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(公開日:2018.02.07)
戦闘が終わらないシリア国内へ数十万人の難民が帰還の危険

セーブ・ザ・チルドレンを含む人道支援団体6団体は、2018年2月5日に発表した報告書「危険な場所−シリア難民が直面する不確かな未来(Dangerous Ground Syria’s refugees face an uncertain future)*」で、シリアでは戦闘や爆撃、砲撃が市民の命を脅かす状態が続いているにもかかわらず、数十万人の難民が今年中にシリアに帰還させられてしまう危険があると警鐘を鳴らします。世界的な反難民の動きや、国際的な支援が減らされていることによるシリア難民を受け入れている周辺諸国の厳しい状況、そしてシリア政府の軍事的な優勢を背景に、シリアは安全で難民が帰還できるという誤解が広がっているなか、この報告書は発表されました。



報告書は、ヨーロッパ各国やアメリカ政府、シリア周辺地域の政府は、国境を封鎖し、シリア難民を強制的に押し戻し、あるいは公然と難民の入国を制約する措置を取り、多くの命を危険に晒していると警告しています。シリア国内の戦況が変化しているにも関わらず、最近のイドリブと東グータ地区で戦闘が激化しているように、シリアは依然として不安定で危険な状況です。

また、報告書によると、もともと住んでいた地域へ帰還するシリア人は、国内避難民を含め、2016年から2017年にかけて56万人から72万1,000人に増加しています。しかし、一人が帰還したとしても、暴力のために、新たに3人が避難をしています。2017年1月から9月の間に、シリアでは、およそ240万人(毎日8,000人以上)が、住む家を追われており、国連は2018年には、さらに150万人が避難を強いられると予測しています。

2017年には、シリア国内のいくつかの地域では戦闘の発生は減少しましたが、他の地域では、戦闘が増加し、市民数百人が殺害されたり、または、負傷しています。空爆や、迫撃砲、ブービートラップ(罠)は、人口密度の高い地域を含め、依然として日常にある危険です。

周辺国に避難している多くの難民の生活状況は悪化していますが、第三国への再定住の公式な機会がほとんどないため、安全を求める多くの人々は、最終的には、危険なルートや不法なルートを選択し、第三国に行くことになるか、または、シリアへ帰還することを迫られることになります。

この報告書は、ヨルダンやレバノン、トルコに避難している難民を支援するために、各国政府にさらなる行動を求めています。これらの国々は、これまでも驚くべき寛大さを示してきましたが、より豊かな国々の政治的意思の欠如によって、国境封鎖と難民帰還が正当化されてしまう、という現実があります。

先進国をはじめとする豊かな国は、2016年にロンドンで、2017年にブリュッセルで開催されたシリア危機に関する支援会合での合意内容を実行していません。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によるシリア難民の再定住申請数は、2017年には前年と比較して半減しています。また、再定住の定数を制限し、シリア難民の受け入れを拒否するアメリカ政府の行動は、難民の第三国定住人数の減少につながっています。しかし、他の国も、このような状況に対して取り組み強化をしていません。ヨーロッパの政治家、特にデンマークとドイツの政治家の一部は、現在、自国内のシリア難民の強制退去について議論しています。現時点では、脆弱な立場にあるシリア難民のわずか3%しか先進国に再定住できていません。

セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長ヘレ・トーニング=シュミットは、「子どもたちは、安全が確保されない間は帰還するべきではありません。現在、シリアの大半の地域は子どもにとって安全ではありません。爆撃は今も続き、学校や病院といった市民生活に必要な施設は、廃墟になっています。子どもたちは、長年の紛争により、深い精神的な傷を負ってしまっています。多くの子どもたちは、いまも悪夢をみています。平和になったら、子どもたちが帰還する前に、シリア国内の家や学校を修復しなければなりません。私たちが話をしたシリア難民の子どもたちは、シリアにある自宅に帰る以外のことは何もいらないと話していましたが、子どもたちが、シリアに戻ることができるのは、安全で帰還に耐えうる状況になった時です」と訴えます。

この報告書では、シリア国内で崩壊したインフラの再建に先立ち、大規模で、費用がかかる課題があることが強調されています。シリア南部で避難した人々のおよそ半数は、自宅が修繕不可能な程に損壊しているか、または破壊されたと話しています。シリア北西部では、自宅を失っていない人は、わずか5人に1人との報告があります。保健医療施設の半数が破壊されたか、または、閉鎖されており、学校3校のうちの1校は、損傷を受けているか、破壊されているか、または、他の目的のために使用されています。
*報告書全文(英語)はこちらhttps://www.savethechildren.net/sites/default/files/Dangerous%20Ground%20English.pdf




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【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 広報 太田しのぶ
TEL: 03-6859-0011 E-mail: press@savechildren.or.jp


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