際的防災指針である仙台防災枠組が採択されました。
仙台防災枠組2015-2030(Sendai Framework for Disaster Risk Reduction2015-2030)
骨子(日本語)http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000071588.pdf
英文(English)http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000071589.pdf
※外務省HP掲載情報
仙台防災枠組における懸念点
仙台防災枠組の採決自体は喜ばしいことですが、以下のような懸念点もあります。(para 18)では、?死亡者数減少、?被災者数減少、?経済的損失軽減、?重要インフラの損害の軽減、?防災戦略採用国数の増加、?途上国への国際協力の強化、?マルチハザード早期警戒及び災害リスク情報とそのアクセスの増加という防災の取り組みにおける期待される成果とゴールを測る7つのターゲットが設定されました。しかしながらそれらの記述には、具体的な数値目標などが明確にされておらず、積極的なターゲット設定とは言い難い状況です。また、仙台防災枠組は、持続可能な開発目標(SDGs)や国連気候変動枠組条約などの本年度中に合意される他の重要な取り決めにつながる野心的な内容となることが期待されていましたが、今回の合意文書においては、持続可能な開発目標(SDGs)や気候変動枠組条約のターゲットや実施における関係性についての記述も見られません。
仙台防災枠組における成果
一方、仙台防災枠組では、セーブ・ザ・チルドレンが取り組んできた災害時の心理社会的支援についての記述も見られます。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン主催のパブリックフォーラム「子どもと養育者のための心理社会的ケア〜子どもにやさしい災害時の支援を考える〜」や「子どものための心理的応急処置(Psychological First Aid for Children)」の普及のなかでもパートナー団体とともに訴えてきた、災害時における心理社会的支援の必要性に関して、(para 33, (o))に明文化されています。
para 33, (o)
Enhance recovery schemes to provide psychosocial support and mental health services for all people in need;
仮訳「支援が必要なすべての人々に対する心理社会的支援および精神保健サービスを提供するための復興枠組みの強化」
さらに仙台防災枠組には、多様なステークホルダーの関与という考え方が取り入れられています。そしてステークホルダーの中には、子どもと若者が「変革の主体者」として明文化されており(para 36, (a)(ii))、これは世界の子ども・若者およびSCJをはじめとする子ども支援団体が働きかけを行った一定の成果だと考えられます。
para 36, (a)(ii)
Children and youth are agents of change and should be given the space and modalities to contribute to disaster risk reduction, in accordance with legislation, national practice and educational curricula;
仮訳「“子どもと若者は変革の主体である。法律や国家施策、教育カリキュラムに合わせて、防災(災害リスク軽減)に貢献できるように、場や機会を提供されるべきだ。」
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンでは、今後も引き続き、子どもたちが防災や復興プロセスに参加する機会を確保するとともに、子どもを中心とした防災教育、防災分野における子どもや養育者への心理社会的支援等の取り組みを支援していきます。
※「気候変動の時代を生きる子どもたち」
英語名Children in a Changing Climate。「気候変動の時代を生きる子どもたち」は、子どもに焦点を当てた調査研究、開発、人道支援に特化した機関のグローバルなネットワークで、知見の共有や活動の協調、そして変化をもたらす主体としての子どもとともに取り組むことを掲げています。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、国連児童基金(UNICEF)、および、3つの国際NGO(チャイルド・ファンド、プラン・ジャパン、ワールド・ビジョン)が参加しています。
以上