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日本/国内災害
(公開日:2020.09.15)

「ひとり親家庭応援ボックス」利用者アンケート 〜 新型コロナウイルスの影響を受けた暮らし・子どもの学習環境のいま

 

利用者アンケートの結果は こちら

セーブ・ザ・チルドレンは、新型コロナウイルス感染症緊急子ども支援として、ひとり親家庭に食料品や遊具を提供する「ひとり親家庭応援ボックス」を2020年5月下旬(対象地域:東京都23区、計310世帯)、その緊急追加支援を6月上旬(対象地域:東京都・神奈川県・千葉県・埼玉県、計1010世帯)に実施しました。

今回、8月28日〜9月6日にかけて「ひとり親家庭応援ボックス」の利用者にアンケートを実施し、現在の生活状況や施策などに関する要望を聞きました(回答件数223世帯、回答率16.9%)。その結果、回答世帯の約2割では新型コロナウイルス感染症流行以前の収入水準を取り戻している一方、約75%の世帯では収入が減少したままであることがわかりました。


約2割の世帯では、コロナ以前の収入に戻るも
約75%の世帯では、収入が減少したまま(1割弱ではゼロ)



「ひとり親家庭応援ボックス」の対象地域とした首都圏1都3県は、4月7日〜5月25日までのおよそ一ヶ月半、国による緊急事態宣言下にありました。今回の利用者アンケートで、緊急事態宣言解除前の5月頃と8月末〜9月初旬時点における、新型コロナウイルス感染症の影響による家計の変化を尋ねたところ、回答者の20.2%は「コロナ以前の収入水準に戻った」と回答する一方、75.2%が「コロナ以前に比べ、5月頃も収入が減少しており、現在も減少している」と回答。全体の約1割(9.4%)の世帯では、「現在、収入がゼロ」であると答えています。

新型コロナウイルスの影響が広がるなかで、国による特別定額給付金やひとり親世帯臨時特別給付金、雇用調整助成金の特例措置といった施策のほか、各自治体による独自の支援策などが講じられてきた一方、住居確保給付金、生活福祉資金貸付、生活保護制度など既存の公的支援制度の申請・利用も大きく推移してきました(※1)。本アンケート結果からは、これらの施策・制度利用が普及しつつある8月末〜9月初旬現時点においても、家計水準が以前の状態に戻らない、あるいは悪化している家庭も多くあることが推察されます。また、厚労省の発表では、9月初旬時点の見込みも含む解雇・雇い止めは5万人を超えており(※2)、今後さらなる事態の深刻化が懸念されます。


新型コロナウイルスの影響により、高校の授業料を支払えなかった世帯が1割強
義務教育である小・中学校においても、1割近くの世帯で学校内外の教材費を支払えなかった経験あり







子どもの学校教育への影響について、高校生世代の子どもがいる世帯(回答件数55世帯)と小中学生の子どもがいる世帯(162世帯)からも回答を得ました。

「新型コロナウイルスの影響により支払えなかったことがある」費目として、高校生世代では、授業料(12.7%)、進学や就職など進路に関わる費用(10.9%)、教材費(10.9%)が最も多くあげられた一方、義務教育過程である小中学生のいる世帯でも、塾や資格取得など学校外でかかる教材費(9.9%)や教材費(8.6%)を「支払えなかった」との回答が寄せられました。

また、「支払えなかったことがある」と「これまでにはないが、今後支払えなくなる可能性がある」を合わせると、高校生世代のいる家庭では、「進学や就職など進路に関わる費用(計78.2%)」や、「塾や資格取得など学校外でかかる教材費(計65.5%)」などで、非常に高い割合の回答が出ており、小中学生のいる家庭よりもさらに、教育関連費の支払いに不安を抱えている状況が浮き彫りとなっています。これらの現在の状況から、「新型コロナウイルス感染症流行による経済的な理由により、今後高校就学を続けられなくなる可能性がある」と答えた高校生世代のいる世帯は2割にのぼりました。

現在、セーブ・ザ・チルドレンが行っている東京都内のひとり親家庭の高校生向け給付金「東京都内ひとり親家庭・高校生活サポート」を利用した世帯に対しても、申込時に同様の質問をしていますが、公的支援が十分とは言えない高校生に対する支援の必要性が読み取れます。(給付金を利用した世帯の申込結果は10月中旬以降に発表予定です。)

本アンケートでは、生活や教育に関わる現状のほかに、学校教育費を補助する公的制度(高校生等奨学給付金、就学援助制度)の改善点、子どもの生活・学習環境における経済的不安をなくすために必要なこと、新型コロナウイルスの影響下で役に立ったことや求めたい施策などについても尋ねました。自由記述で寄せられた声からいくつか抜粋して紹介します。


高校3年生なので 中止になった修学旅行が来年の1月に積立等ないので金額が不安です」
(東京都23区・高校生世代、高校卒業以上の子ども

「後から入ってくるシステムだと、一旦支払う事が出来なくて苦しい。奨学給付金の金額が実際支払う金額よりかなり少ないので、コロナによる失業者には増額給付があると助かります」
(東京都23区・高校生世代)

「学校での子供を通じての申込書なので、子供自身が自分しか提出しない用紙をみんなが気になる様子なので、郵送でも申請できると良いと思います」
(埼玉県・小学生1-3年生)

「課税、非課税証明書を関係各所へのスムーズな連携から、申請なく自動的に援助が受けられるようになれば、タイムラグがなく申請書処理の人件費もかからないと思いますがいまの日本のシステムでは難しいのでしょうか」
(東京都23区・小学1-3年生、高校生世代)

「収入がほぼなく、支出を貯金から切り崩すしかないこと。昨年までいた会社で昇給があり昨年の所得が良かったが、年末前に退職勧奨で退職に遭いその後コロナ禍になり税金も高い、扶養手当も下がる見込みで非常に辛い。現状の収入も加味した手当支給と税金納付額を見直していただきたいです」
(東京都23区・中学生)

「コロナが流行する間際に大型免許を取って転職したが、物流業界はコロナの影響を受けずに休むこともできない為、自粛中に子どものケアができなかった。そして収入があがったため手当も打ち切られる予定だし、延長保育料もとられることになった。頑張っても結局生活は変わらないような気がして、やる気がおきない」
(神奈川県・未就学児、高校生)



セーブ・ザ・チルドレンでは、アンケート結果や寄せられた声をもとに、ひとり親家庭をはじめとする子育て世帯への経済的支援や抜本的な問題解決につながる政策を求め、関係団体などと連携して国や関係省庁へ働きかけを続けていきます。


(※1)特別定額給付金:2020年5月1日申請開始、9月4日時点で予算の99.1%を給付済み。(総務省「特別定額給付金の給付済み金額の推移」
ひとり親世帯臨時特別給付金:基本給付は2020年8月末までに支給、追加給付は9月以降可能な限り速やかな申請を促し2021年月3月末までに支給。(厚労省「ひとり親世帯臨時特別給付金の支給について」
雇用調整助成金の特例措置:2020年4月1日〜12月末まで対象期間延長。(厚労省「雇用調整助成金(新型コロナウイルス感染症の影響に伴う特例)」)9月11日までの累計申請件数1,197,141件、累計支給決定件数1,058,518件。(労働政策研究・研修機構「国際比較統計:雇用調整助成金申請状況」
住居確保給付金:2020年4月〜6月の申請件数81,572件、支給決定件数61,589件。(厚労省「第1回住まい支援の連携強化のための連絡協議会:厚生労働省説明資料」)3ヶ月分でリーマン・ショック後の2010年度1年分の支給決定件数37,151件をゆうに超えている。
生活福祉資金貸付:緊急小口資金の決定件数は、2019年1月〜2020月1月は1ヶ月400〜700件程度で推移、2020年4月〜7月はそれぞれ127,881件、175,213件、172,580件、127,900件。総合支援資金の決定件数は、2019年1月〜2020年1月は1ヶ月20〜30件程度で推移、2020年4月~7月はそれぞれ3,681件、37,460件、85,180件、115,540件。(安藤道人・大西連「コロナ禍で生活困窮者への家賃補助と現金貸付が急増:独自入手した厚生労働省データを用いた検証」
生活保護制度:2020年4月の生活保護申請件数は、「特定警戒都道府県」とされた13都道府県の主な自治体では前年同月比で増加。(朝日新聞「生活保護申請、東京23区で4割増 コロナで困窮広がる」)一方、全国的には2019年1月〜2020年6月の非保護世帯数は大きく変動せず、実人員数はゆるやかな減少傾向にある。(厚労省「被保護者調査(令和2年6月分概数)」

(※2)厚生労働省「新型コロナウイルス感染症に起因する雇用への影響に関する情報について」(9月4日現在集計分) 

 

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