アドボカシー(公開日:2013.07.12)
教育の妨害の急増:紛争の影響下で学校に通えない子どもは約5,000万人(2013.07.12)
2012年10月、パキスタンで女子への教育を主張したマララ・ユスフザイさんが、武装勢力に襲撃されるという痛ましい事件が発生しました。圧力に屈せずに教育の普及を訴え続けるマララさんの誕生日にちなみ、7月12日は世界中の教育の普及を考える「マララ・デー」とされ、今年は16歳の誕生日を迎えるマララさんがニューヨークの国連でスピーチを行う予定です。
写真は、マララさんに賛同するアルバニアの女の子たち。支援する学校で撮影。
セーブ・ザ・チルドレンは、この7月12日に新しい報告書「教育の妨害:紛争がもたらす子どもの未来への深刻な影響」(Attacks on Education: The impact of conflict and grave violations on children’s futures)を発表し、「世界中の紛争の影響下の国に住む約5,000万人の子どもが学校に通う機会を奪われ、さらに教育妨害の報告数は増加している」と警告しています。
子どもたちが教育へのアクセスを阻まれる、身体的暴行を受ける、武装勢力に動員されるなどの報告件数はこの一年で急増しています。これは悪化するシリア情勢と、南アジアとサハラ以南アフリカの各地域における女子の教育へのアクセスの問題に対して、モニタリングを強化したことにより明らかになりました。
セーブ・ザ・チルドレンの報告書(英文)はこちら:
「教育の妨害:紛争がもたらす子どもの未来への深刻な影響」
(Attacks on Education: The impact of conflict and grave violations on children’s futures)
セーブ・ザ・チルドレンの新しい報告書では、紛争による教育への影響を実証し、ユネスコの「万人のための教育」のグローバル・モニタリング・レポート (GMR)とのパートナーシップにより調査した内容が含まれており、紛争地域の6歳から15歳の4,850万人の子どもたちが学校に通えず、そのうち半数が初等教育の就学年齢だと報告しています。
シリア内戦の影響で教育妨害の報告件数は急増しており、2012年に記録された3,600件以上の報告数のうち70%がシリアで発生しています。
報告書によると:
• 2011年には、紛争の影響下の国の6歳?15歳の学校に通えない子ども5,000万人のうち2,850万人が初等教育の就学年齢の子どもたちで、その半数以上が女子でした。
• 2012年には、3,600件以上の教育妨害が報告されました。その内容は死亡や重大な負傷につながる子どもや教師への暴力、拷問、脅迫、学校への爆撃、就学年齢の子どもの武装勢力への動員などが含まれます。
• シリア内戦の勃発以来、3,900校の学校が破壊や損傷、あるいは教育以外の目的での占拠といった被害を受けています。
報告書では、調査に加えて、教育妨害の被害を受けた子どもたちの直接証言を集めました:
• 私は9学年ですが、この内戦で卒業ができませんでした–卒業して高校に通い、未来を築きはじめるはずだったのに…私の将来は打ち砕かれてしまいました。– モタセム、 13歳、 シリア
• 反政府組織が来た日、学校を破壊していきました。彼らは校長先生の部屋を全て破壊し、生徒のテスト用紙も破いてしまいました。– サリフ、 13歳、 マリ
• 村の若者たちにゲリラ兵が近づき、兵士に動員していきます。私のいとこは4か月前にだまされて連れていかれ、もう一月以上連絡を絶っています。– パウラ、 15歳、 コロンビア
教育は、世界中の厳しい状況にある地域の子どもに、明るい将来へのチャンスを与えるものです。この報告書で示されている教育への妨害は、そのチャンスの妨害であり、子どもたちが学習し、その潜在能力を発揮する機会を奪うものです。教室は安全かつ守られた場所であるべきで、子どもが恐ろしい犯罪の被害に苦しむ戦場であってはなりません。その標的となった子どもたちは、その後一生苦しむことになります。
今回の調査により、学校に通えない子どもの数と教育妨害の急増に反して、人道支援における教育への拠出は非常に少ない現状が浮かび上がりました。教育資金は2011年の全人道危機支援の2%から低下を続け、2012年にはわずか1.4%となり、2010年に国際社会が要請した4%を大幅に下回っています。紛争の影響下の国の学校に通えない子どもたちは、忘れ去られているのです。こうした子どもたちの多くは再び教育の機会を与えられることなく、一生身体的、精神的に傷つきます。
セーブ・ザ・チルドレンはこの喫緊の課題に対して、世界のリーダーに以下に取り組むことを求めます:
• 教育の妨害を違法とし、武装勢力が学校を利用することを禁じ、特に紛争下で学校を学びの場として保護すべく学校関係者やコミュニティと協力することで、教育を守る。
• 人道支援のうち教育への拠出割合を増やし、国際人道資金の最低4%を満たすよう着実に前進する。