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アドボカシー
(公開日:2019.12.11)

ウクライナ政府が賛同を示し、「学校保護宣言」の支持国は世界100ヶ国に

 
11月20日、ウクライナは世界で100ヶ国目の「学校保護宣言」の支持国となりました[i]。「学校保護宣言」は、学校を攻撃や軍事利用から守るために策定された国際的な指針です。「子どもの権利条約」採択30周年という記念すべき年に、ウクライナが生徒、教師、学校を紛争の壊滅的な被害から守ることを約束したのは非常に意義のあることです。


武力紛争下の教育施設に対する攻撃の世界的な状況は、現在、ますます深刻になっています。「攻撃から教育を守る世界連合(GCPEA)」の調査によると、世界で教育機関に対する攻撃が1万件近く報告されており、過去5年間だけで1万7,800人以上の生徒や教師が被害にあっています。

また、11月22日に発表されたGCPEAの最新レポートによると、女子校などを含む女子教育を標的とした攻撃が特に増加しています。紛争や人道危機下にある18ヶ国以上で、女子学生や教師が学校や通学路で直接的な攻撃の標的となっています[ii]。

世界各地で、子どもたちの目の前で他の子どもたちが殺され、サッカー場に爆弾が落とされ、学校や教科書が焼かれ、校舎が破壊されていることが報告されています。多くの子どもたちは、攻撃におびえ、学校に行くことをあきらめ、家にいることを余儀なくされている、と話しています。

今回のウクライナ政府による「学校保護宣言」の支持は、2015年からセーブ・ザ・チルドレンがGCPEAとともに働きかけてきた成果で、非常に歓迎すべきニュースです。 ウクライナでは、2014年の紛争開始以降、750を超える教育施設が被害を受けており、多くの子どもたちは学校に通うことに恐怖を感じ、学校内やその周辺にいる武装した兵士たちの存在にストレスを感じています[iii] 。

ウクライナ政府の管理下にある地域と、親ロシア派の支配地域との境界線近くに住む女子学生エカテリナさん次のように語っています。「銃撃戦の間、私は学校に行かず、家にいて、両親と一緒に地下室に行きました。学校は知識を得る場所です。そこが危険な場合、子どもたちは知識を得ることができず、家にいることしかできません。」


攻撃を受けたウクライナの学校

2019年に創設100年を迎えたセーブ・ザ・チルドレンは、今も世界の子どもたちの5人に1人が紛争下に暮らしている状況を受け、「Stop the War on Children(紛争下の子どもを守ろう)」というグローバルキャンペーンを行っています。

私たちは、紛争に巻き込まれているエカテリナさんのような子どもたちの安全が確保され、日常性を回復できるよう、「子どもたちの安全を確実に守ること」、「子どもの権利の侵害者に責任を果たさせ、公正さを確保すること」、「子どもたちに対する具体的な支援を行うこと」を世界のリーダーたちに求めています。

各国政府が、世界中の何百万人もの子どもたちに紛争の被害が及ぶことを避けようとするならば、その軍事行動において、紛争に関する国際的な法やルールを支持し、順守するのみならず、他国や非政府武装勢力に対しても順守を働きかける必要があります。

現在、国連加盟国の半数以上が、子どもたちに対する紛争を終わらせるための重要な一歩である「学校保護宣言」に賛同を示しており、実際に前向きな変化がもたらされています。GCPEAの最新データでは、学校と大学の軍事利用の報告は、2015年から2018年にかけ、12ヶ国で大幅に減少したと報告しています[?] 。

例えばアフガニスタンでは、「学校保護宣言」の賛同後、2016年に教育省が治安部隊を学校から撤退させるよう求め、その後、学校の軍事利用は大幅に減少しました。またソマリアでは、アフリカ連合平和維持ミッションが教育施設から撤退し、爆発型兵器の残骸の確実な排除を契機に教育施設の修復を開始しました。同様のケースは、カメルーンやナイジェリア、スーダンなどの国でも見られています。

第二次世界大戦の残虐行為への反省から、人類の尊厳を守るため、1949年にジュネーブ条約が誕生してから70年。「学校保護宣言」は、学校が一般市民のものであり続けること、また世界中の学校や子どもたち、教師たちの命を守ることに役立っています。

子どもたちや教師、教育施設が、子どもの権利の侵害者や子どもに暴力をふるう勢力からの脅威にさらされるなか、国際上の法やルールが私たちの世界の仕組みの基盤であることは今も変わりはありません。

「学校保護宣言」はそのようなルールの一つなのです。子どもたちには何の責任もない紛争に巻き込まれた何百万人もの子どもたちの安全、教育、未来を確保するために、この宣言が有効に機能することは明らかになっています。

[i] 2019年12月11日現在、セーシェル共和国が支持を示し、賛同国は101ヶ国となっています。
[ii] アフガニスタン、カメルーン、中央アフリカ共和国(CAR)、コロンビア、コンゴ民主共和国(コンゴ)、エジプト、インド、イラク、リビア、マリ、ミャンマー、ナイジェリア、パキスタン、フィリピン、南スーダン、シリア、ベネズエラ 、およびイエメン。
[iii]ウクライナ教育クラスターによる、『Attacks on education in Ukraine, Situation Report』(2019年9月9日)より。
[?] アフガニスタン、中央アフリカ共和国(CAR)、イラク、ケニア、レバノン、モザンビーク、ニジェール、ナイジェリア、パレスチナ、ソマリア、南スーダン、およびスーダン。この12ヶ国は、2015年に「学校保護宣言」への支持を示した国であり、学校の軍事利用を少なくとも1回以上経験した国々です。



 

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