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アドボカシー
(公開日:2023.04.03)

【声明】「こども家庭庁発足」「こども基本法の施行」に対して

 

202341日、第208回国会にて可決され成立したこども家庭庁設置法、及びあらゆる子ども施策の基盤となる基本理念を定めたこども基本法が施行され、こども家庭庁が発足しました。

 

日本においては1994年の子どもの権利条約(児童の権利に関する条約)批准以来、これまで国内で条約に対応した包括的な基本法、および子どもの権利擁護に対する横断的な行政機関はありませんでした。

 

こども家庭庁はその任務として「こどもの権利利益の擁護(第3条)」を明記し、こども基本法は「児童の権利に関する条約の精神にのっとり(第1条)」と規定し、かつ子ども施策の基本理念として「全てのこどもについて、個人として尊重され、その基本的人権が保障される(第3条)」ことをうたっています。

 

したがってセーブ・ザ・チルドレンは、こども家庭庁の発足とこども基本法の施行を歓迎し、この新しい取り組みが子どもの権利が保障され、子どもの声が聴かれ、活かされるための第一歩となることを期待し、今後のより一層の子ども施策の充実を求めます。

 

これまでセーブ・ザ・チルドレンは、子どもの権利が保障される社会の実現を目指して、子どもの声を制度・政策に反映できる仕組みの必要性を訴えてきました。

 

こども家庭庁とこども基本法では、こどもの意見表明機会・参画の確保、意見の尊重、その最善の利益を優先して考慮すること(こども基本法第3条及びこども家庭庁設置法第3条)が基本であると明記されており、また、同基本法第11条では、「こども施策の策定、実施、評価にあたって、こどもなどの意見を反映させるために必要な措置を講ずる」ことを、国や地方公共団体に対し義務付ける規定が設けられています。

 

このことに関連して本国会(第211回)で、小倉こども政策担当大臣から、今後こども関連政策について、当事者である1万人の「子ども」や「若者」の声を聴き、その意見を反映させることが述べられ、参加する子ども・若者の登録などの取り組みが既に始まっています。

 

さらに、同基本法第15条では、子どもと子どもの意見を受け止める側の大人の両方に対し、子どもの権利を周知・啓発することの重要性についても明記されており、附帯決議で求められているように、こども基本法や子どもの権利の認知度を測りながら啓発を強化することになります

 

今後は、こども家庭庁が旗振り役となり、全国の自治体で、子どもの声が聴かれるための子どもの権利を基盤とした制度構築や、環境整備が進められていくことが必要です。

そのために、以下4点が、早急かつ具体的に議論・実行されることを求めます。


1.意義ある子ども参加の仕組みづくりをすべての自治体へ

子どもの意見表明を一過性で終わらせず、子どもと大人の双方に意義あるものとして継続的に社会に根付かせるために、脆弱な立場に置かれ、声をあげにくい子どもを含め、あらゆる子どもが安心して意見を表明しやすくするための工夫や聴く側の大人のスキル強化、「情報提供→意見形成→意見表明→フィードバック」といった一連のプロセス構築などを検討・実行すること。

 

さらに、こども基本法第11条に基づき、地方自治体においても意義ある子ども参加がなされるように、草の根で子どもたちとともに活動する民間団体との連携を図ることや、国からの財政面・人材面の支援を行うこと。

 

また、地方自治体が子どもの最善の利益を優先し、子どもが安全に参加できる場をつくれるよう、国は子どもの権利条約一般的意見12号で示されている「意見を聴かれる子どもの権利を実施するための段階的措置」、および「9つの基本的要件」などの国際規準に基づくガイドラインを早急に示すこと。


2.あらゆる場での意見表明を当たり前に

政策に対する意見表明のみでなく、家庭や学校をはじめとするあらゆる場で、子ども自身が自らを権利の主体として認識し、意見表明ができるよう子どもの権利教育を実施するほか、保護者や教職員、その他子どもと関わるあらゆる大人が子どもの権利を理解し、子どもの意見を受け止め尊重するよう、啓発活動を行うこと。


3.十分な予算の確保を

少子化対策や保護者・養育者を対象とした子育て支援のみではなく、子どもを対象とした子どもを取り巻く課題(教育、子どもの貧困、子ども虐待・体罰など)の解決のための予算の拡充と財源の確保を行うこと。

 

すべての子どもたちを対象とした普遍的な子ども・子育て支援に加え、子どもの貧困や虐待など、社会の中で取り残されがちな、特に脆弱性の高い子どもたちを対象にした施策の展開が、早急に求められていることから、そのための財源を十分に確保すること。


4.子どもの権利が包括的に保障されるこども大綱の策定を

こども施策を総合的に推進するためのこども施策に関する基本的な方針や重要事項をまとめた「こども大綱」が、子どもを権利の主体とし、すべての子どもの権利を保障し、こども基本法の理念を実現していくためのものとなること。

 

なお、こども大綱の策定および策定後の施策実施状況の評価にあたっては、当事者である子どもたちの声を学校や児童館、その他関係機関、民間団体などと連携し、大規模に聴いていくこと。


セーブ・ザ・チルドレンは、こども基本法の施行とこども家庭庁の発足を機に、子どもに関わるあらゆる施策が子どもの権利条約に則ったものになり、子どもの権利を保障する社会への歩みが着実に進むことを期待します。

 

また、誰ひとり取り残されることなく、社会の隅々であらゆる子どもの声が聴かれ、十分に尊重され、かつその声が社会の中で反映されることを、引き続き求めていきます。


声明の全文はこちらから







 

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