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(公開日:2015.03.15)
【シリア危機5年目】紛争の代償:シリアで教育が失われていることによる、深刻な経済的損失を試算(2015.03.15)

3月15日でシリア危機は5年目に突入しました。この間、シリアではおよそ300万人の子どもたちが学校教育を受けられない状況にあり、搾取や将来を脅かされるリスクに晒されています。この状況に早期に取り組まない限り、シリアの恒久的平和と安定は不透明なままです。


銃弾の穴のあいた黒板(シリア国内)

紛争前、シリアでは、ほぼ全ての子どもたちが小学校に在籍しており、15〜24歳の識字率は95%に達していました。しかし、紛争勃発から4年が経過し、およそ300万人の子どもたちが学校に通えていない現在のシリアは、世界で最も就学率の低い国の一つになっています。シリア北部の都市アレッポにおける就学率はわずか6%で、難民の子どもたちの半数は、一切の教育を受けることができずにいます。

危機勃発から5年目のシリアの子どもたちの教育状況

•シリアにおける基礎教育が、ほぼ100%の就学率から50%に減少。長期に渡る激戦地である北部の都市アレッポではわずか6%。
•シリア国内では少なくとも4分の1の学校が損壊している。
•およそ300万人のシリアの子どもが学校に通えていない。
•2014年には、シリア難民の子どもたちの半数が一切の教育を受けられなかった。
•シリア危機対応において国際社会は、教育分野の支援に関し、必要とされる支援総額の半分しか割り当てることができていない。

シリアで教育が失われていることによる経済的損失

・シリア国内の破壊された教育システムを修復するのに必要なコストは、3,580億円以上にものぼる。

軍事衝突が頻繁に発生している激戦地では、2014年9月時点でおよそ64%もの学校が損壊していると推定される状況に基づき、学校の修繕にかかる直接的費用、学校設備や備品の補充費用、代替教員の研修費用などを含んで試算しています。

・シリアの子どもたちがこのまま教育を受けられずに「失われた世代」となった場合、シリア経済に及ぼす損失は毎年2,700億円にも達する見込みである。

子どもたちがこのまま教育を受けられず、将来高い収入を得られる仕事に就ける可能性が絶たれることで、シリアの国内総生産(GDP)はマイナス5.4%成長となり、シリア経済に及ぼす損失は毎年2,700億円に達する見込みです。

この試算は、教育を受けられない子どもたちの収入見込み減による経済損失のみを算出したもので、低学歴層の増加による保健や福祉への社会負担、乳幼児死亡率の増加などによる損失は含まれていません。

シリアの「失われた世代」の子どもたちは、将来、本来であれば得られた収入のおよそ3分の1しか得られない見込みです。初等教育を終えることが出来なかったシリアの子どもが将来得られる収入は、中等教育を終えた子どもよりも32%、大学などの高等教育を終えた子どもよりも56%少なくなることが予測されます。


シリア国内の避難民キャンプの子どもたち

セーブ・ザ・チルドレンは、2015年をシリアの子どもたちの将来を軌道に戻す年とするため、援助国、シリア難民の受け入れ国、紛争の全当事者、そして国際社会に対し、次の対策を早急に講じることを求めています——

•シリアの子どもたちへの教育をシリア危機対応の重要な要素として優先付けること。そして、シリア国内に留まる子どもたち、国外に避難している子どもたち両方を対象とすること。
•シリアにおける教育への攻撃を終わらせ、学校を子どもたちにとって安全な場所にするよう求め続けること。

Save the Children, CfBT Educatin Trust, American Institute of Research(2015) “THE COST OF WAR: Calculating the impact of the collapse of Syria’s education system on Syria’s future” (英語)より

【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
広報担当:田代範子
電話:03-6859-0011 FAX:03-6859-0069


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