日本/子どもの貧困問題解決(公開日:2025.04.03)
【実施報告2】子ども支援者向け勉強会を開催しました
セーブ・ザ・チルドレンは、2025年2月16日に、「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワークと共同で、子ども支援者向けの勉強会を実施しました。
この勉強会は、2024年11月にセーブ・ザ・チルドレンが公表した、「子どもの貧困と子どもの権利に関する全国市民意識調査」の調査結果の紹介と、子どもの貧困問題に関してどのように社会の理解を拡げていくか考えるパネルディスカッションの二部構成で行いました。(調査結果はこちら)
調査結果の報告と、講評についてまとめた前半の記事はこちらから
後半は、さまざまな立場から子ども支援に関わる方々を招いてパネルディスカッションを行いました。
パネラー一覧(五十音順)
・栗林知絵子氏 認定NPO法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク 理事長
・鈴木太地氏 こども家庭庁支援局家庭福祉課 主査
・津田知子氏 東京都世田谷区子ども・若者部 子ども家庭課
・柳澤靖明氏 公立中学校事務職員・「隠れ教育費」研究室チーフディレクター

まず、それぞれの立場から、調査結果をどのように受け止めたか尋ねました。
日頃東京都豊島区地域で活動している栗林氏は、子どもに必要なものとして、「誕生日、クリスマス、お正月など特別な日のお祝い」を選ぶ割合が大人より子どもの方が高かったことに触れ、子育てを家族の自己責任でのみ行うのではなく、地域の力で補える部分もあるのではないかと述べました。
次に、学用品費などの「隠れ教育費」について研究している柳澤氏は、子どもの貧困問題を解決するために国や自治体が取り組むべきこととして、「小中高校生活にかかる費用をすべて無料にすること」を選ぶ割合が最も高かったことに触れ、年々子どもの学習にかかる費用が増加していることを指摘し、学校現場で教職員が子どもの権利の視点から、本当にそれが子どもにとって必要な費用なのかを考えることが必要ではないかと述べました。また、経済的に困難な状況にある子どもから、「校則はみんな同じで髪型とか決まりがある。そんなに髪切りにいけない家はどうしたらいい? そういうのも貧困なはずなのに当たり前のように校則違反になっても困る」といった声が寄せられていることにも触れ、「学校は散髪代を補助することはできないが、校則を見直すことはできる、そうした具体的なところに教育現場ではアプローチできる」と述べました。
続いて、東京都世田谷区の職員である津田氏は、子どもの貧困対策の主体として基礎自治体への期待が寄せられていることに触れつつ、世田谷区は子どもの貧困対策に積極的に取り組んでいる一方で、他の自治体との地域間格差が生じてしまっていることを指摘し、子どもがどこに暮らしていても支援を受けられるよう国と連携する必要があると述べました。また、今回の調査で、子どもの貧困問題は保護者が解決すべき、と回答した割合が16.5%いたことに触れ、世田谷区が実施している子どもの生活実態調査では、経済的に困難な状況にある保護者も子どものころに被虐待経験などがあることが分かっており、子どもの貧困問題は「家族の努力やがんばり次第だから」と簡単に断じることはできないことも述べました。さらに、今回の調査で経済的に困難な状況にある子どもたちが、「子どもの意見を政策や施策に反映することができる制度・仕組みを作ること」を求める割合が高かったことに触れ、日常の場で小さなことから子どもたちの意見を聴いていくことが重要であり、それが子どもたちをエンパワーメントしていくのだと改めて感じたと述べました。
最後に、こども家庭庁支援局家庭福祉課の鈴木氏も、子どもの意見反映について子どもたちが求める割合が高かったことに触れ、2024年6月に改正された「こどもの貧困解消法」に経済的に困難な状況にある子どもたちから意見を聴く条文が新設されたことを紹介しました。そのうえで、声をあげづらい子どもたちの声を聴くために、アウトリーチ型で子どもの意見を聴いていく必要があると改めて実感したと述べました。

次に、今後子どもの貧困問題に関して市民社会の理解を拡げていくためにはどのような方策が考えられるか尋ねました。
柳澤氏からは、学校現場でできることとして、教職員の研修の場を設けるべきとの意見が出ました。教職員が子どもの貧困問題の状況や子どもの権利条約について学ぶ機会をもつことが、市民社会の理解を拡げることにつながるのではないかと述べました。
栗林氏からは、官民の連携が重要であるとの意見が出ました。特に外国ルーツの子ども・保護者は自分たちの困難な状況をうまく行政に訴えることが出来ないこともあるため、地域の大人がそうした困難を行政に訴えていく、変えていくことが社会を変えていくことにつながると述べました。豊島区では、栗林氏ら民間団体が区役所の庁舎で子どもの貧困に関する啓発活動を行っており、それがきっかけで区民が地域活動に参加したという事例もあるそうです。こうした活動から、市民が子どもの貧困について知る機会を増やすことが重要だと栗林氏は指摘しました。
津田氏は、子どもの貧困は子どもだけの問題ではないため、行政において子ども・若者関係の所管だけではなく、住宅や男女共同参画に関わる所管など、行政が庁内横断的に連携し、市民と一緒に子どもの貧困について対話していくことが重要であると述べました。
鈴木氏は、こども家庭庁だけでなく、文部科学省、厚生労働省など、関係省庁と連携して、子どもの声を聴きながら対策や啓発を行っていくことが必要であると述べました。
最後に、共催である「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人である山野良一氏から閉会のあいさつがありました。
「子どもの権利とは『対話』であると思います。子どもの権利は子どもたち全員がもっているものですが、なかなか自分の権利を主張したり意見を述べたりすることが難しい子どもたちがいます。そうしたことに気づいたうえで、子どもと大人が対話することではじめて市民の中で子どもの権利について認識が広がるのではないでしょうか。今回の勉強会や調査が対話のきっかけになればいいと思います」
参加者からは、
「子どもの貧困に限らず、『貧困』は解決しなければならない社会課題と認識しています。『子どもの権利』の視点を加えることで、学校現場で新たなアプローチに繋がるヒントを1つもらえた気がします」
「子ども達が、それぞれにある特性や特徴に応じて、対話をする相手がいたり、その方法が確保されていると言うことがとても大切なのではないかと思います。それは家族だけにとどまらず、そういった相手が増えていく事が子どもの権利が守られていくためのセーフティネットになるのではないかと思ったからです」
といった声が寄せられました。
セーブ・ザ・チルドレンでは、今後も子どもの貧困および子どもの権利についての啓発活動を続けていきます。
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの貧困問題解決に向けさまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は、随時こちらのページでお伝えしています。ぜひご覧ください。
(報告:国内事業部 鳥塚)
この勉強会は、2024年11月にセーブ・ザ・チルドレンが公表した、「子どもの貧困と子どもの権利に関する全国市民意識調査」の調査結果の紹介と、子どもの貧困問題に関してどのように社会の理解を拡げていくか考えるパネルディスカッションの二部構成で行いました。(調査結果はこちら)
調査結果の報告と、講評についてまとめた前半の記事はこちらから
後半は、さまざまな立場から子ども支援に関わる方々を招いてパネルディスカッションを行いました。
パネラー一覧(五十音順)
・栗林知絵子氏 認定NPO法人 豊島子どもWAKUWAKUネットワーク 理事長
・鈴木太地氏 こども家庭庁支援局家庭福祉課 主査
・津田知子氏 東京都世田谷区子ども・若者部 子ども家庭課
・柳澤靖明氏 公立中学校事務職員・「隠れ教育費」研究室チーフディレクター

まず、それぞれの立場から、調査結果をどのように受け止めたか尋ねました。
日頃東京都豊島区地域で活動している栗林氏は、子どもに必要なものとして、「誕生日、クリスマス、お正月など特別な日のお祝い」を選ぶ割合が大人より子どもの方が高かったことに触れ、子育てを家族の自己責任でのみ行うのではなく、地域の力で補える部分もあるのではないかと述べました。
次に、学用品費などの「隠れ教育費」について研究している柳澤氏は、子どもの貧困問題を解決するために国や自治体が取り組むべきこととして、「小中高校生活にかかる費用をすべて無料にすること」を選ぶ割合が最も高かったことに触れ、年々子どもの学習にかかる費用が増加していることを指摘し、学校現場で教職員が子どもの権利の視点から、本当にそれが子どもにとって必要な費用なのかを考えることが必要ではないかと述べました。また、経済的に困難な状況にある子どもから、「校則はみんな同じで髪型とか決まりがある。そんなに髪切りにいけない家はどうしたらいい? そういうのも貧困なはずなのに当たり前のように校則違反になっても困る」といった声が寄せられていることにも触れ、「学校は散髪代を補助することはできないが、校則を見直すことはできる、そうした具体的なところに教育現場ではアプローチできる」と述べました。
続いて、東京都世田谷区の職員である津田氏は、子どもの貧困対策の主体として基礎自治体への期待が寄せられていることに触れつつ、世田谷区は子どもの貧困対策に積極的に取り組んでいる一方で、他の自治体との地域間格差が生じてしまっていることを指摘し、子どもがどこに暮らしていても支援を受けられるよう国と連携する必要があると述べました。また、今回の調査で、子どもの貧困問題は保護者が解決すべき、と回答した割合が16.5%いたことに触れ、世田谷区が実施している子どもの生活実態調査では、経済的に困難な状況にある保護者も子どものころに被虐待経験などがあることが分かっており、子どもの貧困問題は「家族の努力やがんばり次第だから」と簡単に断じることはできないことも述べました。さらに、今回の調査で経済的に困難な状況にある子どもたちが、「子どもの意見を政策や施策に反映することができる制度・仕組みを作ること」を求める割合が高かったことに触れ、日常の場で小さなことから子どもたちの意見を聴いていくことが重要であり、それが子どもたちをエンパワーメントしていくのだと改めて感じたと述べました。
最後に、こども家庭庁支援局家庭福祉課の鈴木氏も、子どもの意見反映について子どもたちが求める割合が高かったことに触れ、2024年6月に改正された「こどもの貧困解消法」に経済的に困難な状況にある子どもたちから意見を聴く条文が新設されたことを紹介しました。そのうえで、声をあげづらい子どもたちの声を聴くために、アウトリーチ型で子どもの意見を聴いていく必要があると改めて実感したと述べました。

次に、今後子どもの貧困問題に関して市民社会の理解を拡げていくためにはどのような方策が考えられるか尋ねました。
柳澤氏からは、学校現場でできることとして、教職員の研修の場を設けるべきとの意見が出ました。教職員が子どもの貧困問題の状況や子どもの権利条約について学ぶ機会をもつことが、市民社会の理解を拡げることにつながるのではないかと述べました。
栗林氏からは、官民の連携が重要であるとの意見が出ました。特に外国ルーツの子ども・保護者は自分たちの困難な状況をうまく行政に訴えることが出来ないこともあるため、地域の大人がそうした困難を行政に訴えていく、変えていくことが社会を変えていくことにつながると述べました。豊島区では、栗林氏ら民間団体が区役所の庁舎で子どもの貧困に関する啓発活動を行っており、それがきっかけで区民が地域活動に参加したという事例もあるそうです。こうした活動から、市民が子どもの貧困について知る機会を増やすことが重要だと栗林氏は指摘しました。
津田氏は、子どもの貧困は子どもだけの問題ではないため、行政において子ども・若者関係の所管だけではなく、住宅や男女共同参画に関わる所管など、行政が庁内横断的に連携し、市民と一緒に子どもの貧困について対話していくことが重要であると述べました。
鈴木氏は、こども家庭庁だけでなく、文部科学省、厚生労働省など、関係省庁と連携して、子どもの声を聴きながら対策や啓発を行っていくことが必要であると述べました。
最後に、共催である「なくそう!子どもの貧困」全国ネットワーク世話人である山野良一氏から閉会のあいさつがありました。
「子どもの権利とは『対話』であると思います。子どもの権利は子どもたち全員がもっているものですが、なかなか自分の権利を主張したり意見を述べたりすることが難しい子どもたちがいます。そうしたことに気づいたうえで、子どもと大人が対話することではじめて市民の中で子どもの権利について認識が広がるのではないでしょうか。今回の勉強会や調査が対話のきっかけになればいいと思います」
参加者からは、
「子どもの貧困に限らず、『貧困』は解決しなければならない社会課題と認識しています。『子どもの権利』の視点を加えることで、学校現場で新たなアプローチに繋がるヒントを1つもらえた気がします」
「子ども達が、それぞれにある特性や特徴に応じて、対話をする相手がいたり、その方法が確保されていると言うことがとても大切なのではないかと思います。それは家族だけにとどまらず、そういった相手が増えていく事が子どもの権利が守られていくためのセーフティネットになるのではないかと思ったからです」
といった声が寄せられました。
セーブ・ザ・チルドレンでは、今後も子どもの貧困および子どもの権利についての啓発活動を続けていきます。
セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの貧困問題解決に向けさまざまな取り組みを行っています。活動の最新情報は、随時こちらのページでお伝えしています。ぜひご覧ください。
(報告:国内事業部 鳥塚)