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アドボカシー
(公開日:2021.07.07)

Education Cannot Wait によるセーブ・ザ・チルドレンUK事務局長ケビン・ワトキンスのインタビュー

 
Education Cannot Wait(以下ECW)は、緊急下で最も取り残された人々への教育支援を実施するため、2016 年、世界人道サミットにおいて設立された世界で唯一の国際資金メカニズムです。緊急期、および長期化する人道危機における教育を対象とした事業に資金配分を行い、慢性化した財政難に対応します。2022 年までに、危機に直面した25ヵ国以上の900万人の子どもたちに支援を提供することを目指しています。
セーブ・ザ・チルドレンは、ECWと共に、紛争の影響を受ける子どもたちに教育支援を提供しています。

セーブ・ザ・チルドレンUK事務局長ケビン・ワトキンスは、ECWによるインタビューを受けました。そのインタビューの内容をお届けします。ケビン・ワトキンスの略歴は、下記をご参照ください。



”Education Cannot Wait(ECW)が結成以来成し遂げてきたことは本当に素晴らしいと思います。ECWとともに活動をできることを誇りに思いますし、他の人にもぜひECWを勧めたいと思います。この活動は非常に重要で、緊急性があり、効果を示すストーリーやデータがありますので、ぜひ私たちとともに活動しましょう!

ケビン・ワトキンス/セーブ・ザ・チルドレンUK事務局長


◆ECW:
ここ数ヶ月の間に、「学校保護宣言」にも国際人道法にも違反する、学校を狙った恐ろしい攻撃が急増しています。どうすれば、緊急事態や長期化する紛争の危機に晒されている子どもたちや若者を、こうした恐ろしい攻撃から守り、「学校保護宣言」に示された目標を達成することができるでしょうか。

◆ケビン・ワトキンス:
これは、ある側面では非常に複雑で難しい問題です。私たちは最近、この問題に関する学術的かつ公正な報告書を発表しましたが、それは148ページにもおよびました。なぜならば、子どもを守るための法律や政策、実践が、多くの異なる規定や文書によって長い時間をかけて構築されてきたからです。これらには、重複しているものもあればそうでない部分もありますが、私たちは、子どもの安心・安全を守るために、何が本当に有効であるかを探りたいと考えました。その結果、子どもに対する攻撃がどのように優先的に起訴されるか、子どもに対する犯罪を調査・明文化する資格を持った専門家がどれだけ少ないかなど、子どものための司法を阻む構造的な障壁が明らかになりました。

他方で、この問題は、全く複雑なことではありません。市民に対する攻撃に子どもたちが巻き込まれるのは耐え難いことです。それ以上に、学校で子どもたちが攻撃されること、言い換えれば、子どもたちが子どもであることを理由に攻撃されることは、許しがたいことです。セーブ・ザ・チルドレンは、子どもたちの教育への攻撃を阻止するため、世界がこの問題に関心を持ち、2021年6月現在108ヶ国が「学校保護宣言」に署名していることを大変うれしく思っています。今年の10月には、「学校保護宣言」に関する第4回国際会議がナイジェリアとオンラインで開催され、世界中の人々が一堂に会し、教育を守るための取り組みを強化します。私たちのデータによると、この宣言を支持した一部の紛争国では、攻撃の回数が減り、子どもたちに変化がもたらされています。

子どもたちの安全を守ることは結局のところ、子どもたちの希望が壊されることに対する国際社会としての強い反対の意思を示していることになります。

◆ECW:
セーブ・ザ・チルドレンは、「教育を後回しにはできない基金(Education Cannot Wait / ECW)」を資金源とする緊急対応プログラムや複数年にわたるレジリエンス(復興・回復)プログラムを通じて、世界で最も複雑な危機や緊急事態に巻き込まれた子どもたちや若者たちに、安全と希望、そして教育を受ける機会を提供しています。あなたはECWの設立者の一人ですが、あなたが携わった英国のシンクタンクODIによる最初のレポートからの進展と、ECWの現在の状況をどう見ていますか。

◆ケビン・ワトキンス:
まず最初に、ECWの皆さんが結成以来成し遂げてきたことは本当に素晴らしいと思います。振り返ってみると、食料やシェルター、医薬品の基本的な必需品が満たされていれば、緊急時に子どもたちが長期間学校に行けなくても構わないと世界が考えていた時代があったことが信じられません。

なぜならば、特に、子どもや家族を対象に調査を行っている私たちにとっては、緊急事態に巻き込まれた後、彼らが必要なものとして、常に教育をウィッシュリスト(希望する項目)の最優先に入れていることを分かっていたため、そうした考え方があったことに憤りも感じました。他の多くのことでも言えることですが、私たちは子どもたちの声に耳を傾けるべきなのです。

ECWのパートナー団体が提供しているもの、ECWやECWに資金を提供している国や組織からの支援によって変えられた人々の生活を、大いに誇りに思うべきだと思います。そして何よりも、ECWの皆さんは議論に勝ちました。
もはや緊急時に教育を提供することは必要ではない、あるいは不可能であると、自信を持って言える人は、決していないでしょう。 ECWは、それまでの国際的なシステムの想定を打ち破り、人々に実現可能という自信を与え、それが証明された以上、国際社会はもう引き返すことはできません。

◆ECW:
ECWの数年間にわたるレジリエンス(復興・回復)プログラムは、人道、開発、平和の連携への架け橋となるものです。どのようにすれば、子どもたち全体の教育への対応が、社会全体の課題に対応し、子どもたちが避難生活や暴力から立ち直るために必要なメンタルヘルスや、心理社会的支援を提供できるでしょうか。そして新型コロナウイル感染症のパンデミックからよりよい状態で復興することができるでしょうか。

◆ケビン・ワトキンス:
メンタルヘルスに関する課題は、先ほどの話と似ていると思います。メンタルヘルスプログラムで子どもたちを支援することは良いだろうと考えたり、恐ろしい犯罪が行われたときにそれらを調査したりするだけでは十分ではありません。私たちは、それらに対処するための仕事をする十分な資格を持つ人が現場にいるようにすることを、かなり前もって決めておく必要があります。

セーブ・ザ・チルドレンでは、シリアやイラク、イエメンで活動するメンタルヘルスの専門家の技術向上を支援するために、ヨルダンで「児童・青少年 精神保健・心理社会的支援(Mental health and psychosocial support:MHPSS)ディプロマ」というものを開発してきました。これは地域的にメンタルヘルスなどの専門家が不足していることを知っていたからです。

また、インペリアル・カレッジ・ロンドンと共同で、子どもの爆風損傷を治療するためのツールキットを作成していますが、その研究責任者が私にいつも言っているのは、「子どもは小さな大人ではないことを忘れないでほしい」ということです。言い換えれば、子どもの砕けた骨格や壊れた心を治療するために必要なことは、大人の場合とは異なるということです。したがって、子どもに特化したサービスやプログラムを設計し、投資をする必要があります。メンタルヘルスや心理社会的支援への投資が全体的に増えることは喜ばしいことですが、場合によっては紛争や避難生活しか知らない子どもたちの世代全体にわたり効果的なサービスを提供するためには、常にターゲットを絞って調整する必要があると私は主張しています。

◆ECW:
ECWは2021年5月24日に設立5年を迎えました。私たちは、危機の中で最も周縁化され取り残された500万人近くの子どもたちと若者に質の高い教育を提供し、新型コロナウイル感染症支援として、さらに1,000万人の子どもたちと若者に教育を提供してきました。しかし、まだ多くのことをしなければなりません。1人の子どもも取り残さないために、現在、そして新たに官民の支援者となる可能性のある方々にメッセージをお願いします。

◆ケビン・ワトキンス:
設立5周年おめでとうございます。これまでに達成されたことは素晴らしいことです。ECWのパートナー団体になれたことを誇りに思いますし、他の人にもぜひECWを勧めたいと思います。この活動は非常に重要で、緊急性があり、効果を示すストーリーやデータがありますので、ぜひ私たちとともに活動しましょう!

◆ECW:
気候に起因する災害は、年々多くの子どもたちの教育に影響を与えています。今年、イギリスでは、G7と世界的な気候変動の議論の場である国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)が開催されます。気候変動に関連した災害や危機的状況下での教育は、より持続可能な開発の道筋を構築し、パリ協定の目標達成を支援するために、どのように効果的に活用できるでしょうか?

◆ケビン・ワトキンス:
現在起こっている奇妙なことのひとつに、ある問題を別の問題と比較している傾向があるということです。つまり、気候変動問題への対策を優先すべきか、新型コロナウイル感染症対応を優先すべきか、それとも教育を優先すべきかと議論があるということです。

子どもたちを中心に据え、彼らの視点から考えてみると、これはさらに奇妙なことです。子どもにとっては、これらすべてのことが重要であり、これらは密接に関連しています。今、子どもたちに教育の機会を提供することで、彼らの将来をより確かなものにすることができます。

そしてきちんとした生活と健康を手に入れることで、将来、危機に見舞われたときの脆弱性を軽減することができます。これは、洪水や干ばつなどの気候変動問題のリスクにすでに晒されている地域に住む子どもたちや、不利な状況に置かれた子どもたちにとっては、より重要なことです。脆弱なコミュニティが回復力を高め、来るべき事態に適応できるようにするためには、より多くの支援が必要であり、教育はそのための重要な要素です。

また、現在、気候の非常事態に対して最もリーダーシップを発揮しているのは、学校の子どもたちを含む世界中の若者たちであることも注目に値します。彼らは自分たちの未来が危機に瀕していることを知っており、「大人」である私たちが正しく取り組むことを求めています。

◆ECW:
ECWはすべての活動において少女を第一に考えており、少女は私たちが支援する対象者の50%を占めています。格差を解消するための積極的な差別是正措置として、女子60%を目標としています。セーブ・ザ・チルドレンは、女の子の教育や、障害がある子どもなど、その他の脆弱な立場にある人々の教育をどのように支援していますか?

◆ケビン・ワトキンス:
セーブ・ザ・チルドレンは、100年以上前に創設された子どもの権利を守る団体で、世界各地の子どもたち、特に不平等や差別のために取り残されがちな子どもたちの権利が守られるよう活動しています。このコミットメントは私たちのすべての活動に適用され、次の3つの野心的な目標を達成するためのものです。それは、より多くの子どもたちが生き延びること、また質の高い教育を受ける機会を得て、暴力から保護されることに焦点を当てています。

2020年には、私たちの国際的な活動の中で、世界中で1,470万人が私たちが行う教育支援を受け、その中には多くの女性教師と600万人近くの少女が含まれていたことを誇りに思います。教育は最高の投資のひとつであり、特に女子教育は、本人や家族、コミュニティに大きな変化をもたらすものです。

また、障害がある子どもたちへの取り組みも強化していますが、この分野にはより多くのフォーカスが必要です。新型コロナウイルス感染症のパンデミックに関して、子どもたちとその親を対象とした世界規模の調査を行い、教育をはじめとする障害のある子どもたちが直面しているさらなる課題が明らかになりました。

この活動は、地元のパートナー団体や家族と協力して、その地域の状況に根ざしたものでなければなりません。たとえば、セーブ・ザ・チルドレンとルワンダで活動するUWEZOという団体とのパートナーシップでは、137人の障害がある青年ボランティアとともに「Mureke Dusome」というプロジェクトを行っています。これは、2,200人以上の障害のある子どもの親が、子どもの読書を支援するものです。 

コソボでは、新型コロナウイルス感染症の感染が始まって以来、セーブ・ザ・チルドレンは障害がある人のいる69家族が、インターネットにアクセスできるように支援しています。その中には、250人の子どもたちにタブレット端末を提供したり、308人の子どもたちに教育支援キットを提供したりするなど、休校期間中も学習を続けられるよう支援することも含まれています。

◆ECW:
私たちは、あなた個人についてもう少し知りたいと思っています。あなたが個人的に、あるいは仕事上で最も影響を受けた3冊の本と、その本を他の人に勧める理由を教えてください。

◆ケビン・ワトキンス:
2020年、セーブ・ザ・チルドレンのエグゼクティブ・リーダーシップ・チームは、多様性と包摂性について定期的に学び、考える日を設けることを約束しました。そこで私は、自分が属さない社会や、社会的差別を受けているグループを支援するためのアライシップ(allyship)と人種差別に反対することをテーマとした書籍を読み、行動してきました。素晴らしい洞察力を持ったレイラ・サアド(Layla Saad)、レニ・エド・ロッジ(Reni Eddo Lodge)、タナハシ・コーツ(Ta-Nehisi Coates)のどの作品もお勧めします。

【ケビン・ワトキンス/セーブ・ザ・チルドレンUK事務局長】
イギリス・ロンドンを拠点とする海外開発研究所(Overseas Development Institute)の事務局長を3年間務めた後、2016年9月にセーブ・ザ・チルドレンに入局。海外開発研究所事務局長以前は、ブルッキングス研究所の上級研究員を務め、国連教育特使の顧問に従事。それ以前には、7年間国連に勤務し、ユネスコの「万人のための教育」についてのグローバルモニタリングレポートや国連開発計画(UNDP)の人間開発報告書のディレクター兼主執筆者としても活動を行う。現在、オックスフォード大学グローバル経済ガバナンスセンターの上級客員研究員と、ロンドン・スクール・オブ・エコノミクスの国際開発学の客員教授も務める。

英語本文はこちら

 

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