アドボカシー(公開日:2021.03.18)
【報告】第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)で、紛争下の子どもの保護をテーマとしたサイドイベントを実施しました
2021 年3月10日、セーブ・ザ・チルドレンは、第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)*にて、紛争下の子どもたちを暴力や虐待、搾取などから守ったり、被害を受けた子どもたちを支援したりする子どもの保護に関するサイドイベント(Ancillary Meeting)「紛争下の子どもを守ろう〜Stop the War on Children -Protection of Children in Conflict by Complying with International Law-」を実施し、国際法や基準の遵守、日本をはじめ各国政府に求められる対応や支援について専門家やユース、政府関係者とともに議論を行いました。
今回のイベントの目的は、国際法や基準の遵守、子どもたちの権利を侵害した者に対する説明責任の追及について、専門家やユースとともに議論を行い、紛争下の子どもの保護の促進につなげることです。
2019年より、セーブ・ザ・チルドレンがグローバルに展開している「Stop the War on Children(SWOC)〜紛争下の子どもを守ろう」キャンペーンでは、紛争の被害から子どもたちを守るため、下記の3点を世界のリーダーたちに繰り返し訴えており、今回のイベントでもそのメッセージを強く発信しました。
(1)子どもの保護に関する国際法・国際基準の遵守
(2)権利侵害者に対して責任を追及すること
(3)子どもの保護・生活再建プログラムへの資金拠出と実施
当日は、長引く紛争の影響を受けるシリアやイエメンの子どもたちの声を映像で届けるとともに、セーブ・ザ・チルドレンや赤十字国際委員会(ICRC)による紛争下の子どもたちを守るための提言や活動内容の紹介、国会議員や外務省による日本が持つ強みについての説明がありました。また、日本の大学生による国内での取り組みや学びの紹介など、さまざまなステークホルダーが子どもの権利の推進のための発信を行い、紛争下の子どもたちを守る取り組みへの意識を高める場となりました。各登壇者の発言内容など、詳しくは下記をお読みください。
【プログラムと各登壇者の発言概要】 ※プログラム順
1.開会挨拶:黄川田仁志衆議院議員(京都コングレス2020を成功させる議員連盟事務局長)
京都コングレスの全体テーマである法の支配や持続可能な開発目標(SDGs)の目標16に掲げられた「平和と公正をすべての人に」を達成することは非常に意義があり、また自身の活動を通し紛争下の子どもたちを守ることは重要であると痛感している。当セッションがそれらに貢献するものとなることを期待している。
2.オロフ・ブロムキュビスト(セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル アジア地域人道政策・アドボカシーリード))
6人に1人の子どもが紛争の影響を受けており、そうした子どもたちが最も多く暮らす地域はアフリカ、次いでアジアである。現代の紛争の特徴として、国内での争いが増えていること、また、紛争が長期化しかつ人口密集地域で行われていることがあげられ、結果として被害に遭う子どもが増加している。特にアフガニスタンやロヒンギャ危機では子どもたちに大きな影響が出ており、こういった状況を改善するためにも、国際法の遵守や、子どもの権利を侵害した紛争当事者が説明責任を果たすことが求められる。
3.池本彩七さん(慶応義塾大学法学部)
Stop the War on Children(SWOC)ユースチームとして、これまで紛争下の子どもの保護や教育に関する勉強会の実施や国会議員との意見交換などを行ってきた。そうした経験から、日本の若者ができるアクションとして「政策提言」があると考える。ユースとして、紛争下の学校の軍事利用を禁止する「学校保護宣言」に日本政府が賛同することを訴えたい。紛争下の子どもを守るために必要なことを政府に継続して訴えること、ユースとして他のステークホルダーを巻き込みネットワークをつくることが重要である。
4.レジス・サビオ氏(ICRC駐日代表)
紛争が子どもたちにおよぼす影響が広がる中で、人道支援ニーズは拡大している。子どもたちが保護されるためには、各国政府が国際人道法を遵守し、かつ、すべての紛争当事者に遵守するよう働きかけることが重要。ICRCはそうした活動に加えて、世界各地で子どもの権利が守られるよう、教育の機会の確保や元子ども兵士を親元に戻すなどの支援を展開している。
5.鈴木ひとみさん(宇都宮大学国際学部)
自身のキャリアプランとして、メディアを通じて紛争下の人々を守ることを目指していきたい。これまで、国際人道法に関する模擬裁判への参加や紛争下の子どもの権利を守るためのSDGsプロジェクトなどに大学を通じて参加してきた。これまでの学びを通して、国際法を実際に適用する際の困難や国際機関の限界、国際社会からの支援の少なさが課題だと考える。紛争下の子どもを守るために、こうした限界をどのように超えられるか、継続して学び、考えたい。
6.富山未来仁氏(外務省総合外交政策局人権人道課長)
昨年「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利条約選択議定書」の採択から20年、国連安全保障理事会決議第1612号の採択から15年となり、日本政府として、紛争に関わるすべての当事者に国際人権法・国際人道法の遵守、及び国連事務総長の求める停戦の受入れや人道支援のアクセスの確保を強く求めている。SDG16の達成、そして児童に対するあらゆる形態の暴力をなくすために、日本政府として「児童に対する暴力撲滅基金(Fund to End Violence Against Children)」に拠出してきており、今般新たな拠出を行った。
【登壇したユースからのコメント】
◆池本彩七さん(慶応義塾大学法学部)
プレゼンでは、SWOCユースチームの活動を通して私が学んだことについて大きく2点お話しました。1つ目は、紛争地域から遠く離れた日本でも政策提言という形で国際人道法の促進に関わり、間接的ではあるものの紛争下の子どもの保護に関わることができること。2つ目は異なる世代や職業の人々が垣根を越えてつながり、関心の輪を広げてゆくことが大切であることです。これまでは同世代に向けた発信が多かったせいか、専門性の高い方が集まる今回のイベントでは何を話せばよいのか当初戸惑いました。ただ、SWOCユースチームでの活動を振り返るうちに、活動のなかで感じたことや社会に訴えたいことが自然とまとまりました。それをプレゼンとして日本国内だけでなく、海外の方にも広く発信することができたことはとても貴重な機会でした。
◆鈴木ひとみさん(宇都宮大学国際学部)
今回、私は、大学での子ども兵の禁止に関する人道法についての学びや、日本の子どもたちに向けた人権啓発ワークショップの活動を通し、紛争下の子どもの保護のためにできると思うことを学生の視点からお話しました。当日、国会議員やセーブ・ザ・チルドレン、ICRCなど、さまざまなステークホルダーによる紛争下の子どもの権利に関する視点を聞くなかで、人道支援の難しさ、葛藤も感じました。しかし、やはりどの登壇者も「子どもは、守られるべき存在である」という思いは共通していたと感じ、子どもたちを保護することが国際社会の平和にとって、大きく貢献することを強く実感しました。今後は、世界人権模擬裁判への参加や、紛争下の子どもの人権をテーマにした動画を作成するSDGsプロジェクトなどに関わり、平和・公正のために何ができるか、何が必要なのかについて学びを深め、将来の目標であるメディアを通した人道支援というキャリアに結びつけたいと思います。
*第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)とは
2021年3月7日から12日、SDGsを含む「2030アジェンダ」の達成、犯罪防止、刑事司法および法の支配の推進という全体テーマの下、京都にて第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が開催されました。この国際会議は、1955年以来、5年に1度開催されている犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議です。世界の犯罪防止・刑事司法分野の諸課題について、専門家が議論をし、その知見を共有することで、同分野における国際協力を促進し、より安全な世界を目指して協働することを目的としています。京都コングレスは、昨年50年ぶりに京都の会場を使用して開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期され、今年の実施となりました。今年は、一部の本会議を除き、オンラインプラットフォームを使用してさまざまな関連イベントが開催されました。
今回のイベントの目的は、国際法や基準の遵守、子どもたちの権利を侵害した者に対する説明責任の追及について、専門家やユースとともに議論を行い、紛争下の子どもの保護の促進につなげることです。
2019年より、セーブ・ザ・チルドレンがグローバルに展開している「Stop the War on Children(SWOC)〜紛争下の子どもを守ろう」キャンペーンでは、紛争の被害から子どもたちを守るため、下記の3点を世界のリーダーたちに繰り返し訴えており、今回のイベントでもそのメッセージを強く発信しました。
(1)子どもの保護に関する国際法・国際基準の遵守
(2)権利侵害者に対して責任を追及すること
(3)子どもの保護・生活再建プログラムへの資金拠出と実施
当日は、長引く紛争の影響を受けるシリアやイエメンの子どもたちの声を映像で届けるとともに、セーブ・ザ・チルドレンや赤十字国際委員会(ICRC)による紛争下の子どもたちを守るための提言や活動内容の紹介、国会議員や外務省による日本が持つ強みについての説明がありました。また、日本の大学生による国内での取り組みや学びの紹介など、さまざまなステークホルダーが子どもの権利の推進のための発信を行い、紛争下の子どもたちを守る取り組みへの意識を高める場となりました。各登壇者の発言内容など、詳しくは下記をお読みください。
【シリア、イエメンの子どもたちの声を含む、イベントの動画】
※動画はすべて英語です
【プログラムと各登壇者の発言概要】 ※プログラム順
1.開会挨拶:黄川田仁志衆議院議員(京都コングレス2020を成功させる議員連盟事務局長)
京都コングレスの全体テーマである法の支配や持続可能な開発目標(SDGs)の目標16に掲げられた「平和と公正をすべての人に」を達成することは非常に意義があり、また自身の活動を通し紛争下の子どもたちを守ることは重要であると痛感している。当セッションがそれらに貢献するものとなることを期待している。
2.オロフ・ブロムキュビスト(セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル アジア地域人道政策・アドボカシーリード))
6人に1人の子どもが紛争の影響を受けており、そうした子どもたちが最も多く暮らす地域はアフリカ、次いでアジアである。現代の紛争の特徴として、国内での争いが増えていること、また、紛争が長期化しかつ人口密集地域で行われていることがあげられ、結果として被害に遭う子どもが増加している。特にアフガニスタンやロヒンギャ危機では子どもたちに大きな影響が出ており、こういった状況を改善するためにも、国際法の遵守や、子どもの権利を侵害した紛争当事者が説明責任を果たすことが求められる。
3.池本彩七さん(慶応義塾大学法学部)
Stop the War on Children(SWOC)ユースチームとして、これまで紛争下の子どもの保護や教育に関する勉強会の実施や国会議員との意見交換などを行ってきた。そうした経験から、日本の若者ができるアクションとして「政策提言」があると考える。ユースとして、紛争下の学校の軍事利用を禁止する「学校保護宣言」に日本政府が賛同することを訴えたい。紛争下の子どもを守るために必要なことを政府に継続して訴えること、ユースとして他のステークホルダーを巻き込みネットワークをつくることが重要である。
4.レジス・サビオ氏(ICRC駐日代表)
紛争が子どもたちにおよぼす影響が広がる中で、人道支援ニーズは拡大している。子どもたちが保護されるためには、各国政府が国際人道法を遵守し、かつ、すべての紛争当事者に遵守するよう働きかけることが重要。ICRCはそうした活動に加えて、世界各地で子どもの権利が守られるよう、教育の機会の確保や元子ども兵士を親元に戻すなどの支援を展開している。
5.鈴木ひとみさん(宇都宮大学国際学部)
自身のキャリアプランとして、メディアを通じて紛争下の人々を守ることを目指していきたい。これまで、国際人道法に関する模擬裁判への参加や紛争下の子どもの権利を守るためのSDGsプロジェクトなどに大学を通じて参加してきた。これまでの学びを通して、国際法を実際に適用する際の困難や国際機関の限界、国際社会からの支援の少なさが課題だと考える。紛争下の子どもを守るために、こうした限界をどのように超えられるか、継続して学び、考えたい。
6.富山未来仁氏(外務省総合外交政策局人権人道課長)
昨年「武力紛争における児童の関与に関する児童の権利条約選択議定書」の採択から20年、国連安全保障理事会決議第1612号の採択から15年となり、日本政府として、紛争に関わるすべての当事者に国際人権法・国際人道法の遵守、及び国連事務総長の求める停戦の受入れや人道支援のアクセスの確保を強く求めている。SDG16の達成、そして児童に対するあらゆる形態の暴力をなくすために、日本政府として「児童に対する暴力撲滅基金(Fund to End Violence Against Children)」に拠出してきており、今般新たな拠出を行った。
【登壇したユースからのコメント】
◆池本彩七さん(慶応義塾大学法学部)
プレゼンでは、SWOCユースチームの活動を通して私が学んだことについて大きく2点お話しました。1つ目は、紛争地域から遠く離れた日本でも政策提言という形で国際人道法の促進に関わり、間接的ではあるものの紛争下の子どもの保護に関わることができること。2つ目は異なる世代や職業の人々が垣根を越えてつながり、関心の輪を広げてゆくことが大切であることです。これまでは同世代に向けた発信が多かったせいか、専門性の高い方が集まる今回のイベントでは何を話せばよいのか当初戸惑いました。ただ、SWOCユースチームでの活動を振り返るうちに、活動のなかで感じたことや社会に訴えたいことが自然とまとまりました。それをプレゼンとして日本国内だけでなく、海外の方にも広く発信することができたことはとても貴重な機会でした。
◆鈴木ひとみさん(宇都宮大学国際学部)
今回、私は、大学での子ども兵の禁止に関する人道法についての学びや、日本の子どもたちに向けた人権啓発ワークショップの活動を通し、紛争下の子どもの保護のためにできると思うことを学生の視点からお話しました。当日、国会議員やセーブ・ザ・チルドレン、ICRCなど、さまざまなステークホルダーによる紛争下の子どもの権利に関する視点を聞くなかで、人道支援の難しさ、葛藤も感じました。しかし、やはりどの登壇者も「子どもは、守られるべき存在である」という思いは共通していたと感じ、子どもたちを保護することが国際社会の平和にとって、大きく貢献することを強く実感しました。今後は、世界人権模擬裁判への参加や、紛争下の子どもの人権をテーマにした動画を作成するSDGsプロジェクトなどに関わり、平和・公正のために何ができるか、何が必要なのかについて学びを深め、将来の目標であるメディアを通した人道支援というキャリアに結びつけたいと思います。
*第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)とは
2021年3月7日から12日、SDGsを含む「2030アジェンダ」の達成、犯罪防止、刑事司法および法の支配の推進という全体テーマの下、京都にて第14回国連犯罪防止刑事司法会議(京都コングレス)が開催されました。この国際会議は、1955年以来、5年に1度開催されている犯罪防止・刑事司法分野における国連最大の国際会議です。世界の犯罪防止・刑事司法分野の諸課題について、専門家が議論をし、その知見を共有することで、同分野における国際協力を促進し、より安全な世界を目指して協働することを目的としています。京都コングレスは、昨年50年ぶりに京都の会場を使用して開催される予定でしたが、新型コロナウイルス感染症の影響で1年延期され、今年の実施となりました。今年は、一部の本会議を除き、オンラインプラットフォームを使用してさまざまな関連イベントが開催されました。