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「保護者の約7割が学校に関わる費用をまかなえていないと回答」
岩手県山田町、宮城県石巻市「給付型緊急子どもサポート」受給世帯対象のアンケート調査結果を発表

(公開日:2016.12.21)
震災から5年たっても残る子どもの生活への負の影響
「保護者の約7割が学校に関わる費用をまかなえていないと回答」
岩手県山田町、宮城県石巻市「給付型緊急子どもサポート」受給世帯対象のアンケート調査結果を発表

東日本大震災発生以降、東北で活動を続ける子ども支援の国際NGOである公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(理事長:深田宏/専務理事・事務局長:千賀邦夫、本部:東京都千代田区)は、子どもの貧困問題解決への取り組みの一環として2016年春に実施した「給付型緊急子どもサポート〜新入学応援キャンペーン〜」の受給世帯へのアンケート調査結果を発表しました。
今回の「新入学応援キャンペーン」は、経済的困窮に関する一定の条件を満たす岩手県山田町、宮城県石巻市の小学1年生、中学1年生計283人(268世帯)に、新入学に伴い家庭の大きな負担となる制服・運動着の購入費用の一部を支給したものです。本調査では、東日本大震災で被害を受けた東北沿岸部にて、経済的に困難な状況下にある子どもや子育て世帯の状況、また子どもや保護者が必要とする支援の内容を把握することを目的に実施し、結果、大きく5点が明らかになりました。



1. 調査対象である経済的に困難な状況下の家庭においては、震災の影響により世帯の家計の状況が悪化しており、赤字で借金をしながら、あるいは貯金をとりくずして生活している家庭が増えていることがわかった。また、震災前と過去1年間を比較したところ、食料、電気、水道、電話、住宅ローンなどにおいて、経済的な理由で購入できなかったり、料金滞納により止められたり、滞納があったと回答した家庭が増えていることが確認された。

2. 本キャンペーンの受給世帯はひとり親家庭が多く(72.5%)、その回答からひとり親家庭が経済的に困難であり、より深刻な状況に置かれていることが浮き彫りとなった。

3. 就学援助制度は、子どもの貧困対策として重要な施策として位置づけられているが、就学援助制度を「利用している」と回答した保護者205人(77.3%)のうち、学校にかかる費用を「あまりまかなえていない」「まったくまかなえていない」と回答している保護者が65.4%にのぼった。また、16人の保護者が就学援助制度の利用が必要と考えられるにも関わらず、「周囲の目が気になって申請しなかった」「就学援助制度を知らなかった」といった理由から、就学援助制度を利用していなかった。

4. 経済的困窮が及ぼす子どもの生活への影響は多岐にわたり、医療へのアクセス、就学や学校外の活動への参加、ひいては進学機会にも負の影響があることが確認された。

5. 保護者は、保護者に対する支援として、経済的支援(子どもの就学にかかる費用の軽減や、住宅費の軽減、また一時的に必要となる資金を借りられること)を、子どもに対する支援として、子どもの学習や居場所、多様な活動への参加の機会を保障する支援を必要としていることが明らかになった。 


■調査概要
【目的】

東日本大震災で被害を受けた東北沿岸部にて、経済的に困難な状況下にある子どもや子育て世帯の状況、また子どもや保護者が必要とする支援の内容を把握すること。また、その結果を国や県、市町村と共有し、行政の支援施策の充実につなげるとともに、社会に向けて子どもの貧困対策の充実の必要性を啓発すること。

【主な調査内容】
主に、世帯の状況、震災前と過去1年の間の生活の変化、経済的困窮が及ぼす子どもの生活への影響、経済的に困難な状況下にある子どもや保護者に必要な支援の内容に関する4点

【調査の実施状況】
・調査地域 : 岩手県山田町、宮城県石巻市
・調査対象 : 新入学応援キャンペーン受給世帯(計268世帯)の保護者
※経済的困窮に関する一定の条件を満たすことを本キャンペーン受給要件とした。
・調査方法 : 受給世帯に対し、アンケートを郵送にて送付し、任意にて自記式にて回答の上、郵送にて返送。
・回収期間 : 2016年3月28日〜2016年11月22日
・有効回答数 : 265件 (回答率99%)
※調査結果(速報)レポートはこちら http://www.savechildren.or.jp/jpnem/jpn/pdf/tohoku_201612.pdf

【「給付型緊急子どもサポート〜新入学応援キャンペーン〜」について】

【地域】 岩手県山田町、宮城県石巻市 【時期】 2016年2〜7月
【対象】 経済的に困難な状況下にある世帯の小学1年生、中学1年生
【内容】 制服・運動着の購入費用の一部として、小学生上限1万円、中学生上限4万円を支給
【受給者数】 283人


■本調査結果をうけての今後の活動

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、経済的に困難な状況下の家庭の子どもたちへの給付金や給付型奨学金の提供を行うと同時に、受給者の声や実態把握のための調査、子どもの貧困対策の充実に向けた社会啓発、政策提言を引き続き実施します。
東北地域に対しては、来春、小中学校や高校へ入学する子どもたちを対象に、制服・運動着の購入費用の一部を給付する、「給付型緊急子どもサポート〜新入学応援キャンペーン2017〜」を1月より開始します。

※「給付型緊急子どもサポート〜新入学応援キャンペーン2017〜」について
【対象】 岩手県山田町、宮城県石巻市に在住し、2017年4月に公立小・中学校、高校(国公立・私立・フリースクール等も含む)に入学予定の子どものいる保護者で、次のいずれかにあてはまる世帯
1、生活保護を受けている世帯
2、生活保護が過去1年以内に停止または廃止された世帯
3、保護者(ふたり親家庭の場合父母双方)の市町民税が非課税の世帯
4、児童扶養手当の支給を受けている世帯
【内容】 制服・運動着の購入費用の一部として、新小1/上限1万円、新中1/上限4万円、新高1/上限5万円を
支給(上限以下の場合は実費)
【実施方法】 岩手県山田町、宮城県石巻市内の学校等を通じて、対象学年に申請書を配布。もしくはセーブ・ザ・チルドレン・ジャパンへの問い合わせにより申請書を案内。2017年1月〜2月末に申請された書類について、審査を行った上、給付金を支給。

その他に、下記の事業を予定しています。
・就学援助制度が適用されない高校生を対象とした給付型奨学金の提供
・ひとり親家庭の保護者を対象としたセミナーやひとり親家庭の子どもを対象としたレクリエーション活動の機会提供
・調査結果をもとに、就学援助制度の利用促進およびさらなる充実に向けて、周知や申請方法等の改善、就学援助の支給内容や金額の拡充等に関する社会啓発イベントや政策提言の実施

<セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの日本の子どもの貧困問題へ取り組み>
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、2010年から日本の子どもの貧困問題解決への取り組みを開始し、現在、1)貧困下にある子どもや養育者への直接支援、2)子どもの貧困対策充実に向けた世論形成のための社会啓発、3)子どもの貧困問題に関する政策・施策のより良い整備に向けた政策提言という3つの軸をもとに、活動しています。
「給付型緊急子どもサポート」は、直接支援の一環として、東日本大震災発生直後から2015年末まで約5年にわたり実施してきた緊急・復興支援事業の知見・経験、行政や地域とのネットワークを生かし、東北地方沿岸部で実施すると同時に、熊本地震復興支援の一環としても実施しています。2016年は、東北では283人、熊本では637人に給付金を通じて支援を届けました。熊本県での実施状況は下記の通りです。

■夏休み応援キャンペーン
【地域】 熊本県益城町 【時期】 2016年7月
【対象】 被災もしくは経済的に困難な状況下にある世帯の中学3年生
【内容】 夏休みの学習や文化・スポーツ活動に対する給付金5万円を支給
【受給者数】 266人
※受給家庭への実態調査結果はこちら: http://www.savechildren.or.jp/scjcms/press.php?d=2336
 
■修学旅行応援キャンペーン:高校生
【地域】 熊本県 【時期】 2016年8〜9月
【対象】 被災もしくは経済的に困難な状況下にある世帯の定時制高校3年生
【内容】 修学旅行費用実費6万円を支給 【受給者数】 16人

■修学旅行応援キャンペーン:中学生
【地域】 熊本県益城町、御船町 【時期】 2016年9〜11月
【対象】 一部損壊世帯(就学援助の対象外)の中学2年生
【内容】 修学旅行費用実費5万円強を支給 【受給者数】 223人(益城町155人、御船町68人)

■高校卒業応援キャンペーン
【地域】 熊本県益城町 【時期】 2016年12月
【対象】 被災もしくは経済的に困難な状況下にある世帯の2017年3月に卒業予定の高校生128人
※12月20日時点
【内容】 進学・就職に向けた給付金5万円を支給


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取材のお申し込みや、本件に対する報道関係の方のお問い合わせ
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン コミュニケーションズ部広報 田代
TEL: 03-6859-0011 E-mail: press@savechildren.or.jp


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