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グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)のエチオピア調査事例より」

アドボカシー
(公開日:2023.12.08)

【勉強会を開催】「UHC達成に向けた保健財政支援のあり方を考える:
グローバル・ファイナンシング・ファシリティ(GFF)のエチオピア調査事例より」

 

119日、GII/IDI懇談会グローバルヘルス市民社会ネットワーク「コロナ意見交換会」の主催により、「女性・子ども・青少年のためのグローバル・ファインナンシング・ファシリティ(GFF)」が保健システムと保健財政強化において果たす役割について勉強会が開催され、セーブ・ザ・チルドレンと日本国際交流センター(JCIE)がエチオピアの調査や聞き取りによる事例をもとに報告を行いました。

 

脆弱な立場に置かれた世界の人口の約半数の人たちが、最低限の保健医療サービスを利用できておらず、予防可能な理由により命を落としていますが、そうした背景には女性・子ども・青少年の健康に対する深刻な資金不足があります。

 

GFFは、2015年、当時の国連事務総長により発表された「女性・子ども・青少年の健康のためのグローバル戦略(Global Strategy for Women’s, Children’s and Adolescents’ Health(2016-2030)」を推進するために、世界銀行内に設立された資金調達プラットフォームです。主に保健システムの強化や保健財政改革を通して母子・青少年の健康と栄養(RMNCAH-N)およびリプロダクティブ・ヘルス(性と生殖に関する健康)を改善することを目指しています。


 セーブ・ザ・チルドレンは、20233月にエチオピアで事例調査を実施し、GFFのモデルと、政府に対して行っている幅広い支援内容について明らかにしました。マルチステークホルダー・プラットフォームを中心とする国主導のアプローチの推進、保健財政に関する技術支援、GFFの国家予算に対する助成による予算規模の拡大、またIDAなどの外部資金の動員によるレバレッジ効果、成果連動型拠出によるパフォーマンスの向上などにより、エチオピア政府の能力向上に貢献していることを報告しました。

 

続いて、JCIEからは、エチオピア政府関係者への聞き取り結果が報告されました。「ひとつの計画、ひとつの予算、ひとつの報告書(One Plan, One Budget, and One Report)」の原則に基づき、国内外のすべてのステークホルダーが保健政策や優先課題設定の立案と実施に参画するプロセスであるアラインメントについて、支援の非効率性の改善や、援助の有効性の向上、アカウンタビリティ(説明責任)の向上につながっていることが報告されました。

 

続いて、財務省より、それぞれの報告に対するコメントがありました。外からは見えづらいGFFの役割について、国主導のアプローチを以て、保健システム強化により包括的に取り組んでいることを評価しているとの話がありました。また、保健財政の強化において、財務省と保健省の連携を推進し、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ(UHC)達成に向けた基盤を築き、保健分野の資金不足の中、触媒効果を持ちながら、カタリストとして投資の最大化に貢献していることへの評価も示されました。

 

外務省からは、現在国際的に検討が進められているFuture of Global Health InitiativesFGHI)のプロセスについて紹介がありました。これは、GFFを含む多様なグローバルヘルス・イニシアティブ(GHI)をどのように形成し、調整を図りながら相乗効果を発揮していくかについて、ノルウェーおよびケニアのイニシアティブによって始まったプロセスで、これまでの議論で出てきている課題や、GHIの効果として確認されている点について、報告がありました。

 

国際協力機構(JICA)からは、より多くの開発途上国が国際的な無償資金による協力からの卒業を求められていく中で、譲許的な借款による援助に移行していく可能性や、各国への協力においてGFFとの連携を検討していること、またGFFの投資グループのメンバーとして、現場での経験に基づき、GFFの戦略に対しインプットを行っていることなどが共有されました。

 

最後に主催者代表より、勉強会の総括が行われました。これまで保健セクターにおける援助効果についてさまざまな議論が行われてきた中で、今後は多国間援助の保健資金のあり方が問われていくことや、GFFを含むFGHIの議論が活性化されていくにあたり、現場レベルで活動するNGOも注目していく必要があること、さらに周縁化された人々に対する保健アクセスの観点にも留意しながら、変化に対応していく必要があるとまとめました。

 

勉強会を通して、GFFモデルの有用性や課題について理解を深めるとともに、GFFのこれまでの経験の共有が、今後のGHIのあり方に関する議論にもつながるという認識を醸成することができました。

 

セーブ・ザ・チルドレンは、保健財政の強化を通した衡平で持続可能でレジリエントな保健システムの構築に向けて、今後ますます注目されるGHIの動きを注視しながら、引き続き議論に参加していきます。

セーブ・ザ・チルドレンのGFFエチオピア調査報告書は、こちらをご参照ください。

(アドボカシー部 島村由香)



 

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