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アドボカシー
(公開日:2015.05.07)

「母の日レポート2015」を発表!都市部における保健格差が浮き彫りに(2015.5.7)

 

セーブ・ザ・チルドレンは、世界のお母さんの置かれた状況を通して子どもについて考えるきっかけを作るため、2000年から毎年母の日にあわせて「母の日レポート(State of the World’s Mothers)」を世界各国で発行しています。レポートでは「お母さんにやさしい国ランキング (母親指標:Mother’s Index)」*1を発表しており、2015年は179カ国中1位はノルウェー、最下位はソマリア、日本は昨年と同位の32位でした。上位は北欧諸国が、下位は11カ国中2カ国を除いて西・中央アフリカの国々が占める結果となりました。


 *1 次の5つの指標を基に、保健、教育、経済、政治への女性参加を総合的に勘案して算出
1)妊産婦死亡の生涯リスク、2)5歳未満児の死亡率、3)公教育の在籍年数、4)国民1人あたりの所得、5)女性議員の割合

日本のランキングが他の先進国より低い要因が女性議員の割合の低さです。セーブ・ザ・チルドレンは、女性議員が増えることで女性や子どもの課題に優先的に取り組まれ、女性や子どもが暮らしやすい社会をつくっていくことにつながると考えていますが、日本の女性議員の割合(11.6%)は179カ国中140位と、総合ランキング最下位のソマリアや、アジアではインドや韓国などよりも低いのが現状です。


今年のテーマは「都市部における保健格差」
貧困に起因する保健格差に関しては、これまで発展途上国の農村部や遠隔地の問題とみなされてきました。しかし、全世界の人口の54%が都市部に集中する現状を鑑み、セーブ・ザ・チルドレンとして初めて「都市部における保健格差」に焦点をあて、都市部のお母さんをテーマにレポートをまとめました。

その結果、レポートから浮かび上がってきたのは、都市部における急激な人口増加に対してインフラの整備が追いつかず、特に都市部人口の1/3を占めるスラムの住人は、劣悪な衛生環境や住環境での生活を余儀なくされている状況です。その結果、多くの途上国における都市部の貧困層の乳幼児死亡率は、富裕層の2倍以上になっていることが明らかになりました。

世界の一部の大都市に住む富裕層と貧困層の間のこうした保健格差は、最も豊かで健康な人々の住む場所が、地上で最も貧しく軽んじられた人々が住む場所でもあることを表しています。

発展途上国における都市部の保健格差
発展途上国の都市部において、富裕層と貧困層の間で最も大きな保健格差がある10カ国は、ルワンダ、カンボジア、ケニア、ベトナム、ペルー、インド、マダガスカル、ガーナ、バングラデシュ、そしてナイジェリアです。ルワンドとケニアは乳幼児の死亡率を下げることに成功している国ではありますが、都市における保健格差は約2倍となっています。

一方、カンパラ(ウガンダ)、アディス・アベバ(エチオピア)、カイロ(エジプト)、グアテマラシティ(グアテマラ)、マニラ(フィリピン)、プノンペン(カンボジア)などの都市では、保健システムを強化して、母子保健への意識を喚起し、最貧困層家庭が手頃なコストで保健医療サービスを利用できるようにしたことで、保健格差の大幅な改善を達成しています。



先進国の都市における保健格差
一部の先進国の大都市においても、富裕層と貧困層の保健格差が浮き彫りになりました。先進国の25の首都における乳児死亡率ランキングでは、ワシントンDCが最下位で、1,000人当たり約8人の乳児が亡くなる確率です。ワシントンDCと僅かな差で、ウィーン(オーストリア)、ベルン(スイス)、ワルシャワ(ポーランド)そしてアテネ(ギリシャ)が続きます。

一方、乳児死亡率の低い首都の上位は、プラハ(チェコ共和国)、ストックホルム(スウェーデン)、オスロ(ノルウェー)、東京(日本)、リスボン(ポルトガル)です。

グローバルな視点から見る日本の格差の現状
東京は乳児死亡率が世界でも最も低い都市の一つですが、日本では職業による保健格差があることが改めて分かりました。例えば、乳児死亡率が最も高い無収入世帯は、国家公務員や企業の上級管理職などの高所得世帯より、子どもが1歳未満で亡くなる可能性が7.5倍になります。(1,000人当たり10.5人対1.4人)*2
*2出典:総務省統計局 平成25年人口動態調査 上巻 乳児死亡 第6.9表 世帯の主な仕事別にみた生存期間別乳児死亡数・率(世帯の主な仕事別出生千対)及び百分率

生まれた国や住んでいる地域で、命の運命が決まるべきではありません。世界人口の半分以上が住む世界の多くの都市では、急速な成長に追いつくことが出来ず、何億ものお母さんと子どもたちが、生存し健康でいるために不可欠な最低限の医療サービスや清潔な水を得られない状態に置かれています。

世界中のすべてのお母さんと子どもたちの生きる権利、健康でいる権利を守るために、母子の保健医療ニーズを最優先課題とする必要があります。


提言
世界がお母さんと子どもにとってよりやさしい場所となるための、セーブ・ザ・チルドレンの提言は以下のとおりです:

  1. 今年9月の国連総会で採択されるポスト2015年目標に、予防可能な子どもと妊産婦の死亡を衡平になくすための明確なコミットメントを含めるべきです。
  2. 格差是正に取り組むために、ポスト2015年目標に衡平性の原則を組み込み、誰一人取り残さないことを約束すべきです。
  3. 都市部の貧しい人々の健康を改善するために、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジを保障することが必要です。
  4. 全ての政府は「成長のための栄養」*3のコミットメントに従い、世界保健総会で定められた栄養ターゲットが達成できるようにしなければなりません。
  5. 包括的でセクター横断的な都市計画の策定が必要とされます。
  6. 不利な立場に置かれた層を特定しやすくする細分化されたデータ収集への投資が必要です。
  7. 貧しい都市部の予防可能な子どもの死亡をなくすための資金動員が必要です。

*3「成長のための栄養」:2013年6月にロンドンにて開催されたイベント。各国の開発援助担当閣僚や各援助機関の長、民間企業やNGOの代表が出席し、栄養分野への援助資金拠出・増額等のコミットメントがなされた。

母の日レポート2015 フルレポート(英語PDFファイル)
母の日レポート2015 概要和訳(日本語PDFファイル)

 

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