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アドボカシー
(公開日:2015.02.06)

新報告書「運に任されるいのち:すべての子どもに生きる可能性を」を発表!(2015.2.6)

 

自分が5歳の誕生日を迎えられるかはくじ引きで決まる、と言われたら皆さんはどう感じますか。そんなことがくじ引きで決まるべきではない、と考える方が多いのではないでしょうか。しかし世界では、子どもたちが5歳の誕生日を迎えられるかどうかは、依然としてどこで生まれたか、どれほど両親が裕福か、あるいはどの民族に所属しているか等、完全に運任せの要素によって左右されています。こうした不公正な「命のくじ引き(The Lottery of Birth) 」は、すべての子どもたちが人生において衡平なスタートを切る権利を侵害しています。


2015年2月、セーブ・ザ・チルドレンは新しい報告書「運に任されるいのち:すべての子どもに生きる可能性を(THE LOTTERY OF BIRTH: Giving all children an equal chance to survive)」を発表しました。報告書では、世界全体でみると乳幼児死亡率は改善されているものの、4分の3以上の途上国で、社会的、経済的、民族的に不利な立場に置かれた集団の子どもたちの死亡率の改善は、その他の集団の子どもたちに比べて遅れていることを示しています。こうした「命のくじ引き」を終わらせるために、最も取り残された子どもたちを最優先し、乳幼児死亡率の改善がどの集団においても衡平に進展するような政策を追求していく必要性をこの報告書は訴えています。





世界の多くの国では、子どもたちが5歳の誕生日を迎えられる可能性は、近年かなり改善されてきました。現在、5歳未満で亡くなる子どもの一日あたりの数は、1990年から17,000人減少し、世界の乳幼児死亡率は1,000人あたり90人(1990年)から46人(2013年)へ、およそ半減しました。しかし、この素晴らしいニュースを台無しにする問題があります。それは国内の格差です。現在、世界全体や国全体が死亡率を改善している一方で、最貧困層や、農村部、あるいは不利な立場に置かれた民族等、ある特定の集団における乳幼児死亡率は依然として高いというケースが頻繁に見られています。


しかし、こうした不衡平に立ち向かうことは可能です。セーブ・ザ・チルドレンが87か国で行った調査では、いくつかの国が、乳幼児死亡率の大幅な削減と、社会・経済集団間の格差の削減を同時に達成していること、また、改善が衡平になされた国の方が、途上国全体の平均と比べてより早く改善していることが明らかになりました。


こうした明るい見通しはあるものの、衡平な進展を実現するような政策が世界中の国々で追求される等、現在の状態からの大きな変革がなければ、特定集団の子どもたちが予防可能な原因で亡くなるという状態は将来にわたり継続される可能性が高いことも、本報告書は指摘しています。「命のくじ引き」は、「子どもが誰一人として予防可能な原因で命を落とすことのない世界の実現」という私たちの最大の目標の達成を遅らせるものです。セーブ・ザ・チルドレンは、より早く、より衡平に、乳幼児の死をなくすため、世界・国家リーダーに対し、以下のような提言を行っています:


1)世界および国家のリーダーは、野心的で実行可能な「ポスト2015年開発枠組み」を確実にし、その核心として衡平性が促進されるように、働きかけてください。

・真の意味で改革の力を持つ、政治的に際立った枠組みに合意すること。予防可能な子ども・妊産婦の死亡をなくすことを開発枠組みの中心とする必要があります。
・「ジェンダー平等」、「説明責任を果たすガバナンス」に関する単独の目標を設定した上で、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(Universal Health Coverage: UHC)を推進し、貧困と不均衡を生み出す多面的な要因に対処するような明確なターゲットを設定すること。
・最も取り残された集団に焦点を当てた、中間時期における「踏み台ターゲット」を設定し、2030年までにすべての社会・経済集団が達成しない限り、あらゆるターゲットを達成とみなさないというコミットメントを行うこと。
・強力な報告とアカウンタビリティ・メカニズムを構築し、政府・ドナー・多国籍機関がコミットメントと責任の実施における説明責任を果たすようにすること。



2)各国政府は、国家政策・セクター別政策を見直し、「ポスト2015年開発目標」の目標とターゲットの達成を支援するような計画を立ててください。


・特定の社会・経済集団における、高い乳幼児死亡率の直接的原因・根本的原因に対処するような政策を策定すること。
・貧困層が経済的な困難を伴わずに保健医療サービスにアクセスできるような政策・方策を実施すること。保健分野への国家財政配分を拡大し、政府予算の少なくとも15%を保健に投資し、衡平性の原則と再配分に沿って公的支出がなされるようにすること。
・アカウンタビリティを強化し、政策策定・立案における市民参加の機会を保証すること。



3)ドナー・多国籍機関・市民社会・その他の開発援助パートナーは以下のことを実施してください。


・行動を強化し、開発途上国政府の国家計画・セクター計画の下に連携すること。援助コミットメントを実施に移し、保健に対する援助予算の配分を増加させ、援助効果に関する原則を守り、その実施を支援すること。
・最貧国が、持続可能で継続的な国内財源を確保し、保健やその他の社会セクターに対する予算を増加できるよう、技術的、資金的な支援を提供すること。
・国際租税システムの一貫性の向上や、開発途上国で操業している多国籍企業による租税回避の取り締まり等を通して、各国が最大限に国内資源を調達できる環境を作ること。
・不利な立場に置かれた集団の進捗がより適切にモニタリングされるように、国家レベル・国際レベルで統計システムの強化を支援すること。
・それぞれのアクターが自らの方針や計画を見直し、保健及びその他の社会セクターにおける不衡平に焦点をあてるようにすること。
・「ポスト2015年開発枠組み」のために設定されたアカウンタビリティ・メカニズムと協働しつつ、それぞれのアクターが自らの活動・貢献を定期的に見直し、公に報告を行うことにより、開発枠組みの実施について説明責任を果たすようにすること。



報告書全文(英語)はこちら
報告書概要(日本語)はこちら


 

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