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アドボカシー
(公開日:2019.08.26)

ロヒンギャの子どもたちを忘れないで〜ロヒンギャ危機から2年。公正な裁きからほど遠く

 

バングラデシュ・コックスバザールのロヒンギャ難民キャンプから、セーブ・ザ・チルドレン ロヒンギャ難民支援事業統括デビット・スキナーによる報告です。

 

ファティマさん(13)は、ロヒンギャ難民の少女です。2年前、ミャンマーから国境を越えてバングラデシュに避難してきました。今、世界最大の難民キャンプに、両親と2人の姉妹、祖父と暮らしています。

 


ファティマさん(13歳)。セーブ・ザ・チルドレンが、バングラデシュ・コックスバザールの難民キャンプで運営する「こどもひろば」で開催された「フォトプログラム」に参加した際の写真。自身の感情や恐怖を写真に描いた。


ファティマさんは、学校で学ぶことがとても大切だと知っています。彼女には、教員になって、特に少女たちに勉強を教えたいという夢がありました。彼女だけではなく、数十万人のロヒンギャ難民の子どもたちには未来や夢があります。しかし、ミャンマーで危機が発生してから2年が経過した今も、子どもたちは難民キャンプの劣悪な環境の中で暮らしています。ロヒンギャ難民の子どもたちの未来が閉ざされてしまっているにもかかわらず、子どもたちをひどい目に合わせた加害者は、公正な裁きを受けていません。

 

20178月、50万人を超えるロヒンギャの子どもたちが、故郷から避難を余儀なくされました。ロヒンギャ危機によって、避難を強いられた人は、1994年に起きたルワンダの大虐殺以降、最大規模となっています。ロヒンギャの子どもたちは私たちに、レイプや拷問、殺害などを目の当たりにしたと話してくれました。子どもたちの中には、レイプされたり、拷問を受けたりした人もいました。また、多くの子どもたちが、目の前で友達や家族を殺され、子どもたちは、炎に包まれた自宅から逃げ出すことしかできなかったのです。

 

彼らは、ほとんど何も持たず、ミャンマーから国境を越えてバングラデシュに逃げてきました。バングラデシュの人々は、避難してきた人々に安全を提供し、さらに、国際社会も支援をしたことで、難民の子どもたちとその家族は、衣食住といった基本的な権利を手にすることができたのです。

 

こうした協力により、人々が避難先からさらに避難を余儀なくされるという危機は避けることができました。コックスバザールでは、広大な面積の熱帯雨林が伐採され、仮設シェルターが建設されました。子どもたちには食料が与えられ、疾病の蔓延はなんとか抑制されました。

 

しかし、約100万人の難民の人々は今でも困難な生活を強いられています。ファティマさんのようなロヒンギャ難民の子どもたちの将来は決して明るくはありません。彼女は学び続けたいのですが、中等・高等教育の機会はありません。難民キャンプで唯一提供されている教育は、初等レベルの教育です。

 

子どもたちが暮らすシェルターも、竹の骨組みをビニールシートで覆っただけの一時的なものです。強風に耐えられず、サイクロンの場合にはどうしようもありません。10人に1人の子どもたちが栄養不良の状態にあります。また、人身売買や薬物、暴力的な犯罪などの危険にも晒されており、子どもたちはいつも危険を感じています。さらに、日暮れ後に、水をくみに行ったり、トイレに行くといった簡単なことであっても、わずかな灯りの中では、子どもたちは危険を伴うことになってしまうのです。

 

支援を必要としているのは、ロヒンギャ難民の子どもたちだけではありません。2年前に、ロヒンギャ難民を快く受け入れたバングラデシュのコミュニティの子どもたちもまた、大きな影響を受けています。農村や小さな町が、100万もの人々の流入に対処しなければならなかったのです。難民キャンプ建設のために周辺の森林が切り倒され、家屋や村々が洪水や土砂崩れの危険に晒されやすくなっています。もともと十分とはいえなかった保健医療サービスも、すでに対応できる限界を超えてしまいました。

 

2年もの月日が経過したにもかかわらず、事態は解決の方向に一向に進んでいません。安全で、自発的で、尊厳のあるミャンマーへの帰還がなされることが必要ですが、そうした帰還の見通しはまだ立っていません。定住地を申し出る第三国も存在しません。バングラデシュの国内に定住するという見通しもまったくありません。

 

しかし、長期的な解決はミャンマーにあります。


ロヒンギャの人々が、安全かつ自発的にミャンマーに戻ることができるような環境を整える必要があります。ミャンマー政府は、国内の人々と同等レベルの安全の保障をロヒンギャの人々にも与える責任があります。そして、ロヒンギャの人々に対する犯罪を行った加害者は、自らの犯罪に対する責任を果たす必要があります。

 

ロヒンギャの人々は、自身が生まれ育った国の市民権を持っていません。国連子どもの権利条約では、あらゆる子どもたちは国籍を持つ権利があるとしています。この権利規定は明確で、疑問の余地はありません。ミャンマー政府は、ロヒンギャの人々の権利を保障しない、意味のない書類を発行しようとしていますが、そうではなく、ロヒンギャの人々に市民権を与える必要があります。

 

「ロヒンギャの子どもたちは失われた世代になる」というお決まりの言説が、悲しむべきですが、ここでも言われ始めています。しかし、彼らは決して失われた世代ではありません。彼らが存在するということを世界は認識しているのですから。ファティマさんのような子どもたちが学び、安全でそして健康であるための支援、加害者が公正に裁かれるための支援が、今こそ求められています。


セーブ・ザ・チルドレンは、紛争下の子どもたちを守るためのキャンペーン「♯この手で止める Stop the War on Children」を展開しています。詳しくはこちらをご覧ください。


 

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