(公開日:2016.03.11)東日本大震災緊急・復興支援事業の報告書を発表:5年間の支援活動から得た学びと、今後の災害対策への提言
子ども支援の国際NGOである公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン(理事長:深田宏/専務理事・事務局長:千賀邦夫、東京都千代田区、以下セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン)は、2011年3月11日の震災直後から5年間にわたり、岩手県、宮城県、福島県にて実施した支援活動の報告書「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン東日本大震災緊急・復興支援 5年間の軌跡〜子どものために・子どもとともに〜」を発表しました。本報告書は、将来起こりうる災害時の子ども支援に活かされることを目的として、活動の主な実績の報告に加え、事業を通じて学んだ知見や教訓の記録と、子どもの権利が保障される緊急・復興支援のあり方に対する提言をまとめたものです。
■ セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの東日本大震災緊急・復興支援事業
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもや養育者が震災の影響から回復し、子どもたちが安心・安全に学び、遊び、育つ環境や機会が保障されること、そして子どもたちが復興・防災などにおいて画期的な変化を起こす主体者となり、復興の過程に、地域の一員である子どもたちの声が反映されることの2つの目標を立て、5年間の多岐にわたる活動を通じて、のべ約188万人に支援を届けました。
事業は6つの分野と、分野を横断する防災(災害リスク軽減)の取り組みにおいて実施。2015年末をもって5ヵ年計画が完了しましたが、一部の事業を継続するとともに、活動が地域に根付くようフォローアップを続けています。
<東日本大震災緊急・復興支援事業 6分野>
1.震災直後の支援物資・学用品の配布や避難所などで「こどもひろば」の設置などを行った、緊急支援
2.子どもの学習環境の回復・改善、学習機会の回復・拡充を行った、教育支援
3.放課後児童クラブ(学童保育)の支援など、子どもが安心・安全に遊び、学び、成長できる環境づくりを行った、子どもの保護
4.子ども参加によるまちづくり事業として、子どもまちづくりクラブの活動をはじめ復興や防災に子どもたちの声が反映されるよう働きかけを行った、子どもにやさしい地域づくり
5.被災地域で活動するNPOや団体が、子ども支援を効果的かつ長期的に継続できるように助成や組織運営強化支援を行った、コミュニティ・イニシアチブ
6.複合災害により多様化する環境の中で過ごす福島の子どもたちや、地域の支援者を支える活動を行った、福島プログラム
■ 東日本大震災緊急・復興支援活動を通して得た8つの学び
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを含む世界30ヶ国の独立した組織が連携するグローバルな国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは、100年の歴史の中で、世界各地のさまざまな自然災害や人道危機の被害を受けた子どもたちへの支援を実施してきました。しかし、日本国内での災害対応は東日本大震災が初めてであり、本報告書では、海外での豊富な経験を持つ国際NGOとして、国内の状況に合わせながら活動を展開する上で蓄積した知見や教訓を紹介しています。具体的には以下8つの学びです。
•災害直後、緊急・復興支援のために多くの支援団体が現地に集中する中、各団体が組織の特性を軸とした立ち位置を見極め、役割を果たすことが肝要である。
•緊急・復興支援は学齢期の子どもたちの場合、学校生活の回復に焦点をおきがちだが、子どもたちの放課後や余暇の時間に着目した支援も不可欠である。
•子どもの権利基盤型プログラミングの視点は緊急・復興支援においても有用である。
•子どもの声にもとづく事業計画策定・実施・モニタリング・評価は、容易ではないが意義は大きい。
•緊急・復興支援においても、子ども参加の機会は保障されるべきである。
•地域のNPOを支援することが緊急・復興支援事業のインパクトを高めることにつながる。
•緊急・復興時においても子ども支援の現場でこそ、子どもの安心・安全にかかる取り組み強化が不可欠である。
•緊急・復興支援においては、事業実施期間中に評価の機会を設けることが事業の質を担保する。
■ 今後の子ども支援に向けた8つの提言
東日本大震災を契機に、災害時の緊急・復興支援のあり方は、さまざまな角度から検討が加えられています。しかしながら、緊急・復興支援における子どもの位置づけが、それらの枠組みで十分検討・反映されているとはまだ言えません。本報告書では、今後も起こりうる災害に備えて、また東日本大震災の影響を受けた地域の子どもたちへの今後の支援に向けて、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの経験をもとに提言をまとめました。
<今後も起こりうる災害に備えて>
•子どもを24時間守れる「子ども中心の防災」のための仕組みや体制づくりを、学校、家庭、地域の協力のもとに推進する必要があります。
•学校に相当する形で学童保育においても、子どもの安心・安全を担保するための十分な防災に向けた対策を促進する必要があります。
•災害発生直後においては、子どもが災害から受ける影響に十分配慮し、子どもの視点にたった環境づくりや子どもの心に配慮した取り組みが、すべての場において必要です。
•緊急・復興時においても、子どもに関係する政策や施策、取り組みに関して、子どもは意見を表明し、社会に参加する主体として位置づけられ、そのような機会が提供されるべきです。
•災害時におけるNGO・NPOの役割を公的な防災計画などに明確に位置づけることが必要です。
<東日本大震災の影響を受けた地域の子どもたちへの今後の支援に向けて>
•より困難な状況にある子どもたちこそ、支援のニーズは今でも高く、そのような子どもたちを支援するには、支援者側への継続的な支えも必須です。
•被災地域における子どもの虐待・ネグレクトの早期予防を進めるために、虐待に至る前の「グレーゾーン」にある養育者と子どもに焦点をあてた対応が求められています。
•より包括的な子ども・子育て支援を実施するために、行政と地域NPOをはじめとする市民社会のパートナーシップを強化する必要があります。
■ セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの今後の国内事業
東日本大震災は、それ以前から日本国内で課題となっていた子どもの権利侵害を改めて認識する契機ともなりました。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが緊急・復興支援を進める中で、子どもの貧困や子ども虐待などの課題が被災地で見えてきました。この状況を受け、今後は緊急・復興支援を通じて築かれた行政や地域とのパートナーシップをもとに、「子どもの貧困問題解決」や「子ども虐待の予防」など、東北を含む日本国内での子どもを取り巻く課題解決のために事業を進めてまいります。
*「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 東日本大震災緊急・復興支援事業5年間の軌跡〜子どものために・子どもとともに〜」全文のPDFファイル
*上記報告書と同時に、株式会社国際開発アソシエイツによる外部評価報告書「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 東日本大震災緊急・復興支援プログラム(GEJAREP)最終評価」も公開しました。
■ セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの東日本大震災緊急・復興支援事業
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、子どもや養育者が震災の影響から回復し、子どもたちが安心・安全に学び、遊び、育つ環境や機会が保障されること、そして子どもたちが復興・防災などにおいて画期的な変化を起こす主体者となり、復興の過程に、地域の一員である子どもたちの声が反映されることの2つの目標を立て、5年間の多岐にわたる活動を通じて、のべ約188万人に支援を届けました。
事業は6つの分野と、分野を横断する防災(災害リスク軽減)の取り組みにおいて実施。2015年末をもって5ヵ年計画が完了しましたが、一部の事業を継続するとともに、活動が地域に根付くようフォローアップを続けています。
<東日本大震災緊急・復興支援事業 6分野>
1.震災直後の支援物資・学用品の配布や避難所などで「こどもひろば」の設置などを行った、緊急支援
2.子どもの学習環境の回復・改善、学習機会の回復・拡充を行った、教育支援
3.放課後児童クラブ(学童保育)の支援など、子どもが安心・安全に遊び、学び、成長できる環境づくりを行った、子どもの保護
4.子ども参加によるまちづくり事業として、子どもまちづくりクラブの活動をはじめ復興や防災に子どもたちの声が反映されるよう働きかけを行った、子どもにやさしい地域づくり
5.被災地域で活動するNPOや団体が、子ども支援を効果的かつ長期的に継続できるように助成や組織運営強化支援を行った、コミュニティ・イニシアチブ
6.複合災害により多様化する環境の中で過ごす福島の子どもたちや、地域の支援者を支える活動を行った、福島プログラム
■ 東日本大震災緊急・復興支援活動を通して得た8つの学び
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンを含む世界30ヶ国の独立した組織が連携するグローバルな国際NGOセーブ・ザ・チルドレンは、100年の歴史の中で、世界各地のさまざまな自然災害や人道危機の被害を受けた子どもたちへの支援を実施してきました。しかし、日本国内での災害対応は東日本大震災が初めてであり、本報告書では、海外での豊富な経験を持つ国際NGOとして、国内の状況に合わせながら活動を展開する上で蓄積した知見や教訓を紹介しています。具体的には以下8つの学びです。
•災害直後、緊急・復興支援のために多くの支援団体が現地に集中する中、各団体が組織の特性を軸とした立ち位置を見極め、役割を果たすことが肝要である。
•緊急・復興支援は学齢期の子どもたちの場合、学校生活の回復に焦点をおきがちだが、子どもたちの放課後や余暇の時間に着目した支援も不可欠である。
•子どもの権利基盤型プログラミングの視点は緊急・復興支援においても有用である。
•子どもの声にもとづく事業計画策定・実施・モニタリング・評価は、容易ではないが意義は大きい。
•緊急・復興支援においても、子ども参加の機会は保障されるべきである。
•地域のNPOを支援することが緊急・復興支援事業のインパクトを高めることにつながる。
•緊急・復興時においても子ども支援の現場でこそ、子どもの安心・安全にかかる取り組み強化が不可欠である。
•緊急・復興支援においては、事業実施期間中に評価の機会を設けることが事業の質を担保する。
■ 今後の子ども支援に向けた8つの提言
東日本大震災を契機に、災害時の緊急・復興支援のあり方は、さまざまな角度から検討が加えられています。しかしながら、緊急・復興支援における子どもの位置づけが、それらの枠組みで十分検討・反映されているとはまだ言えません。本報告書では、今後も起こりうる災害に備えて、また東日本大震災の影響を受けた地域の子どもたちへの今後の支援に向けて、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの経験をもとに提言をまとめました。
<今後も起こりうる災害に備えて>
•子どもを24時間守れる「子ども中心の防災」のための仕組みや体制づくりを、学校、家庭、地域の協力のもとに推進する必要があります。
•学校に相当する形で学童保育においても、子どもの安心・安全を担保するための十分な防災に向けた対策を促進する必要があります。
•災害発生直後においては、子どもが災害から受ける影響に十分配慮し、子どもの視点にたった環境づくりや子どもの心に配慮した取り組みが、すべての場において必要です。
•緊急・復興時においても、子どもに関係する政策や施策、取り組みに関して、子どもは意見を表明し、社会に参加する主体として位置づけられ、そのような機会が提供されるべきです。
•災害時におけるNGO・NPOの役割を公的な防災計画などに明確に位置づけることが必要です。
<東日本大震災の影響を受けた地域の子どもたちへの今後の支援に向けて>
•より困難な状況にある子どもたちこそ、支援のニーズは今でも高く、そのような子どもたちを支援するには、支援者側への継続的な支えも必須です。
•被災地域における子どもの虐待・ネグレクトの早期予防を進めるために、虐待に至る前の「グレーゾーン」にある養育者と子どもに焦点をあてた対応が求められています。
•より包括的な子ども・子育て支援を実施するために、行政と地域NPOをはじめとする市民社会のパートナーシップを強化する必要があります。
■ セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンの今後の国内事業
東日本大震災は、それ以前から日本国内で課題となっていた子どもの権利侵害を改めて認識する契機ともなりました。セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが緊急・復興支援を進める中で、子どもの貧困や子ども虐待などの課題が被災地で見えてきました。この状況を受け、今後は緊急・復興支援を通じて築かれた行政や地域とのパートナーシップをもとに、「子どもの貧困問題解決」や「子ども虐待の予防」など、東北を含む日本国内での子どもを取り巻く課題解決のために事業を進めてまいります。
*「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 東日本大震災緊急・復興支援事業5年間の軌跡〜子どものために・子どもとともに〜」全文のPDFファイル
*上記報告書と同時に、株式会社国際開発アソシエイツによる外部評価報告書「セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン 東日本大震災緊急・復興支援プログラム(GEJAREP)最終評価」も公開しました。
本プレスリリースのPDFファイル
【本件に関する報道関係者からのお問合せ先】
公益社団法人セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン
コミュニケーションズ部広報
TEL: 03-6859-0011