アドボカシー(公開日:2017.09.15)
【東アフリカ干ばつ】自然災害時における教育支援の重要性
アフリカ東部の「アフリカの角」と呼ばれる地域に位置するエチオピア、ケニア、ソマリアの3ヶ国では、2016年10月以降、雨量が極端に少なく、干ばつが深刻化しています。同地域では2011年にも干ばつが発生し、その中でも特に被害が深刻であったソマリア南部・中部の干ばつの影響を受けた約26万人もの人々が亡くなりました。今回も約2,000万人が干ばつの影響を受けており、甚大な被害が出ています。食料や安全な水が不足しているため、下痢やコレラの感染に苦しむ子どもが多く、栄養不良の子どもも増え続けています。さらに、干ばつは子どもの健康に悪影響を与えるだけでなく、学校に通うことができなくなってしまう子どもたちも多くいます。
家畜と移動する家族(エチオピア)
例えば、ソマリアのある地域では、干ばつの影響により牧畜を営む家族が居住地を移動せざるを得ず、学校に通っていた子どもの6割が退学を余儀なくされました。また、安全な飲み水が確保できないことが原因で閉鎖を余儀なくされた学校もあります。セーブ・ザ・チルドレンが支援する学校では、居住地の移動や、家畜やきょうだいの世話といったことが理由で欠席率が高くなっています。
セーブ・ザ・チルドレンは、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)などの支援機関と共同で、2017年8月21日に、『「アフリカの角」に対する行動要請−エチオピア、ケニア、ソマリアでの人道支援における教育資金の全額拠出−(仮訳)』(英語) を発表しました。
本要請では、「アフリカの角」の干ばつに対し、27億米ドルの支援が必要とされているにも関わらず、8月時点において9億7,000万米ドルしか拠出されておらず、教育分野への拠出はそのうち1650万米ドルのみであることが明らかにされています。これは、拠出額全体のわずか1.7%にしかあたりません。2012年に国連事務総長が立ち上げた「教育を最優先するグローバル・イニシアティブ(Global Education First Initiative)」において、人道支援の予算のうち4%を教育分野の支援に拠出すべきであると提唱されたことを鑑みれば、教育分野への拠出が明らかに少ないことが分かります。
このような状況を受け、この「行動要請」では、国際社会に対して以下を訴えています。
・国際社会のドナーおよび政策立案者は、「アフリカの角」における干ばつ支援における教育支援に必要とされる資金の全額を拠出すること
・人道支援に携わるさまざまなアクターは、干ばつ支援と緊急支援を提供する安全な場として、学校や学習スペースを活用すること
・干ばつの影響を受けている国の政府は、干ばつにより避難を余儀なくされている子どもと若者が、どこに避難していようとも教育を受けられるよう保証すること
セーブ・ザ・チルドレンが2015年に発行した報告書において、教育の機会が欠如すると、将来、貧困に陥りやすくなったり、児童労働や性的虐待、早婚の増加につながったりすることが明らかになっています*1。一方、干ばつの影響を受ける子どもたちが学校に行くことができれば、子どもたちは、そこで食料や飲料水、子どもたちを病気から守るための衛生習慣に関する情報を得ることができ、干ばつの影響から子どもを直接守ることも可能になります。
さらに、上述の報告書において、紛争や災害など現在世界で発生している17の人道危機下に置かれた子どもたちを対象にした調査をまとめた結果、子ども8,749人のうち99%が紛争や災害といった緊急下にあっても、教育を優先事項と考えていることが明らかになっています*1。子どもたちは、教育が受けられなければ自分たちが社会で取り残されると思い、不安に感じます。学校にいれば、安全で守られていると感じ、将来に希望を持つことができます。人道支援において、教育は直接人命にかかわらないという理由で軽視されがちですが、これらの子どもの意見も反映されることが重要です。
今回発表された要請が実行され、教育への十分な投資がなされれば、子どもたちの命を救うだけでなく、将来への対応力(レジリエンス)を高めることもできます。
セーブ・ザ・チルドレンは今後も、「アフリカの角」における干ばつ支援をはじめ、紛争や災害といった緊急下の子どもへの教育支援の重要性を訴えるとともに、子どもたちへの支援活動を実施していきます。
セーブ・ザ・チルドレンが支援する学校に通う子どもたち(ケニア・ワジール郡)
*1緊急下の教育に関するセーブ・ザ・チルドレンの報告書 (英語)
http://www.savethechildren.org.uk/resources/online-library/what-do-children-want-times-crisis%3F