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アドボカシー
(公開日:2024.11.13)

【活動報告】TICAD閣僚会合テーマ別イベント開催「アフリカにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成のためのグローバルヘルス・ファイナンシング:成果の最大化に向けたパートナーシップをいかに推進するか」

 

2024826日、セーブ・ザ・チルドレンは日本国際交流センター(JCIE)と、東京でTICAD(アフリカ開発会議)閣僚会合が開催される機会を捉え、テーマ別イベント「アフリカにおけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成のためのグローバルヘルス・ファイナンシング:成果の最大化に向けたパートナーシップをいかに推進するか」を開催しました。

 

2023年のユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC) 進捗レポートによると、世界では基本的な保健医療サービスにアクセスができない人々は45億人、経済的困難に陥っている人々は20億人に上ります。イベントでは、UHCの達成に向けて、ヘルスファイナンシング(保健資金)を強化するためにどのような連携が求められるのか、グローバルヘルス・イニシアティブ(GHIs)、国際金融機関(MDBs)、市民社会、民間セクター、アカデミアから登壇者を招き、議論が行われました。

イベント報告書はこちら

 


このイベントは、ハイレベル対談およびパネルディスカッションから成るモーニング・セッションと、ランチョン・セッションから構成されました。

 

開会挨拶として、穂坂泰外務大臣政務官からは、アフリカ各国が進める保健に対する国内資金動員を後押ししつつ、持続可能なファイナンシングを実現するための民間資金の動員や、限られた資源の効率的な活用の重要性が述べられました。

 

特別挨拶の冒頭で武見敬三厚生労働大臣は、UHCを実現するための保健システム強化、特に保健資金が重要であるとし、アフリカのオーナーシップの尊重と関係機関の協調の必要性を強調しました。日本が設置を発表した「UHCナレッジハブ」が、アフリカでの保健資金の動員や効果的な執行に必要な経験共有の場となり、財務省と保健省の連携、関係機関の協調に寄与することへの期待が表明されました。

 


ハイレベル対談「グローバルヘルス・イニシアティブの組織間及び国際開発金融機関との連携の意義と課題」では、小寺清セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン理事をモデレーターとし、マグダ・ロバロUHC2030共同議長、Gaviワクチンアライアンスのマリアンジュ・サラカ=ヤオ資金調達局長、世界銀行のモニーク・ブレダー保健・栄養・人口部門長、世界保健機関(WHO)のブルース・エイルワード事務局長補、そして武井貞治 厚生労働省国際参与が登壇しました。

 


対談では、アフリカ各国が国内保健予算を増やす上での課題や、医療費の自己負担を軽減するための具体的なステップ、さらに国際機関や二国間機関は各国の努力をどのように後押しすべきかについて議論されました。援助がその国の国内資金を減らすことにならないよう、GHIsMDBsが策を講じることや、資金を増やすだけでなく「歳出の質」の向上のため、各国の公共財政管理(PFM)能力と政府のオーナーシップを強化する必要性が確認されました。また、保健予算を増やすためには、医療費を経費ではなく投資と捉える意識改革や、健康な社会を作り、ウェルビーイングを高めるという政府の意識醸成、財政余地を保健医療に使うという政治的意思形成の重要性も強調されました。

 

最後に、2030年までにUHCを達成するためには、低・中所得国が保健財政分野への政治的コミットメントを高めるだけでなく、各国の保健省がGHIsMDBsの資金を活用し、質の高い、持続可能で衡平で包摂的な保健政策の設計を行い、財務当局も保健財源の設計や確保を共同責任で行うことの必要性が確認されました。

 

パネルディスカッション「成果最大化のためのパートナーシップをいかに推進するか」では、小松隆一長崎大学客員教授をモデレーターとし、フィツム・ラケウ・アラマイユWACI Healthアフリカ連合リエゾン・オフィス所長、グローバルファンドの馬渕俊介 保健システム・パンデミック対策部長、ユニットエイドのテヌ・アヴァフィア事務局次長、JICAの牧本小枝人間開発部審議役、およびグローバルヘルスのためのインパクト投資イニシアティブ(Triple I)の渋沢健共同議長が登壇しました。

 


パネルディスカッションでは、低・中所得国が保健システムを強化し、UHCを実現するために、市民社会や官民のステークホルダーがどう連携、協働すべきか、その現状と展望、また具体的な連携事例が共有されました。GHIsMDBsの連携と相乗効果の発揮に加え、アフリカ各国政府、また市民社会やコミュニティのニーズに基づくオーナーシップの醸成や、政策議論への参加の重要性につき共通認識が示されました。また、官民パートナーシップを促進し、成果を最大化させるための保健セクターと民間セクター間の共通言語の必要性が挙げられました。


モーニング・セッションの総括コメントとして、中村和彦外務省地球規模課題審議官よりGHIsの将来のあり方を議論するプロセス(The Future of Global Health Initiatives)に積極的に関与してきた日本政府として、具体的な成果が近い将来出ることへ期待が寄せられました。

 

ランチョン・セッションでは、今年7月にエチオピアおよびガーナ視察に参加した7人の国会議員による報告が行われました。

 

まず、エチオピア視察に参加した友納理緒参議院議員より、エチオピアの保健課題に対応するためのグローバルファンドやGavi、政府間の連携の重要性と、ドナーとして、また各機関の理事としての日本のリーダーシップへの期待が述べられました。藤井一博参議院議員からは、交通、保健医療人材、教育インフラ整備の必要性が指摘され、山本左近衆議院議員からは、保健サービスの拡充を通して子どもたちの教育機会が守られること、またコミュニティの人たちに日本の支援について広く知ってもらう重要性が訴えられました。

 


続いて、ガーナ視察に参加した藤井比早之衆議院議員より、ドローンを活用したワクチン配送、蚊帳、マラリア診断装置など、日本企業を含む民間企業がガーナで大きなプレゼンスを発揮していることが紹介されました。鷲尾英一郎衆議院議員からは、アフリカで取り組みを進める企業に対するさらなる投資への期待とともに、日本の援助の外交上の重要性が指摘されました。源馬謙太郎衆議院議員からは、開発途上国の援助からの卒業への道筋づくりの重要性、伊藤孝恵参議院議員からは、アフリカのイノベーティブな取り組みが日本の社会課題解決にも繋がり得ることが示唆されました。

 


Gaviワクチンアライアンスのチオマ・ンワチュク公共政策連携室長およびグローバルファンドの馬渕俊介保健システム・パンデミック対策部長からは、Gaviとグローバルファンド間の知見や専門性の共有や、統合的なマラリア対策におけるパートナーシップ強化について今後のビジョンが述べられました。

 

日本・アフリカ連合(AU)友好議員連盟会長、グローバルファンド日本委員会共同議長である逢沢一郎衆議院議員は、閉会の挨拶として、今回の国会議員の視察報告を日本政府がしっかりと受け止め、今後の政策に生かしていくとともに、グローバルファンドやGaviといった国際機関でも、今後の計画策定に生かしてほしいと述べました。

 

このイベントは、アフリカ各国や、GHIsMDBsなどの国際機関を始め、さまざまなステークホルダー間の連携やパートナーシップの重要性、その促進において日本が果たす役割を再確認するものでした。

 

セーブ・ザ・チルドレンは、これからもパートナーと共に、UHC達成のためのヘルスファイナンシング強化に向けた議論の活性化に貢献していきます。


※登壇者の役職は、2024年8月26日時点


 

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