日本/国内災害(公開日:2023.09.12)
【シリーズ第7回:災害時(さいがいじ)の多様性(たようせい)についてかんがえる】災害とジェンダー(2)
このブログは災害時の多様性についてかんがえるシリーズです。
今回はジェンダーやセクシュアリティ(性のあり方)について全3回のうちの第2回目です。
前回は災害時に、女性がどのような立場におかれるかについてお話ししました。(前回の記事はこちら)
今回は男性か女性かという性別のわく組みをこえて、多様な性の視点から災害時の多様性について考えてみます。そこで、LGBTQの支援や、自治体や学校での理解促進をしている認定NPO法人ReBitに話を聞きました。
LGBTQとは、性的少数者の総称としてつかわれる言葉で、Lはレズビアン(こころの性が女性で、女性を好きになる人)、Gはゲイ(こころの性が男性で、男性を好きになる人)、Bはバイセクシュアル (こころの性がどうであるかにかかわらず、男性も女性も好きになる人)、Tはトランスジェンダー(生まれたときのからだの性をもとにわりあてられた性と、こころの性が異なる人)、Qはクエスチョニング(セクシュアリティ{性のあり方}を決めない人、決めたくない人)の頭文字から取っています。これ以外にも多様なセクシュアリティ(性のあり方)があります。
セーブ・ザ・チルドレン: | LGBTQの人は災害時にどのようなことでこまってしまうことがあるのでしょうか? |
リビット: |
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| LGBTQが災害時にこまってしまうポイントは、大きく5つあると思います。
1.家族関係 2.避難所の男女分け 3.医療の使いやすさ 4.避難所での望まないカミングアウトやアウティング 5.セクシュアリティ(性のあり方)をふくめて相談できる場所がない
まず1つ目が、家族関係です。 現在日本では同性カップルの結婚が法的にできないため、同性のパートナーやその子どもを家族だと証明することができない人がいます。それにより、災害時に同じ世帯として確認してもらえないことや、復興支援住宅への入居をことわられてしまうことがあります。 (一部の自治体には、同性カップルの結婚が法的にできないかわりに、自治体が独自にLGBTQカップルに「結婚に相当する関係」をみとめるパートナーシップ制度がありますが、すべての自治体にパートナーシップ制度があるわけではありません)
2つ目が、避難所の男女分けです。 たとえば避難所でのトイレ・お風呂についてです。LGBTQのなかには、共用のトイレ・お風呂を使うことがむずしい人もいるので、こういった設備面でこまってしまうことが多いです。 また物資が男女別で配られることもこまってしまうことがあります。たとえば女性用の生理用品が配られるとき、生まれたときの体の性別が女性で、今は男性として生きているトランスジェンダーの方の中には、生理用品が必要な方もいるため、「(見た目は男性なのに)なぜ生理用品が必要なのか」と聞かれてこまってしまうことがあります。
3つ目が、医療の利用しやすさについてです。 LGBTQは今の社会のなかでは差別や偏見をうけやすい状態にあります。そのような社会状況もあり、精神疾患やメンタルヘルス(精神保健)についてリスク(危険)が高いといわれており、毎日薬を飲んでいる人もいます。またトランスジェンダーの人のなかには、治療のために、定期的に薬を飲んだり、注射をうったりしている人もいます。しかし災害によってこういった医療ケアを利用することがむずかしくなってしまって、心身のバランスをさらにくずしてしまうということがあります。
4つ目が、避難所での共同生活のなかでおこる望まないカミングアウトやアウティングです。「望まないカミングアウト」とは、自分のセクシュアリティ(性のあり方)を本当は打ちあけたくないのに打ちあけなければならないことを言い、アウティングとは、自分のセクシュアリティについて、本当はまわりに知られたくないないのに、自分の同意がないままほかの人に伝わってしまうことを言います。 たとえば過去の災害では、LGBTQの方が避難所での共同生活で、見た目で自分のセクシュアリティを判断されてしまって、からかわれたり、誹謗中傷(人のこころを傷つける悪口やデマ)をうけて、避難所にいられなくなってしまったりということがありました。
5つ目が、セクシュアリティをふくめて相談できる場所がないということです。 たとえば、避難所の相談窓口の相談員がセクシュアリティについて理解があるかどうか分からなくて相談しにくかったり、勇気を出して相談してもセクシュアリティに理解がないとき、「それって今いうことじゃないよね」「そんなに大したことじゃないよね」というふうにとらえられたり、ハラスメントにあってしまったりすることもあります。 また、相談の内容によっては、カミングアウトしないと正確に伝えられないこと、相談できないこともあります。そのためカミングアウトしたくない場合、まわりの人に相談することができないこともあるのです。相談をできないことで傷や悩みが深まってしまうおそれがあります。 |
※このブログは2023年8月に作成しました。
防災に関する最新の情報は内閣府のホームページをごらんください。
(国内事業部インターン 野田麻子)