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アドボカシー
(公開日:2020.09.02)

ヨーロッパで先の見えない運命に取り残された、大人を伴わない20万人以上の子どもたち

 
シリアから避難の途中、遺体となってトルコの浜辺にうちあげられたアラン・クルディさん。この悲劇的な死から5年が経過した今、セーブ・ザ・チルドレンは、ヨーロッパ各国は、移民や難民の子どもたちのニーズに応えることができていないと警鐘を鳴らします。


地中海で行った捜索救助船による活動 (2017年6月26日撮影)

セーブ・ザ・チルドレンは、最新の報告書『Protection Beyond Reach』を発表しました。報告書によれば、過去5年間に、保護者や大人の付き添いのないおよそ21万人の子どもたちが、紛争や迫害、暴力を逃れ、ヨーロッパに庇護を求めて移動してきたことを明らかにしています。ヨーロッパに到着した子どもたちは21万人よりも多いとされていますが、その多くは闇の 世界での生活を強いられ、搾取や暴力の危険にさらされています。また、ヨーロッパを目指す危険な航海の途上で、乳幼児を含む700人以上の子どもたちが命を落としました。[1]

安全な環境と保護を提供されている子どもたちもいる一方で、多くの子どもたちは難民認定を受けられず、絶え間ない強制送還、勾留や拘束される恐怖にさらされ、ヨーロッパで離ればなれの家族とも再会できていません。

家族と一緒にいる子どもたちも、そうでない子どもたちも、子どもは特有のニーズがあり、安心・安全に過ごせる場所を提供され、保護されるべきです。しかし、欧州連合(EU)はこれまで以上に厳しく危険な措置を講じていると指摘しています。

セーブ・ザ・チルドレン EU事務所代表のアニタ・ベイ・ブンゴード は次のように話します。
「アラン・クルディさんがトルコの海岸で命を落とし、その姿が『難民危機』の象徴となった日から5年が経ちました。当時、ヨーロッパ各国の首脳たちは『こんなことが二度とあってはならない』と真っ先に意思表明しましたが、それ以降彼らが取ってきた政策により、難民や移民の移動はさらに危険で困難を伴うものになりました。

最も脆弱な立場に置かれた子どもたちが困難に陥っているとき、ヨーロッパが取っている対策は受け入れがたいものです。2019年8月以降、毎日平均1万人の子どもたちがギリシャの島で、立ち往生する状況が続いており、うち6割が12歳未満です。ギリシャに辿り着いた子どもたちをヨーロッパ内で受け入れようとする努力も見られる一方で、こうした最も脆弱な子どもたちを受け入れようとしないヨーロッパの国々もあるため数千人もの子どもたちが見捨てられてきました。ヨーロッパ各国の首脳たちが目を背けている間に、ヨーロッパの入り口で子どもたちが命を落とし続けています。

改善が見られるところもある一方で[2]、最も脆弱な立場におかれた子どもたちがヨーロッパへ入国するのを防ぐための厳しい国境政策やその他政策により、その改善が見劣りする状況になっています。ヨーロッパは、過去から学ばなければなりません。子どもたちの命を犠牲にするような新たな移民政策を実施すべきではありません。」

多くの子どもたちは、今も続く、そして長期化する危機の中にある国から逃れてきています。シリアでは、2011年に始まった紛争が10年目に入りました。つまり、シリアの子どもたち800万人のうち、その半数は紛争しか知らないことになります。また、ヨーロッパに子どもだけで避難してきた人数が最も多い国であるアフガニスタンでは、紛争による国内の死傷者数の3分の1が子どもです[3]。

多くのヨーロッパ諸国は、移民危機に対し、国境閉鎖や子どもたちの勾留や拘束、家族との再会をほぼ不可能にするなどの対応を取り、ギリシャだけでも2020年3月時点で331人の子どもたちが拘束されています。

シリアから逃れ、今はセルビアのベオグラードにいるアフマドさん(15歳)は、次のように話します。
「シリアから国境を超えようとして見つかったら、警官からひどく叩かれます。彼らは非常に乱暴なことが多いです。 たぶん、私たちを怖がらせて、再び国境を越えようとしないようにしているのだと思います。私は長い間、自分の家族に会っていません。シリアやレバノン、トルコには私の居場所はなかったので、そこを離れてヨーロッパに向かいました。」

子どもたちは、自国での経験や避難途中での経験、滞在許可証が常に審査されることや強制送還への恐怖のため、悪夢や自傷行為を含むさまざまな症状に苦しんでいます[4]。

欧州連合統計局や国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、国際移住機関(IOM)などのデータを基に、次のことが明らかになっています。

  • ・保護者や大人の付き添いなく移動する20万人の子どもたちのほとんどが、アフガニスタンやシリア、エリトリア出身であり、最終的にドイツとギリシャ、イタリア、スウェーデンで滞在している[5]
  • ・過去5年間の、ギリシャとイタリアから第三国に受け入れられた3万5,000人の庇護希望者のうち、保護者や大人に付き添われていない子どもたちはわずか834人だった[6]
  • ・海を渡るルートでギリシャに到着した人数は、2018年から2019年にかけて3万2,000人から6万人へと倍近くになった [7]

欧州連合(EU)による、庇護希望者や移民に関する新たな政策の声明発表を前に、セーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利がそれらの政策決定の中心に据えられるべきであり、欧州連合と加盟国首脳は、脆弱な立場に置かれている子どもたちが安全でいられるよう、確実な策を講じるべきだと訴えます。ヨーロッパに到着した子どもたちを追い返すのではなく、彼らがすぐに庇護を求め保護を享受できるようにすべきです。家族との早い再会も含む、より多くの、そしてより安全な 合法的な移動ルートの確保が、ヨーロッパを目指す途上で命を落とす子どもたちを減らすことになります。

[1] See report from the European Union Agency for Fundamental Rights, children in migration in 2019 (p.6): https://fra.europa.eu/sites/default/files/fra_uploads/fra-2020-children-in-migration_en.pdf
[2] Good practises include the ‘Zampa law’ in Italy, a comprehensive legal framework protecting unaccompanied children, and the European Commission Communication on the Protection of Children in Migration from 2017
[3] According to Eurostat, in each of the last five years, Afghan has been the main citizenship of asylum applicants considered to be unaccompanied minors. In 2015 this was 51%, in 2016 38%, in 2017 17%, in 2018 16% and in 2019 30%.
[4] See https://resourcecentre.savethechildren.net/library/tide-self-harm-and-depression-eu-turkey-deals-devastating-impact-child-refugees-and-migrants and https://resourcecentre.savethechildren.net/node/16322/pdf/tankar_om_att_atervanda_webb.pdf
[5] Combined numbers from Eurostat 2015, 2016, 2017, 2018, 2019, plus an average of 10,000 children who have arrived in Europe since August 2019, UNHCR compiled numbers from September 2019, see example here: https://reliefweb.int/sites/reliefweb.int/files/resources/78207-2.pdf
[6] See https://ec.europa.eu/info/sites/info/files/relocation_scheme_implementation_summary_april_2019_.pdf
[7] See UNHCR https://data2.unhcr.org/en/situations/mediterranean/location/5179

 

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