日本/国内災害(公開日:2023.09.12)
【シリーズ第6回:災害時(さいがいじ)の多様性(たようせい)についてかんがえる】災害とジェンダー(1)
災害時の多様性についてかんがえるこのシリーズでは、これまで障害のある人、外国人・外国にルーツがある人の災害時のことについてお伝えしました。
今回は災害時のジェンダーやセクシュアリティ(性のあり方)について3回にわけてお話しします。
《ジェンダーとは》
みなさんは「ジェンダー」という言葉を聞いたことがありますか。
「ジェンダー」とは、社会や文化のなかから生まれた「男らしさ」や「女らしさ」を意味する言葉です。
みなさんのなかには、ジェンダーが災害に関係あるの?と思う人もいるかもしれませんが、実はふかい関係があるといわれています。
ジェンダー格差(社会的・文化的につくられた、性別にもとづく偏見・差別・不平等のこと)の大きな国ほど、災害時の女性の被害が男性より大きくなるというデータがあります[1]。
たとえば、宗教的に、日ごろから女性が1人で外出することを制限されている国や地域では、災害時に1人で避難できないことがあります。
日本でも過去の災害で、避難所に生理用品がとどかないことや、プライバシーのないところで着がえや授乳をしなくてはならないといった問題がありました(避難所での過ごし方についてはこちら)。
また、なれない避難生活が体調不良につながることもあります。不眠、エコノミークラス症候群、トイレをがまんすることでなりやすいぼうこうえんなどは、男性よりも女性のほうがなりやすいとされ、避難所でこのような症状がでる女性も少なくありません。ほかにも、炊き出しや掃除が女性のみにまかされることもありました。
《女性防災リーダー》
災害時のジェンダー格差の原因のひとつには、災害の現場に女性の防災リーダーが少ないということがあります。男性の防災リーダーだけでは、女性がどのようなときにこまってしまうのかを考えたり、想像したりすることがむずかしいことがあるからです。女性の声を聞いて防災にいかすためには、女性が防災活動に参加する機会をふやしていく必要があります。
そのため、国や都道府県、全国の市町村では女性の防災リーダーをふやすことに力を入れています。
宮城県仙台市にある町内会では、仕事や家事でいそがしい女性が、少ない時間の中でもうまく防災訓練に参加できるように、夏祭りのプログラムの一つに防災訓練をとりいれています[2]。
《まとめ》
今回は、災害がおきたときに女性が直面する問題についてお話ししました。
しかし災害時に女性だけが弱い立場におかれるというわけではありません。
ぎゃくに、こまっている男性がいることに気がつけていないこともあるかもしれません。
また、男性か女性かという性別のわく組みにとらわれない考え方も必要です。
次回は、男性か女性かという性別のわく組みをこえて、多様な性の視点から災害時の多様性について考えてみます。LGBTQと言われる性的少数者の支援や、自治体や学校での理解促進をしている認定NPO法人ReBitから聞いた話を紹介します。
(つづきはこちら)
※このブログは2023年8月に作成しました。
防災に関する最新の情報は内閣府のホームページをごらんください。
(国内事業部インターン 野田麻子)
[1] 女性が死者の8割を占めたケースも。災害の死者に女性が多い背景とは | Business Insider Japan
[2] 女性が力を発揮するこれからの地域防災〜ノウハウ・活動事例集〜 (gender.go.jp) 、防災分野における女性の参画促進〜好事例集〜 | 内閣府男女共同参画局 (gender.go.jp)