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アドボカシー
(公開日:2021.12.16)

紛争地域に住む子どもたちの人数が過去10年で最大に―兵士として利用されるリスクも急増

 
セーブ・ザ・チルドレンは、紛争下の子どもたちが置かれた状況について調査分析した報告書『子どもに対する戦争を止める:兵士として利用される危機』を発表しました。

報告書によると、世界最悪とされる紛争地域に、2億人近くの子どもたちが住んでおり、その人数は過去10年以上で最多です。また、そうした子どもたちの多くは、すでに気候変動問題の影響を受けるリスクに晒されていることに加えて、前例のないレベルの食料不足に直面しています。

また、13ヶ国の凄惨な紛争下で生活する人の数は2020年に前年の1億6,200万人から20%近く増加し、2008年の2億800万人に次ぐ2番目に多い人数になりました。2020年の急激な増加は、国連が新型コロナウイルス感染症の世界的大流行に際し、世界に向けて停戦を呼びかけましたが、そうした呼びかけが紛争を止めるのに十分ではなかったことを示唆しています。

加えて、こうした急増は、モザンビークでの暴力や、現在も紛争が続くアフガニスタン、コンゴ民主共和国、ナイジェリア、イエメンなど、すでに気候変動問題の甚大な影響がおよび、かつ生命を脅かす深刻な食料不足に対処している地域などで起こっています。

本報告書では、3億3,700万人の子どもたちが子どもを兵士として利用する武装集団や軍が駐留する近くに住んでいることも明らかにしました。これは30年前の3倍(1990年には9,900万人)にあたります。子どもが兵士として利用されていることが確認された国の数は、世界の子どもたちの半数以上(約13億人)が暮らす39ヶ国に急増し、過去30年で最多を記録しました。

なかでもアフガニスタンやシリア、イエメン、フィリピン、イラクは、子どもたちを兵士として利用したことのある武装集団または軍の近くに住む子どもたちの割合が最も高く、子どもたちが利用されるリスクに晒されています。

この背景には、新型コロナウイルス感染症の影響により貧困や学校に通えない状況がさらに悪化していることがあげられます。兵士として利用された子どもたちは、最前線で戦闘の任務につかされたり、検問所での任務につかされたりするなど多岐にわたります。多くの子どもたちは、帰属意識、暴力から逃れること、復讐などを理由に、そうした組織に加わってしまいます。

2020年に国連が報告した時点では、兵士として利用された子どもたちのなかで、少女は15%のみとされていましたが、彼女たちはスパイとして行動したり、地雷や即席爆発装置を体に巻き付けたりするなどして自爆テロ犯として行動することがよくあります。彼女たちが抱える脆弱性や社会的立場、性別もまた、さまざまな暴力の影響を受けやすい状態をつくり出しています。

武装集団や軍によって利用されている子どもたちは、けがや障害、慢性的な精神的・肉体的苦痛、心的外傷後ストレス障害(PTSD)、性暴力、そして死亡するリスクが高くなります。

コンゴ民主共和国の武装集団に参加することを余儀なくされたジャンさん

コンゴ民主共和国の武装集団に参加することを余儀なくされたジャンさんは、当時の様子を次の通り話します。
「私たちが川で泳いでいたときに、森に無理やり連れ込まれました。彼らは私たちを拷問し、殴打し、人々を殺して誘拐する方法を教えました。多くの苦しみを味わってきました。森にいたとき、とてもいやな気持ちで、とても怖かったです。生きていくのが大変でした。」

セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長インゲル・アッシンは次のように訴えます。
「新型コロナウイルス感染症の流行により国連の世界的な停戦の呼びかけが行われているなか、これまで以上に多くの子どもたちが、すでに干ばつや洪水、極度の食料不足に直面している地域で、さらに紛争に巻き込まれているのは恐ろしいことです。 子どもたちは、負傷するリスクや、兵士として利用されたり、殺害されたりするリスクにも晒されています。新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行があっても、残忍な紛争と残虐行為を止めることはできませんでした。

数百万人の子どもたちは、恐ろしい影響や結果をもたらす紛争しか知らず、緊急支援やメンタルヘルスケアを利用できなかったり、通学もできていません。これは国際社会の恥ずべき点であり、この状態に対して対策を講じなければなりません。
新型コロナウイルス感染症のワクチン開発のように、私たちが協力して最大の課題に取り組むことで、目覚ましい進歩を遂げることができるはずです。紛争の恐怖から子どもたちを守るために、私たちは今こそ、一致団結する必要があります。」

報告書は以下のようなことを明らかにしました。
■世界中で4億5,000万人以上、6人に1人が紛争地域に住んでおり、2019年から5%増加し、過去20年間で最も多い人数になっている。2020年の紛争件数は2019年と同数だった。
■新型コロナウイルス感染症の世界的流行下で、子どもを兵士として利用する武装集団の数は2019年の85集団に比べて110集団まで増加した。
■国連によると、新型コロナウイルス感染症の世界的大流行下にもかかわらず、2020年に子どもが兵士として利用された件数は、約8,600件だった。これは1日あたり25人にあたり、前年比10%の増加となる。ただし、これらの数値は実際のごく一部にすぎない可能性がある。
■14の国と地域で活動する40人のセーブ・ザ・チルドレンのスタッフへのインタビューから、子どもたちの状況について以下のことが明らかとなった。
o多くの子どもたちは、メンタルヘルスに深刻な影響をおよぼす紛争しか知らない。
o紛争のなかを生きる子どもたちは、経済の弱体化や崩壊と基本的なサービスが利用できない事態に直面しているが、新型コロナウイルス感染症の影響でこれらの状況も悪化した。
o子どもたちに対し残虐行為をした者がその責任を問われることはほとんどない。
o多くの場合、紛争下で最初に影響を受けることのひとつである教育の機会を保障することは、強制的な兵士としての利用など紛争関連のリスクから子どもたちを守ることと同様に重要である。

セーブ・ザ・チルドレンは、各国の首脳や、安全保障の専門家、支援国、国連の各機関、NGOが協力して、加害者の責任を追及するほか、関連するすべての政策と法的枠組みが承認・施行されるよう呼びかけています。また、兵士として利用された子どもたちを含む紛争の影響を受けた子どもたちを支援するために、支援国と政府が人道支援において子どもの保護への資金拠出を優先することを求めます。

報告書全文(英語)はこちら
報告書概要(日本語)はこちら

 

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