アドボカシー(公開日:2018.04.10)
報告書『勧めないで−粉ミルクの過剰なマーケティング活動』を発表
セーブ・ザ・チルドレンは、粉ミルクのマーケティングに関するレポート『勧めないで−粉ミルクの過剰なマーケティング活動(Don't Push It: Why the formula milk industry must clean up its act)』を発表しました。粉ミルクなどの母乳代替品が医療上の理由で必要となるケースは存在し、また母乳代替品が選択される背景にはさまざまな要因があります。しかし、粉ミルクなどの母乳代替品市場は、母乳代替品を販売する企業によるマーケティング活動により世界経済成長率の3倍の速さにあたる、20年間で5倍にまで成長し、必要としない状況においても使用されることで、特に途上国においては母親と赤ちゃんの健康を守る母乳育児の阻害要因になっています。本報告書は、乳幼児向け食品業界の6つの大手企業(ネスレ、ダノン、レキットベンキーザー(ミード・ジョンソン)、アボット、クラフト・ハインツ、フリースランドカンピーナ)による世界保健機関(WHO)の「母乳代替品のマーケティングに関する国際規準」を大きく逸脱した販促活動に警鐘を鳴らしています。
母乳には、命を奪う病から赤ちゃんを守る抗体を提供する働きがあります。とりわけ、5歳未満の子どもにとって最大の脅威である肺炎 に対する効果は大きく、母乳を飲んでいない赤ちゃんの肺炎[1]による死亡リスクは、飲んでいる赤ちゃんの9倍にのぼります。中低所得国で母乳育児が徹底されることで、1年間に命を落としてしまう5歳未満の子どもの7分の1にあたる82万3,000人の子どもを死亡リスクから救うことができると言われています[2]。しかし、母乳に代わり、粉ミルクなどの母乳代替品を赤ちゃんに与えることで、赤ちゃんに及ぼす母乳の効果が妨げられてしまいます。
取り上げた6つの企業のマーケティングは、母乳代替品に母乳と同等あるいはそれ以上の効果があることを宣伝するもので、母乳代替品を必要としない状況においても、正しい情報を持たない大人が母乳代替用品を使用し、母乳育児を制限、あるいは完全に放棄してしまうことに繋がっています。商品を買い続ける経済力が十分にない低所得層の家庭では、母乳代替品を薄めて使用するようなケースも見られ、また特に安全な水や衛生状況へのアクセスが限られ、急性呼吸器疾患や下痢、はしかが蔓延する途上国では、母乳育児から母乳代替品への移行は、生死にも関わる問題となります。
世界保健機関は母乳の役割を重視して「母乳代替品のマーケティングに関する国際規準」を設けています。この国際規準は、「一般向けの販促活動の禁止」、「試供品の配布の禁止」、「医療従事者への贈り物の禁止」などの項目によって母乳代替品のマーケティングを制限しています。
しかし、このような国際規準には法的拘束力がなく、多くの乳幼児向け食品会社は国際規準を逸脱したマーケティングを行っています。本報告書では、上述した企業6社の販促活動を個別に評価し、国際規準との整合性を数値化しています。その結果、これらの企業6社のいずれもが国際規準と合致しない方法でマーケティングを行っていることが明らかになりました。さらに、6つの企業がマーケティングにかける総額は年間75億ドル(およそ7,942億円)以上で、これは世界中のすべての赤ちゃん一人あたり約54ドル(およそ5,700円)をかけている計算になります。
世界の大手資産運用会社は、母乳代替品を販売する企業に対して1,100億ドル(およそ11兆6,000億円)以上を投資してきました。このような投資が母乳代替品の過剰なマーケティングを後押ししています。投資家たちが母乳の重要性を認識し、責任ある投資を行うことで、過剰なマーケティングに歯止めをかけることができます。
母乳育児の推進は、子どもの健康を守ることに留まらず、社会の発展にも大きな効果をもたらします。子どもが健やかに成長することで、教育が促進され、経済活動への貢献が可能になるからです。母乳育児推進のために1ドル(およそ106円)投資すると、35ドル(およそ3,700円)の経済効果があるとされています[3]。
セーブ・ザ・チルドレンは、数百万人もの子どもたちが人生の健康なスタートを切れるよう、以下のように母乳代替品の過剰なマーケティングを見直すことを求めます。
報告書全文(英語)はこちら
[1] 肺炎は、5歳未満児の死亡原因となる感染症のうち最も死亡率が高い
[2] Victora CG et al., 2016 ‘Breastfeeding in the 21st century: epidemiology, mechanisms, and lifelong effect’, The Lancet, Vol 387, page 467
[3] Unicef and the World Health Organisation, Nurturing the Health and Wealth of Nations: The Investment Case for Breastfeeding, 2017, http://www.who.int/nutrition/publications/infantfeeding/global-bf-collective-investmentcase.pdf
母乳には、命を奪う病から赤ちゃんを守る抗体を提供する働きがあります。とりわけ、5歳未満の子どもにとって最大の脅威である肺炎 に対する効果は大きく、母乳を飲んでいない赤ちゃんの肺炎[1]による死亡リスクは、飲んでいる赤ちゃんの9倍にのぼります。中低所得国で母乳育児が徹底されることで、1年間に命を落としてしまう5歳未満の子どもの7分の1にあたる82万3,000人の子どもを死亡リスクから救うことができると言われています[2]。しかし、母乳に代わり、粉ミルクなどの母乳代替品を赤ちゃんに与えることで、赤ちゃんに及ぼす母乳の効果が妨げられてしまいます。
取り上げた6つの企業のマーケティングは、母乳代替品に母乳と同等あるいはそれ以上の効果があることを宣伝するもので、母乳代替品を必要としない状況においても、正しい情報を持たない大人が母乳代替用品を使用し、母乳育児を制限、あるいは完全に放棄してしまうことに繋がっています。商品を買い続ける経済力が十分にない低所得層の家庭では、母乳代替品を薄めて使用するようなケースも見られ、また特に安全な水や衛生状況へのアクセスが限られ、急性呼吸器疾患や下痢、はしかが蔓延する途上国では、母乳育児から母乳代替品への移行は、生死にも関わる問題となります。
世界保健機関は母乳の役割を重視して「母乳代替品のマーケティングに関する国際規準」を設けています。この国際規準は、「一般向けの販促活動の禁止」、「試供品の配布の禁止」、「医療従事者への贈り物の禁止」などの項目によって母乳代替品のマーケティングを制限しています。
しかし、このような国際規準には法的拘束力がなく、多くの乳幼児向け食品会社は国際規準を逸脱したマーケティングを行っています。本報告書では、上述した企業6社の販促活動を個別に評価し、国際規準との整合性を数値化しています。その結果、これらの企業6社のいずれもが国際規準と合致しない方法でマーケティングを行っていることが明らかになりました。さらに、6つの企業がマーケティングにかける総額は年間75億ドル(およそ7,942億円)以上で、これは世界中のすべての赤ちゃん一人あたり約54ドル(およそ5,700円)をかけている計算になります。
世界の大手資産運用会社は、母乳代替品を販売する企業に対して1,100億ドル(およそ11兆6,000億円)以上を投資してきました。このような投資が母乳代替品の過剰なマーケティングを後押ししています。投資家たちが母乳の重要性を認識し、責任ある投資を行うことで、過剰なマーケティングに歯止めをかけることができます。
母乳育児の推進は、子どもの健康を守ることに留まらず、社会の発展にも大きな効果をもたらします。子どもが健やかに成長することで、教育が促進され、経済活動への貢献が可能になるからです。母乳育児推進のために1ドル(およそ106円)投資すると、35ドル(およそ3,700円)の経済効果があるとされています[3]。
セーブ・ザ・チルドレンは、数百万人もの子どもたちが人生の健康なスタートを切れるよう、以下のように母乳代替品の過剰なマーケティングを見直すことを求めます。
◆乳幼児向け食品会社が、「母乳代替品のマーケティングに関する国際規準」を遵守することを公に向けて明確に約束する。
◆過剰なマーケティングが乳幼児に悪影響を及ぼすことを投資家たちが認識し、母乳代替品を販売する企業が国際規準を遵守するよう促す。
◆各国政府が国際規準を法や規則に反映し、企業活動の監視や国際規準を遵守するような支援に積極的に取り組む。
報告書全文(英語)はこちら
[1] 肺炎は、5歳未満児の死亡原因となる感染症のうち最も死亡率が高い
[2] Victora CG et al., 2016 ‘Breastfeeding in the 21st century: epidemiology, mechanisms, and lifelong effect’, The Lancet, Vol 387, page 467
[3] Unicef and the World Health Organisation, Nurturing the Health and Wealth of Nations: The Investment Case for Breastfeeding, 2017, http://www.who.int/nutrition/publications/infantfeeding/global-bf-collective-investmentcase.pdf