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アドボカシー
(公開日:2022.12.14)

【報告書】『パンデミック基金―成功のための青写真』発表

 

セーブ・ザ・チルドレンは、報告書『パンデミック基金―成功のための青写真』を発表し、パンデミック基金がどのように子どもの生存率を引き上げ、すべての女性、子ども、青少年の健康状態を改善できるのかについて、指針となる枠組みを示しています。

                  

3年間にわたる新型コロナウイルス感染症の大流行(パンデミック)により、子どもたちは、健康面や社会経済面などのさまざまな面から深刻な影響を受けてきました。世界中で、健康や教育、保護に対する子どもの権利が脅かされています。

 

パンデミックは、教育の危機をもたらし、女性と少女はジェンダーに基づく暴力に晒されています。また、少なくとも800万人の子どもたちが親や養育者を亡くしました。パンデミックによって、必要不可欠な保健・栄養サービスは中断され、子どもの予防接種率は過去約30年間で最も大幅に減少する結果となりました。

 

2021年には、1,800万人もの子どもたちがワクチンをまったく受けることができませんでした。このことは、記録的な栄養不良の割合と相まって、子どもたちは前例がないほど生存の危機に直面しています。

 

各国首脳や代表をはじめとする世界のリーダーたちが、パンデミックの予防と準備、対応の課題に注目することは、レジリエントな(回復力のある)保健システムを構築し、子どもたちの健康に対する権利を実現する上で、極めて重要な機会となります。

 

予測可能で持続可能な保健システムへの投資の不足が、感染症のまん延を検知し、封じ込め、対応し、必要不可欠な保健サービスを維持するための準備不足につながっていることは、世界の共通の認識となっています。

 

その結果、「パンデミック基金」が正式に発足することになりました。この新しい基金は、新型コロナウイルス感染症の大流行時に低中所得国で見られたパンデミックの予防、準備、対応(PPR)のギャップに対処するために設立されました。

 

今回のパンデミックによって、不可欠な保健医療サービス、診断薬、ワクチン、医薬品へのアクセスの不衡平が浮き彫りになりました。

 

そして、ユニバーサルヘルスカバレッジ(UHC)と健康安全保障の目標を達成するために、保健システムを強化することの必要性が明らかになりました。

 

保健上の緊急事態に対処し、救命に不可欠なサービスを提供するために、各国では一つの保健システムに依存しているのが実情です。UHCと健康安全保障という共通目標に向かって前進するためには、各国の保健システムの強固な基盤を構築することが重要です。  

 

多くの国々の保健予算(および保健分野の開発援助)は縮小しており、限られた資源を有効に活用することが今まで以上に重要です。

 

保健に対するより多くの資金拠出を求めることは必要ですが、同時に、子どもたちの利益につながる保健上の成果をもたらすために、より高い効果を求めていく必要があります。

 

ユニバーサルヘルスカバレッジと健康安全保障への統合的アプローチ

2022年末には、パンデミック基金が何に焦点を当てるべきかについて、多くの意見がでました。

 

この新しい基金は、プライマリーヘルスケアの強化によって、健康上のショックに対するレジリエンスを高めることと、準備能力を強化することの両方に対応する必要があることが明らかになりました。

 

さらに、これらの取り組みは、次の世界的な健康上の脅威であれ、気候関連の危機であれ、緊急時に保健サービスを継続できるようにするための適応力を向上させるものであるべきです。

 

もし世界の保健医療関係者と政府が、平時にも緊急時にもすべての人のための健康の実現を約束するならば、より水平的で統合的なアプローチに向かう必要があります。

 

重要な点は、資金援助や技術協力を各国のニーズや特定の状況に合わせることです。資金拠出先の選定は、各国政府、市民社会、コミュニティがその推進役となり、各国で確認されたギャップを反映したものでなければなりません。これによって、各国の保健政策、戦略、計画との整合性が確保されます。

 

パンデミック基金は、PPRにより多くの資金を割り当てるよう、各国政府に働きかける役割を果たすべきです。

 

しかし、このような取り組みは、その国の現在の疾病負担にみあい、また、他の保健上の優先課題に対する資金を圧迫しないように留意しなければなりません。さらに、パンデミック基金は、他の国際保健機関と同様に、女性、子ども、青少年の権利を守るために、保健資金の拠出先や配分を改善し強化する役割を果たす必要があります。

 

パンデミック基金は、包括的で参加型のアプローチの良い事例となっています。基金には、低中所得国の政府、市民社会、コミュニティの優先事項が考慮され、それは理事会の構成にも反映されています。

 

この基金は、現在、当初の必要額の約13%を外部から調達していますが、PPR UHCのギャップを解決するには極めて不十分な状況です。しかし、うまく設計され、実施されれば、パンデミック基金は、保健システムを段階的に強化し、子どもの健康の改善にも貢献することができると考えられます。

■報告書の全文はこちら


 

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