(公開日:2011.03.01)「隠された危機:武力紛争と教育」〜EFAグローバル・モニタリング・リポート2011〜 (2011.03.01)
2015年「万人のための教育(EFA: Education For All)」のゴール達成のための進捗報告書、2011年版グローバル・モニタリング・レポート(GMR)が国際連合教育科学文化機関(UNESCO)から3月1日に発行されました。
GMRには、EFAに挙げられている6つの達成ゴール*の内容についての進展・遅延状況が最新のデータをもって執筆されています。また、2011年版GMRは、「隠された危機:武力紛争と教育」がテーマとなっており、セーブ・ザ・チルドレンが5年間にわたって「Rewrite the Future〜いっしょに描こう!子どもの未来」(RTF)を通じて送ったメッセージがまとめられています。
主な進展として、1999年から2008年の間、新たに5,200万人の子どもたちが初等教育を受けられるにようになったことが報告されています。この10年間の進捗は目覚ましいのですが、2015年までの全ての子どもたちが初等教育にアクセスすることも含むEFAゴールを達成するために、いまだに残る6,700万人の初等教育年齢の不就学児を学校へ通学させなければなりません。
この不就学児たちの42%が紛争下の国々で暮らしています。初等教育へのアクセスは向上した一方で、EFAゴールにも含まれている「質の高い教育」「公平なアクセス」については、深刻な問題が指摘されています。例えば、インドの田舎の小学校に通う4年生の生徒たちにテストしたところ、2年生の教科書の読み書きができる子どもたちは38%しかいなかったと報告されています。8年間の教育を受けた後でさえも、18%の子どもたちが小学校2年生の読み書きができていません。また、公平さについても、最も弱い立場にある子どもたちに教育の機会が提供されていないことが指摘されています。例えば、7歳から16歳のパキスタンの最貧困層の子どもたちは、半分が不就学なのに対して、最富裕層の不就学児は5%のみとなっています。このほか、ジェンダー、居住地域、言語、障がいによる学校へのアクセス不衡平の改善が遅延しています。
GMRでは、今回のテーマである紛争影響国での教育について、最も進展が遅れている一つだがほとんど報告がないと危惧してます。報告書は、セーブ・ザ・チルドレンがまとめたLast in Line, Last in SchoolレポートやRTFのメッセージで発信してきた紛争の影響下にある子どもたちの脆弱さ、人道支援の教育への援助額の低さなどについても言及しています。なかでも、現在の国際援助体制は、紛争影響下にある国の平和構築と教育制度再建に貢献するのに失敗していると根本的な問題を指摘し、国際社会に行動計画を提示しています。
セーブ・ザ・チルドレンは、今後も子どもの権利の実現に向けて、紛争影響下にある教育への支援を継続していきます。
* 1) 最も恵まれない子ども達に特に配慮を行った総合的な就学前保育・教育の拡大及び改善を図ること, 2) 女子や困難な環境下にある子ども達,少数民族出身の子ども達に対し特別な配慮を払いつつ,2015年までに全ての子ども達が,無償で質の高い義務教育へのアクセスを持ち,修学を完了できるようにすること, 3) 全ての青年及び成人の学習ニーズが,適切な学習プログラム及び生活技能プログラムへの公平なアクセスを通じて満たされるようにすること, 4) 2015年までに成人(特に女性の)識字率の50パーセント改善を達成すること。また,全ての成人が基礎教育及び継続教育に対する公正なアクセスを達成すること, 5) 2005年までに初等及び中等教育における男女格差を解消すること。2015年までに教育における男女の平等を達成すること。この過程において,女子の質の良い基礎教育への充分かつ平等なアクセス及び修学の達成について特段の配慮を払うこと, 6) 特に読み書き能力,計算能力,及び基本となる生活技能の面で,確認ができかつ測定可能な成果の達成が可能となるよう,教育の全ての局面における質の改善並びに卓越性を確保すること。(文部科学省のHPより引用http://www.mext.go.jp/unesco/004/003.htm、SCJにて「子ども」とひらがな記載しています )
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写真はすべてアフガニスタン (C)Save the Children Japan