今週（2021年）6月11日から開催されるG7サミット（主要7ヶ国首脳会議）に向けて、セーブ・ザ・チルドレンはG7が新型コロナウイルス感染症のワクチンの不平等を解消し、パンデミックを終息させるために拠出分担に応じた最大限の資金拠出を行うことを求めています。

新型コロナウイルス感染症は、世界的な公衆衛生上のかつてない危機となっています。このパンデミックにより、300万人以上の命が失われ、何百万人もの生活が破壊され、国内および国家間の不平等が拡大しました。子どもの権利の危機にもつながっています。ワクチンの開発と提供は、パンデミックの終息に希望の光を与えてくれます。しかし、それは世界の最貧国を含むあらゆる国々にワクチンが行きわたってこそ達成できます。今年のG7サミットでは、パンデミック終息に向けたあらゆる取り組みを加速させるための大胆な資金計画について、各国の首脳が合意する必要があります。



科学は驚異的な進歩を遂げましたが、国際協調の失敗により、その恩恵は低・中所得国に必要とされるペースで届かなくなっています。 G7のワクチン接種率が国によっては70%に近づいている一方で、サハラ以南アフリカの多くは接種率が未だ1％未満です。豊かな国々では、子どもたちにワクチンを接種し、ブースターを提供するかどうかが議論されています。また旅行者までもワクチンを受けることができる国もあります。しかしその一方で、開発途上国の医療従事者は、保護もない状態で最前線でパンデミックに立ち向かっています。

ワクチンへのアクセスの不平等は、疫学的には世界を自滅に向かわせます。ワクチンの接種率が低い国で新たな変異株が発生すれば、G7を含むすべての国の人々に脅威を与えることになります。「すべての人が安全になるまで、誰も安全ではない」という言葉は、空虚なスローガンではなく、科学的な事実なのです。

ワクチン接種のペースを世界的に速めることができなければ、G7の経済に甚大な被害がもたらされます。モデリング分析によると、低・中所得国のワクチン接種率の低さに伴う貿易やサプライチェーンの混乱は、G7各国に4,300億ドル（約47兆円）の収入減を含む1.3兆ドル（約142兆円）の損失をもたらします。

これらの損失を回避するために必要な投資は、それに比べるとわずかなものです。 新型コロナウイルス感染症の医療品の国際協調の枠組みであるACTアクセラレーターは、2021年末までにあと190億ドル（約2兆円）の資金を必要としています。さらに2022年末までに成人のワクチン接種を完了させるためには、COVAXファシリティを含むACTアクセラレーターに追加で470億ドル(約5兆1,000億円)の資金が必要とされ、2年間で合計660億ドル（約7兆2,000億円）の資金が必要となります。簡単な負担割合の計算¹ に基づくと、G7はその約3分の2にあたる430億(約4兆7,000億円)ドルを拠出する必要があります2 。

G7にはその投資の余裕はあるでしょうか。より重要な問題は、投資しない選択があるかどうかということです。私たちの分析によると、ACTアクセラレーターに1ドル（約109円）投資するごとに、G7は合計で35ドル（約3,800円）の経済的損失を回避し、GDPへの2％から3％の打撃を防ぐことができるという驚くべき数字が出ています。世界が一致団結してこの課題に取り組まなければ、経済回復は遅れ、雇用は奪われ、社会の苦難は限りなく増大します。ACTアクセラレーターへの支出は、保険として考えれば、高いリターンをもたらすものです。国民一人あたり週に0.80セント（約87円）の支出で、その30倍以上の損失を防ぐことができます。

こうした投資分析は、人道的・倫理的な行動の必要性を後押しするものです。ACTアクセラレーターに全額出資することで、人命を救い、不公平に対処し、経済的損失を防ぎ、同時にG7各国の市民をも守ることができます。当然ながら、ACTアクセラレーターは単独で復興につながるものではありません。G7は、より広範な援助の約束を果たすとともに、国際通貨基金（IMF）、世界銀行、地域開発銀行に対して、保健システム、特にプライマリーヘルスケアへの投資を拡大し、経済復興を図るために、その資金力を最大限に活用するよう指示すべきです。 


1 ACTアクセラレーターの運営評議会が開発した拠出負担モデルによる計算(英文）https://www.cgdev.org/blog/financing-global-health-security-fairly
2 詳細の政策概要はこちら(英文) https://resourcecentre.savethechildren.net/node/19116/pdf/financing_vaccination_with_equity_g7.pdf