日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2025.05.13)
「妊産婦の方との関係づくりの第一歩として、役立っています」−「ハロー!ベビーボックス」を活用している自治体職員の声
セーブ・ザ・チルドレンは、2022年より、新生児に必要な育児用品を詰め合わせた「ハロー!ベビーボックス」を、低所得など困難な状況にある妊産婦を対象に年2回提供しています。
「ハロー!ベビーボックス」は、妊産婦本人による応募とともに、自分で応募することが難しい妊産婦に代わって保健師など自治体職員が応募する代理応募も取り入れています。2024年秋には、自治体を通して合計518箱を提供しました。
今回は、「ハロー!ベビーボックス」を活用している関東地方の自治体職員と保健師の方にお話を伺いました。
Q.「ハロー!ベビーボックス」はどういった妊産婦の方にお渡ししていますか?
こちらの自治体では、予期せぬ妊娠・希望しない妊娠、パートナーがいないなどの妊産婦の方への支援として「ハロー!ベビーボックス」をお渡ししています。中には妊娠34〜35週で病院未受診だったため不安になり、役所に来るというケースや、生活が不安定で住む場所すらない方もいます。精神的な不調や経済的困窮、ひとり親や障害を抱えた家庭が多く、支援の必要性が高いと感じています。
Q.「ハロー!ベビーボックス」をどのように活用していますか。どのような効果がありますか。
困難な状況にある妊産婦の方は、自分自身が親から大事にされなかった経験や予期せぬ妊娠によって、自己肯定感が低かったり、負い目を感じている方も多いです。そのため、支援しようとすると「この人からも、妊娠したことを責められるのではないか」と感じ、支援を拒絶される方もいます。
そんな中、「ハロー!ベビーボックス」は、「あなたを応援しているよ」という自治体側のメッセージを視覚的に届けられるツールとして、とても助かっています。赤ちゃん向けのアイテムはもちろん、お母さん向けのグッズが入っているのがよいと感じています。周りはつい赤ちゃんのことばかりに目が向いてしまいがちですが、「お母さん自身のことを心配しているよ」ということが伝えやすいと感じています。
また、オムツがないから役所にオムツをもらいに来る方もいたり、明日必要な物がないという方は多いですが、「ハロー!ベビーボックス」には必要な物がすべてそろっているので、大変役立っています。「ハロー!ベビーボックス」をきっかけにして、妊産婦の方とつながることができるので、そこから1年ほどかけてコンタクトをとり、しっかりとこちらと関係づくりができればとてもよいと思っています。
Q.困難な状況にある妊産婦の方を支援する中で、難しさを感じるのはどんな場面ですか?
特に支援が必要とされる妊産婦の方の場合、自分から情報を調べたり、助けを求めたりすることが難しい場合が多いと感じます。継続的に行政とつながることが大切ですが、なかなか行政につながろうとしない、支援を拒絶される方も多く、そういう方の支援が一番難しいです。産後については赤ちゃんの状態も心配なので、乳幼児健診や地域の支援団体と連携し、何とか関係づくりを図っています。
赤ちゃん用品を届けるという形で、関係づくりのきっかけを作れるので「ハロー!ベビーボックス」はとてもありがたいです。
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今回話を聞いた自治体職員と保健師の方は、困難な環境にある妊産婦に寄り添い、「ハロー!ベビーボックス」を、支援が必要な妊産婦との関係づくりのきっかけに活用されています。支援が必要な家庭は、ひとり親、若年妊娠、多子世帯、障害、精神疾患、妊産婦自身の困難な生育歴など多様な背景があり、その家庭に合わせた対応が求められます。その入り口として、「ハロー!ベビーボックス」のような支援が有効ですが、ほとんどの自治体で未だこうした取り組みは行われていません。
より多くの自治体が取り組みを推進できるよう、セーブ・ザ・チルドレンは、今後も「ハロー!ベビーボックス」の提供と合わせて、こうした現場の声をこども家庭庁や国会議員などに届け、制度改善や仕組みづくりを後押ししていきます。
セーブ・ザ・チルドレンでは、「ハロー!ベビーボックス」以外にも、子どもの貧困問題解決に向けた、さまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は随時こちらのページで更新しています。ぜひご覧ください。
(報告:国内事業部 池田)