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(公開日:2020.03.06)
緊急声明 新型コロナウイルス対応措置としての全国一斉休校の要請に伴う第2弾緊急対応策に関し、子どもの学ぶ権利を守る対応と、必要な予算措置を求めます


2020年3月6日
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン

去る2月27日、安倍晋三内閣総理大臣は新型コロナウイルス感染症対策の一環として、小中高校および特別支援学校に対し休校を要請し、既に全国各地で休校が始まっています。その影響は、全国1,300万人もの子どもたち(小中高校・特別支援学校)、その保護者・家庭、子どもにかかわる現場、そして社会全体に多大かつ広範に及んでいます。そのような状況の中、今後政府が講ずる対応措置に際し、私たちセーブ・ザ・チルドレンは子どもの学ぶ権利が守られるよう、また、特に経済的に困難な状況にある家庭が負の影響を受けないよう、以下4点の対応を日本政府に求めます。なお、項目の順番は優劣を示すものではなく、これらを含む多くの関連施策が同時に講じられる必要がありますi。
  • 1.子どもの教育を途切れさせず、教育格差を助長しない支援・対策
  • 2.子どもの学びや育ちを阻まないような既存支援施策の弾力的運用
  • 3.全国一斉休校の要請による子どもに対するインパクト調査・評価
  • 4.差別を助長しない取り組みの推進


それぞれの項目に関する詳細は下記の通りです。

1.子どもの教育を途切れさせず、教育格差を助長しない支援・対策
今回の一斉休校の要請によって子どもたちは、地域により異なるものの、長いところでは40日ほど学校の授業から離れることになります。そのため、子どもの学ぶ機会が途切れることのないよう、かつ個人間・地域間で教育格差を生むことのない対応策を講ずることが必要です。

文部科学省は、学習に著しい遅れが生じないよう「家庭学習を適切に課す等の必要な措置を講じる」ことii 、また、家庭学習においてインターネットなどの情報通信技術を活用することに言及していますiii 。さらに、経済産業省は、「Ed Tech」の活用を奨励し、「『学校が閉まってるからって、学びを止めないで済む』―そんな社会の実現に向けた挑戦だと、前向きに考えたらよいのではないでしょうか」と呼びかけていますiv。

このような緊急時において、家庭やテクノロジーが果たす役割については十分理解する一方、実際には、「自宅が勉強できる環境にない」「インターネットにつながるパソコンがない」という子どもも存在し、突然の長期休校により、学習に必要な資源に不平等が生じる可能性は極めて高いといえますv。また、現在、授業の理解度、家庭用学習教材の所有、学びを手伝う存在の有無などにおいてすでに有意な格差が生じている現状があり、今回の長期休校は、さらなる教育格差を招きかねないと危惧します。

また、身体・知的・発達・学習に関わるさまざまな障害・疾病を持つ子どもたちの教育においても、それぞれのニーズに合わせた対応が求められます。

家庭や地域で学びの場を確保できる子ども/できない子どもの格差、また、オンライン資源へのアクセス格差が起きないような教育支援策が必要であり、この対策を国として検討し、必要な予算措置をとることを要請します。

2.子どもの学びや育ちを阻まないような既存支援施策の弾力的運用
すでに保護者の所得補償が検討されていますが、即応性の高い経済的支援によって子どもへの影響を押さえることが期待できます。そこで、既存の制度を弾力的に運用することを求めます。

例えば、就学援助制度や高校生等奨学給付金、生活保護制度、生活福祉資金等の積極的活用の呼びかけと審査期間の短縮化、手続きの簡素化や支給の前倒しなどviも検討し、自治体へ通知を発出することも考えられます。

3.全国一斉休校の要請による子どもに対するインパクト調査・評価
今般の一斉休校要請に対し、各地の家庭や現場、自治体からさまざまな声が上がっているものの、その影響の全容は見えていません。どのような影響が子どもや家庭、子どもたちが過ごす場に生じたのか、早急に国として調査することを求めます。

特に、子どもの学びや育ちが阻害されていないか、安全な状況(環境・栄養など)で過ごせているか、経済的な影響を受けていないかviiiを把握することが重要です。また、自治体や学校などが独自にそのような調査を実施している場合は、それに伴う予算を国が確保するなど、今回の一斉休校によるインパクトを国が調査・評価し、生じた影響に対して遡って支援することも含めて必要な対策を検討することを求めます。

4.差別を助長しない取り組みの推進
第2弾緊急対応策に限らず、新型コロナウイルス感染症への様々な対策を進めていく中で、特定の国・地域や罹患した人に対する差別・偏見を助長する言動や方針はいかなる場合であっても絶対に許さないという姿勢を政府が明確に示すことは極めて重要です。

感染症対策において、差別・偏見が助長されるような状況が生じた場合には、子どもの学びや育ちにおける影響は計り知れません。日本政府においては、差別を生まない感染予防・罹患者保護などの取り組みを推進するよう求めます。

刻々と状況が変化している中、より困難な状況に置かれる可能性のある子ども・家庭に対して、そのニーズに即した対策を打ち出していくことが重要です。セーブ・ザ・チルドレンは、政府が新型コロナウイルス感染症対策やそれに伴う支援策を講じる際に、当事者である子ども・家庭・学校等の声に耳を傾け反映していくことの必要性を強く訴えます。

i「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークは、3月4日に「新型コロナウイルスの感染拡大予防のための休校要請」に関する緊急要望書(第2次)―経済的に困難を抱える子どもと家族の生活保障のために―を発表しており、セーブ・ザ・チルドレンも賛同しています。
ii 文部科学省事務次官の通知(2020年2月28日)
iii 文部科学省初等中等教育局教育課程課の事務連絡(2020年2月28日)
iv「新型コロナ感染症による学校休業対策 『#学びを止めない未来の教室』」 経済産業省教育産業室より緊急メッセージ
v 東京都「子供の生活実態調査」(2017年)では、「自宅で宿題(勉強)ができる場所」について、困窮層では小学5年生の11.2%、中学2年生の13.9%、16-17歳の16.8%が「ない(欲しい)」と回答しており、「自宅でインターネットにつながるパソコン」については、困窮層では小学5年生の39.3%、中学2年生の40.3%、16-17歳の41.2%が「ない」と回答しています。
vi この他、児童手当を当該月分まで先に支給する、6月に支給する分を前倒して支給するといった措置も考えられます。
vii 3〜4月は、進学や進級、新生活など子どものいる家庭において最も支出がかさむ時期の一つです。厚労省・国民生活基礎調査(2016年)では、「貯金がない」とした世帯は全世帯の14.9%、児童がいる世帯の14.6%、母子世帯の37.6%にのぼっていますが、一斉休校の要請により、さらなる家計負担が生じている可能性があります。







【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 広報 太田
TEL: 03-6859-0011 E-mail: japan.press@savethechildren.org



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