アドボカシー(公開日:2014.08.01)
新報告書「税への取り組みと命の保護」を発表!(2014.08.01)
セーブ・ザ・チルドレンは、7月16日に新しい報告書「税への取り組みと命の保護(TACKLING TAX AND SAVING LIVES: Children, tax and financing for development)」を発表し、極度の貧困の根絶や、予防可能な原因による子どもの死亡率の削減といった開発目標を達成するためには、開発途上国からの不正な資金流出を含む租税の問題を解決し、開発途上国が開発資金を獲得することが重要であると強調しました。
本報告書は、ポスト2015年開発枠組みの実施に必要な多額の追加資金を調達するためには、税収を増加させる必要があると指摘しています。特に中所得国においては、援助額の長期に渡る増加は今のところ見込めない中、税収は開発援助よりも多くの資金を生み出すことが可能だからです。セーブ・ザ・チルドレンの最新の調査結果によると、もしすべての開発途上国がGDPの20%(現在よりも平均3%増)を租税で集めれば、社会保障への歳出を増やすことなく、年間287,000人の子どもの死亡が防げるとともに、新たに7,200万人がきれいな水にアクセスできるようになります。
低・中所得国が税収(政府が租税として集める金額)を増加させるための世界的な取り組みの一つが、不正な資金の流れ(IFFs:Illicit Financial Flows)への対処です。IFFsは、犯罪や汚職によって生み出された資金で、脱税やマネーロンダリング、収賄、その他の犯罪行為、および貿易における価格操作によって国外に持ち出されます。控えめに見積もっても、2011年には9,467億ドルがIFFsによって開発途上国から流出したと推定されています。もし不正な資金の流れが止まれば、歳出パターンを一切変えることなく、これまでのやり方で取り組むよりも20年早く、予防可能な子どもの死亡をゼロにする目標を達成することができます。
IFFsの問題を解決するには税務当局のキャパシティ向上が不可欠ですが、そのためには税務当局が税法を強化するための情報を持てるようにし、市民社会が企業の資金の動きを監視できるようサポートしていくことが必要です。このプロセスを加速するため、セーブ・ザ・チルドレンは国際社会、および開発途上国に対して、以下の提言を行っています。:
国際社会に向けた提言
- ・多国籍企業の利益や税額、その他関連する資金情報を、その企業が事業を実施している全ての国で開示するよう追求すること。
- ・開発途上国が税のコンプライアンスを高め、税務管理システムのキャパシティを向上させるために必要な資金と技術支援を提供すること。
・国際法人税の構造改革を主導し、企業による複雑な租税回避スキームを阻止する国内法・国際法を調査し、国際的な税のルール策定に開発途上国が発言権を持てるようにすること。 - ・タックスヘイブンの秘密主義を国際的に取り締まるために、すべての税務管轄区域に対し、課税情報の自動的な情報交換と、企業やトラストの真の所有者の公開登録を求めること。
- ・企業が利益を隠し、何を所有しているのかを偽るために作られた複雑な企業構造の完全な開示を(特に開発途上国の)税務当局が要請できるよう、G8およびG20でコミットすること。このプロセスを支援するために、EUやOECDの加盟国は、イギリスが受益所有者の公開登録を確立したことにならい、同様の措置をとるべきです。
- ・租税政策が、財政面から子どもの権利を保護する政策となるよう、考慮がなされること。
・税に関する国際的な協力と透明性の向上によって、租税回避を防ぐこと。この達成のためには、G20およびポスト2015プロセスにおける政府間の情報交換と合意を保証する国際条約が必要です。
開発途上国に向けた提言
- ・国内の税務当局が税のコンプライアンスを高めるためのキャパシティを向上させることによって、税制を強化すること。
- ・国境を超える取引における価格操作を通した利益移転を防ぐこと。
- ・独立した専門家や市民社会が、計画・予算策定プロセスに参加することを促進し、より透明性が高く、説明責任を果たす公共財政管理を奨励すること。
- ・税制上の優遇措置に関する協議と透明性の確保にコミットすること。
報告書概要(日本語)
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