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アドボカシー
(公開日:2020.02.13)

報告書『子どもに対する戦争を止める2020:ジェンダーと紛争』を発表−紛争下に暮らす子どもたちが、性別の違いによって受ける影響が明らかに

 
2019年に創設100年を迎えたセーブ・ザ・チルドレンは、第一次世界大戦後、敵味方の分け隔てなく子どもたちを支援した創設者エグランタイン・ジェブの理念に立ち返り、昨年から、紛争下の子どもたちを守ることを訴えるグローバルキャンペーン「#この手で止める STOP THE WAR ON CHILDREN 紛争下の子どもを守ろう」を世界中で展開しています。


また、セーブ・ザ・チルドレンは、2018年から毎年2月に紛争下の子どもたちの状況についての報告書を発表しており、2020年2月に最新の報告書『子どもに対する戦争を止める2020:ジェンダーと紛争』を発表しました。この報告書では、紛争地域に住む子どもたちの安全とウェルビーイング(健やかな成長)が大きく脅かされていること、またジェンダーの違いによって紛争下で受ける暴力に差異があることが明らかになっています。

今、世界では、4億1,500万人の子どもたちが紛争地域に住んでいます。このうち、1億4,900万人の子どもたちが、紛争に関連する年間死者数が1,000人を超える「高強度紛争地域」に住んでいます。このような子どもたちは、アフリカ地域や中東地域に集中しています。

また、2018年だけで、少なくとも1万2,125人の子どもたちが、紛争に関連した暴力で死傷しており、これは前年比13%の増加であり、アフガニスタンが子どもにとって最も危険な国であることがわかりました。2018年の学校や病院への攻撃件数は、前年比32%増の1,892件となっています。

そして、紛争下で、子どもたちが性別の違いによってどのような影響を受けているのか、国連が定める武力紛争下の6つの重大な人権侵害*1ごとに分析。明らかになった次の内容を報告書で示しています。


・国連による調査で、性暴力の被害者の87%が女子であるのに対し、男子が1.5%であることが分かり、少女は、少年と比較して、レイプや児童婚、その他の形態の性虐待を受ける可能性がはるかに高い。また、ソマリアとコンゴ民主共和国が少女にとって最も危険な国であったと報告された。

・殺害・重傷件数の44%が男子、17%が女子に対するものであり、少年は殺害される、重傷を負う、誘拐される、強制的に兵士にされるといった暴力を受ける危険性が高い。さらに、思春期の男子は、同時期の女子よりも攻撃対象になることが多いため、戦闘で殺される可能性が圧倒的に高い。くわえて、2018年に武装勢力に誘拐された2,500 人以上の子どもたちの80%は少年だった。

・子どもの権利の侵害事例の報告メカニズム上、多様なジェンダー・アイデンティティの子どもの権利の侵害について理解し、それぞれのニーズに対応するのは非常に困難。


このように紛争下に生きる多くの男子、女子、そして多様なジェンダー・アイデンティティや年齢の子どもたちの個別のニーズに対応するために、各国政府や人道支援団体は、紛争下の子どもたちを守る活動を行う際に、子どもたちのジェンダーや年齢による違いを充分に考慮して行動を起こさなければなければなりません。

そして、国際社会、各国政府、武装グループをはじめとするあらゆる主要なステークホルダーに、紛争下の子どもたちをより確実に守るために、さらに尽力するよう求めます。特に、各国政府に以下の3つの分野で行動をおこすことを求めます。


・紛争下における国際的な行動基準を守ること

・暴力の加害者に対し、アカウンタビリティー*2 を果たさせること

・子どもを保護し、紛争の影響からの回復を支援するための具体的な行動をおこすこと


すべての政府と紛争当事者は、国際法の下での義務を順守すべきであり、また、加害者の責任を問わない限り、子どもたちの命は失われ続けます。紛争下の子どもを守り、彼らが将来のために歩み始められるよう、私たちは今すぐ行動を起こす必要があるのです。



「まだすべてを覚えています。だから悲しみが消えないのです。」
― イラクの難民キャンプで暮らす ダィアナさん (8歳)

報告書全文(英語)はこちら 
報告書の概要(日本語)はこちら 
STOP THE WAR ON CHILDREN−紛争下の子どもを守ろう− 特設サイト


*1 2005年以降国連は、紛争下における「6つの形態の子どもの権利の重大な侵害行為」を報告しています。6つの重大な権利侵害とは、1)子どもの殺害と傷害行為、2)子どもの軍への徴兵と利用、3)子どもに対する性的暴力、4)子どもの誘拐、5)学校や病院に対する攻撃、6)子どもに対する人道支援のアクセスの拒否、を指します。2018年、この侵害件数は過去最高となりました。
*2 アカウンタビリティー:「説明責任」と訳されることが多いですが、ここでは本来の意味である「説明する責任のみならず、結果生じた事象に対する責任をとること」を指しているため、そのままカタカナで表記しています。

 

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