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アドボカシー
(公開日:2024.02.26)

【パンデミック条約】パンデミックの予防・備え・対応のための衡平で強靭な仕組みづくりに向けて

 

20245月の第77回世界保健総会で、「パンデミック条約」が採択されようとしています。パンデミック条約とは、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のパンデミック(世界的大流行)を受け、今後の予防・備え・対応を強化していくための新たな国際協調の仕組み、そして規範となる法的文書です。

 

COVID-19のパンデミックは、世界中で多くの人命を奪い、社会全体を混乱に陥れ、とりわけ脆弱な立場に置かれた人々の保健医療サービス利用における格差を浮き彫りにしました。将来、こうしたパンデミック危機の再発を予防し、それに対応するために、政府や地域社会、あらゆるステークホルダーがより万全の備えを行うことは、すべての子どもの健康への権利の実現にとっても重要です。

 

パンデミック条約の国際的な合意に向けて、20222月以降、これまで7回の政府間交渉会議を中心に、議論が行われてきました[i]。日本政府は、西太平洋地域の代表としてこの政府間交渉会議の共同副議長/進行役を務めるとともに、建設的に交渉プロセスに貢献し、「国際的な規範や規則の強化が必要」であり、その上で「可能な限り多くの国が合意できるよう普遍性を確保することが重要」であるとの立場・方針を表明しています[ii]

 

セーブ・ザ・チルドレンは、パンデミック条約の意義を、パンデミック予防・準備・対応のための国際協調の仕組みとしてとらえ、この交渉プロセスを注視するとともに、2つの政策概要を発表し、パンデミック条約が子どもたちの健康への権利を実現するための重要な機会となるよう訴えてきました

 

英国ユニセフ協会との共同執筆によるパンデミック条約レジリエントな保健システムを構築し、子どもたちの健康への権利を実現するための重要な機会では、強靭な保健システムを構築し、子どもたちの健康への権利を実現するために重視されるべきこととして、(1)保健システムの強靭性とキャパシティ、(2)保健医療人材、(3)コミュニティの参加とガバナンス、(4)資金調達の4点をあげ、子どもたちの健康安全保障を確立するための必須保健医療サービスの提供、それを支える保健医療に従事する人材の強化や資金調達の重要性を提言しています[iii]

 

また、英国のNGOストップ・エイズとの共同執筆によるパンデミックはコミュニティで始まり、コミュニティで終わるパンデミック条約のガバナンスへの市民社会の参加が重要な理由では、最も貧しく、最も脆弱な立場に置かれたコミュニティやグループの多様なニーズをパンデミック条約の根幹に据えるためには、条約の起草から交渉、意思決定、モニタリング、そして条約の順守の確認といったあらゆるプロセスに市民社会が参画することが重要であると提言しています。


さらに、条約の信頼性と正当性が構築されることで、健康危機における予防・備え・対応のための政策がより多くの人々に受け入れられ、条約が各国により批准され、施行される可能性が高まることを示しています[iv]

 

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは、国内のグローバルヘルス市民社会ネットワークと連携し、政府間交渉会議を経て作成された条約のドラフトに対する提言や、関係者との対話を行ってきました。


セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンが共同事務局・幹事を務めるグローバルヘルス市民社会ネットワークは、パンデミック条約交渉に関わる正式なステークホルダー(Annex E団体)として、交渉プロセスにおいて提案や問題提起をすることが認められています。


20229月には、すべての人々の人権が守られる「誰ひとり取り残さない原則」や、強靭な保健システムの確立の重要性を訴える動画を公聴会に提出したほか、202311月には、書面にて、公正な医薬品アクセスの確保や、病原体情報へのアクセスとそれによる医薬品開発の利益配分について、より積極的な措置がとられることなどを求めました。

 


さらに、202310月には、グローバルヘルス市民社会ネットワークの主催により、外務省、厚生労働省、在ジュネーブ国際機関日本政府代表部の担当者を招いて、「パンデミック条約策定・国際保健規則改正交渉の現状と課題」について議論する勉強会を開催しました。


セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンからは、パンデミック条約が予防・備え・対応において効果的で衡平かつ人権の原則に基づく枠組みとなるためには、コミュニティや市民社会の声や視点の反映が不可欠であることを改めて強調するとともに、国際社会は、パンデミックの壊滅的な影響からすべての人たちの人権、健康への権利を守るパンデミック条約を、国際的な連帯に基づき実現しなければならないというメッセージを発信しました。

 

こうした提言の一部は、日本政府のパンデミック条約交渉関係者にも受け止められ、202311月の第7回政府間交渉会議の公式な発言の場では、市民社会が対話に参加することの必要性が日本政府より言及されました。


パンデミック条約の合意に向けた政府間交渉は、残すところ2月と3月の2回となりました。セーブ・ザ・チルドレンは、パンデミック条約が衡平かつ効果的な国際規範となり、すべての子どもの健康への権利の実現につながるよう、世界の市民社会と共に提言活動を続けていきます。










 

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