日本/国内災害(公開日:2022.06.09)
威力を増す自然災害:私たちがいま準備できること〜東日本大震災からの学び〜その2
(2020年7月豪雨 熊本県八代市の被災状況)
【緊急時、判断のよりどころは】
東日本大震災後の2014年6月から8月にセーブ・ザ・チルドレンが実施した、岩手・宮城・福島県の放課後児童クラブ支援員(学童指導員)への聞き取り調査のなかに「避難誘導や保護者への引き渡しの手順や判断は何をよりどころに行いましたか?」という項目がありました。
最も多かった回答は「指導員の知識や経験」(43%)で、次に「学校からの指示」(33%)、「学校マニュアル」(19%)、「近隣の人々の行動」(5%)と続きます。
学校に併設・隣接の放課後児童クラブでは、学校からの判断指示に従って行動したものの、学校以外の場所にある放課後児童クラブでは、指導員の知識や経験に頼らざるを得ない現実が浮き彫りになりました。
「マニュアルはありましたが、そんなに詳しいものではなく、火事や台風の対応策はありました。でも予想をしていなかったものというか。ここはきっと津波が来る、と小さいころから言われていたのでいつかくるだろう、チリ地震津波とか経験された人からもいろんなことを聞いていたので、どこかにあったんですかね。」(岩手県大船渡市)
災害発生時、適切に判断し行動するためには、過去の災害による経験や知識だけではなく、緊急時マニュアルの存在は必要不可欠であり、さらに、マニュアルは現場の状況が反映されたものであることが重要だといえます。
【避難場所と避難所の違い】
また、避難する際の重要な点として、「指定緊急避難場所」と「指定緊急避難所」の違いがあります。
(国土地理院ホームページよりhttps://maps.gsi.go.jp/#7/36.080182/133.967285/&base=std&ls=std&disp=1&vs=c1g1j0h0k0l0u0t0z0r0s0m0f1)
内閣府が発行する令和3年版防災白書では、以下のように説明されています¹。
「指定緊急避難場所」; 津波や洪水等による危険が切迫した状況において、住民等の生命の安全の確保を目的として住民等が緊急に避難する施設又は場所
「指定避難所」; 避難した住民等を災害の危険性がなくなるまで必要な期間滞在させ、又は災害により家に戻れなくなった住民等を一時的に滞在させることを目的とした施設
東日本大震災時において、「避難場所」と「避難所」が必ずしも明確に区別されておらず、そのことが被害拡大の一因ともなりました。2013年6月には災害対策基本法の一部が改正され、自治体ごとに呼び名が異なっていた「避難場所」や「避難所」の名称については「指定緊急避難場所(避難場所)」と「指定避難所(避難所)」に正式に定められ、定義も明確にされました。また、市町村長に対しては、円滑かつ迅速な避難を確保するため、災害の種類ごとに政令で定める基準に適合する施設又は場所を「指定緊急避難場所」として指定することを義務づけました²。
しかしながら、2014年(平成26年)8月豪雨により発生した広島土砂災害においては、土砂災害に適さない避難先に避難した居住者1名が被災し、亡くなるという事例発生しました。また、2015年9月の関東・東北における豪雨災害においても、「指定緊急避難場所」の指定や周知が十分に進んでいない状況がありました³。
「指定緊急避難場所」は、洪水・がけ崩れ・土石流および地すべり・高潮・地震・津波、土石流および地すべり・高潮・地震・津波・大規模な火事・内水氾濫・火山現象など、災害の種類ごとに指定されています。
災害の種類ごとに指定されているということは、すべての避難場所がすべての災害に対応しているわけではないということです。
災害に備え、既存の防災マップや緊急時マニュアルを確認することはとても重要ですが、安全に避難場所までたどりつけるのか、また避難場所がどの災害に対応しているのか、確認することも重要です。
国土地理院のウェブ地図では、災害種別ごとの「指定緊急避難場所」を確認することができます。自宅や学校の住所などを入力し、最寄りの避難場所を確認してみましょう。そして、さらにその避難場所が、どんな災害に対応しているのかも合わせてチェックしてみましょう。
(国土地理院ウェブ地図)https://www.gsi.go.jp/bousaichiri/hinanbasho.html
参考資料
1. 指定緊急避難場所の指定に関する手引き
https://www.bousai.go.jp/jishin/tsunami/hinan/kanren.html
2. 災害対策基本法(第四十九の四)
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=336AC0000000223
3. 令和3年版防災白書(第1部第1章-2 p.89)
https://www.bousai.go.jp/kaigirep/hakusho/r3.html
(報告:国内事業部 中川千明)