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(公開日:2018.03.13)
シリア危機勃発から7年:報告書『シリア危険地帯からの声』を発表


シリア危機が始まってから7年を迎えるにあたり、セーブ・ザ・チルドレンは、包囲されたダマスカス郊外の東グータ地区およびシリア北西部に暮らす子どもたちとその家族、人道支援スタッフ、医師、教師、若い労働者たちが置かれた状況をまとめた報告書『シリア危険地帯からの声(Voices from Syria’s Danger Zones)*』を発表し、戦争違反行為が罰せられない状態を終わらせ、戦闘の即時停止、国際人道法違反のモニタリングと責任追及を強化するよう国際社会に訴えます。



過去数週間だけで何百人もの人々が爆撃や砲撃で殺害された東グータ地区では、子どもたちは地下室や仮設シェルターで暮らすことを余儀なくされ、怪我や病気、栄養不良で命を落とし、重度のストレスに苦しんでいます。多くの子どもは常に命の危険を感じ、逃げ回り、学校が攻撃され教育を受けることができなくなったため自らの将来を描けなくなっています。

イドリブや東グータ地区など4ヶ所の緊張緩和地帯は、2017年半ばにシリア全土で設置され、全ての武器使用の禁止、人道支援物資の提供、インフラ復旧のための環境整備等が行われ、危機の早期終結の道筋となるもの、と期待されていました。しかし、現実は、一連の攻撃などで明らかなように、爆撃や砲撃からの避難場所になるどころか、その対象になり、状況が悪化している地域もあります。

セーブ・ザ・チルドレンが発表した報告書では、緊張緩和地帯が設置されてから、以下のことが発生していると述べられています。
■毎時子ども250人が避難を強いられている
避難を強いられた子どもの数は、緊張緩和地帯が設置されてから60%増加しています。これは記録的な規模です。また、昨年10月から12月の間に、シリア国内で100万人以上が家を失い、避難者数は過去5年間で最大となっています1
■民間人の負傷者が45%増加している
シリア国内で、2017年半ばから毎日少なくとも民間人37人が爆発兵器により殺害されているとの報告があり、ここ数年で最大の割合です2
■教育施設への攻撃が増加している
2018年1月から2月に、東グータ地区にある学校60校以上が爆撃により破壊されたか損傷を受けています3。シリア北西部のセーブ・ザ・チルドレンが支援する学校では、紛争の影響で休校となった日数が前年から4倍となり、子どもたちの教育に大きな影響を及ぼしていることが調査から明らかになっています4
■保健医療施設がほぼ1日おきに攻撃されている
数千におよぶ医療や外科手術が必要な人々や出産間近の女性たちが、必要な保健医療サービスを受けられなくなっています5
■人道支援の組織的な拒否
国連が「支援が届きにくい」あるいは「包囲下にある」と分類した地域に住む200万人以上(うち半数は子ども)は、食料や医薬品といった支援物資の搬入許可が下りないために6、記録的な人数の子どもが栄養不良となり、また医師たちは、患者の治療にあたって、不足する包帯や針を再利用する状態に置かれています。

多くの子どもたちは、食料を入手できず、保健医療へのアクセスもできない、という想像を絶するほど衝撃的な状況下で暮らしています。

セーブ・ザ・チルドレンが東グータ地区でインタビューした教師らは、子どもが空腹のあまり授業中に気を失うことが日常的にあると話しています。また、親たちは、食料の値段が暴騰したために1日おきにしか子どもを食べさせることができないと語りました。一時は穀倉地帯であった東グータ地区は、包囲下に置かれて以降、パンの値段は近隣の市場の16倍にもなっています。

さらに、悪夢を見たり、大きな音を聞いてパニックになったりして眠ることができない子どもについて話した親もいました。ある母親は、「最も恐ろしいのは戦闘機です。私の小さな娘は、戦闘機が飛んでくると、神経過敏になって発作を起こし意識を失います」と話します。

ある人道支援スタッフは、リンゴを見たことがなく恐がっている少年に会ったことがあると語りました。ほかにも、皮をむかずにバナナを食べた子どもや食料が無くなることに備えてパンを隠してしまう子どももいたとのことです。

ハニさん(11歳)は、自分が通っていたイドリブの学校が攻撃を受けた時のことを語ってくれました。「先生は窓の側に立っていて、私たちにペンと紙を取って来ると言いました。しかし、そうする前に先生の頭は撃たれ、先生は亡くなってしまいました」

セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長ヘレ・トーニング=シュミットは以下のように訴えます。
「シリアの子どもたちは、長い間、世界から忘れ去られてきました。300万人近くの子どもたちが、戦争のことしか知らずに大きくなっています。停戦が合意されたにもかかわらず、子どもたちはこれまでと変わらず、家や学校、病院で爆撃を受けています。多くの家族は地下に避難し、食料や医療機器といった必要な物資が何ヶ月も届けられていません。人道支援をこのように紛争の武器として使用してはなりません。

緊張緩和地帯という、民間人の安全のために作られた場所でさえ、今では戦闘の中心地になっています。戦闘、暴力が即時に停止され、私たちのような支援団体が、紛争の影響を受けた東グータ地区や他の地域に取り残された数十万人もの子どもたちに、一刻もはやく緊急支援を届けることができるようにしなければなりません。

国際社会はこの状況を傍観し、子どもたちがこのように苦しむのを許してはなりません。影響力を行使して即時停戦を実現し、紛争当事者を交渉のテーブルにつかせ、多くの命を奪った紛争を完全に終わらせるための最終合意へと導かねばなりません」

セーブ・ザ・チルドレンは、こうした状況がさらに悪化するのを阻止するため各国政府に以下を緊急に要請します。
■紛争の全ての当事者に、国連安全保障理事会決議第2401号を完全かつ即時に遵守するよう圧力をかけること。そして、イドリブと東グータ地区における最近の戦闘拡大の即時停止や、シリア全土で人道支援を安全かつ阻害されずに届けることと保健医療へのアクセスを可能にし、傷病者の搬送を行えるようにすること。
■民間人の保護のために設置された緊張緩和地域の機能不全を認識し、全ての紛争当事者に、政治的解決を促すこと。
■独立した調査機関が学校や病院への攻撃や国際人道法の違反を調査し、子どもの権利を侵害した当事者に責任を問うことを確実にすること。
1 国連の調査より。
2 Action on Armed Violenceによる調査より https://aoav.org.uk/category/latest_explosive_violence_monitor_updates/
3 東グータ地区で活動するセーブ・ザ・チルドレンのパートナー団体からの報告より。
4 セーブ・ザ・チルドレンが、シリア北西部に住む学生1,178人 (少年558人、少女 620人/年齢5歳から11歳)を対象とした調査結果より。
5 世界保健機関(WHO)ほかによる調査より。https://www.humanitarianresponse.info  
6 国連人道問題調整事務所(OCHA).Syrian Arab Republic, 2017 UN Inter-Agency Operations in Review参照

*報告書全文(英語)はこちら https://www.savethechildren.net/sites/default/files/Voices%20from%20Syria%27s%20Danger%20Zones%20-%20FINAL%20120318.pdf



プレスリリースのダウンロードはこちら



【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 広報 太田しのぶ
TEL: 03-6859-0011 Email: japan.press@savethechildren.org


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