アドボカシー(公開日:2020.11.16)
紛争などの人道危機下にある子どもたちは現在も守られていない―報告書『Still Unprotected』を発表
セーブ・ザ・チルドレンを含む国際支援団体4団体*は、2019年における人道支援計画や資金拠出の実績を調査し報告書『Still Unprotected』を発表しました。報告書では、子どもたちを暴力や虐待、搾取から守るための取り組みや安全・安心な環境づくりなどをする活動(子どもの保護)に対する資金拠出がいまだ慢性的に不足している実態を明らかにしました。
また、個別の支援計画を見ると、子どもの保護への資金拠出の割合には大きなばらつきがあることがわかりました。必要とされる金額がほぼ拠出されたケースもありますが、14%しか拠出されないケースも見られました。加えて、同じ支援計画内であっても年ごとに拠出率は大幅に上下するため、将来の予測が立てにくく、事業計画の立案を困難にしています。例えば、シリア周辺地域・難民・回復計画(3RP:the Regional Refugee and Resilience Plan)では、イラクでの子どもの保護の活動に対して2017年に40%の資金拠出がありましたが、それが2018年には63%に増加し、その後2019年には3.7%にまで落ち込みました。
シリア・イドリブ県北部にある国内避難民キャンプに暮らすマヘルさん(2歳)
さらに、支援を必要とする子どもたちの一部しか支援対象としていない場合が多く、子どもの保護のための資金計画が実際のニーズに合っていないことも課題です。例えば、中央アフリカ共和国においては保護を必要とする子どもたちのわずか4%、コンゴ民主共和国では8%の子どもたちしか支援対象とされていませんでした。
また、『人道行動における子どもの保護の最低基準』を満たす質の高い支援活動に必要なコストが、資金計画に反映されていない場合もあります。結果として、子ども1人に充てられる資金は、『人道行動における子どもの保護の最低基準』を満たすために必要な金額からはほど遠いものになっています。具体的には、2019年にマリ、スーダン、イエメン、ナイジェリアで支援対象の子どもたちに充当されたのは、1人当たり6米ドル(約630円)未満でした。
報告書は、子どもの保護を紛争をはじめとする危機下における人道支援の中心に据えることを訴えるとともに、支援国に対して主に以下のことを求めています:
・特に資金が不足する国々に対するものを含め、人道支援に対する資金拠出を増やすこと。
・人道支援計画のあらゆる分野において、子どもの保護に対する資金計画に対して全額を拠出すること。少なくとも、子どもの保護が他の分野と同様のレベルで資金拠出されるようにすること。
・資金計画が『人道行動における子どもの保護の最低基準』を理解し、遵守する内容であるよう求め、そのために必要なコストが計上されていることを確認し、そのコストをカバーしうる資金拠出を行うこと。
・安定した事業計画立案を可能にする、予測可能かつ複数年にわたる資金拠出に移行していくこと。
・人道危機下においては特に地域の支援従事者に資金を提供し、地域の能力強化のために資金拠出を行うこと。
新型コロナウイルス感染症が最も脆弱な人々にさらなる影響を与え、紛争などの人道危機下にある子どもたちのリスクを増大させている今、子どもの保護を人道危機支援の中核とすることが一層重要となっています。
報告書全文(英語)はこちら
グローバル・キャンペーン「STOP THE WAR ON CHILDREN(SWOC)紛争下の子どもを守ろう」についてはこちら
*セーブ・ザ・チルドレン、人道行動における子どもの保護のためのアライアンス、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、Child Protection Area of Responsibility
2019年の人道支援計画19件を調査したところ、計画に基づき算出された支援に必要な資金のうち、子どもの保護に関するものはわずか2%に過ぎなかったこと、また、計画の時点で子どもの保護に充当される資金がこれほどまでに少ない割合にもかかわらず、実際の資金拠出についても計画の半分以下(47%)しか拠出がなされていないことが明らかになりました。
また、個別の支援計画を見ると、子どもの保護への資金拠出の割合には大きなばらつきがあることがわかりました。必要とされる金額がほぼ拠出されたケースもありますが、14%しか拠出されないケースも見られました。加えて、同じ支援計画内であっても年ごとに拠出率は大幅に上下するため、将来の予測が立てにくく、事業計画の立案を困難にしています。例えば、シリア周辺地域・難民・回復計画(3RP:the Regional Refugee and Resilience Plan)では、イラクでの子どもの保護の活動に対して2017年に40%の資金拠出がありましたが、それが2018年には63%に増加し、その後2019年には3.7%にまで落ち込みました。
シリア・イドリブ県北部にある国内避難民キャンプに暮らすマヘルさん(2歳)
さらに、支援を必要とする子どもたちの一部しか支援対象としていない場合が多く、子どもの保護のための資金計画が実際のニーズに合っていないことも課題です。例えば、中央アフリカ共和国においては保護を必要とする子どもたちのわずか4%、コンゴ民主共和国では8%の子どもたちしか支援対象とされていませんでした。
また、『人道行動における子どもの保護の最低基準』を満たす質の高い支援活動に必要なコストが、資金計画に反映されていない場合もあります。結果として、子ども1人に充てられる資金は、『人道行動における子どもの保護の最低基準』を満たすために必要な金額からはほど遠いものになっています。具体的には、2019年にマリ、スーダン、イエメン、ナイジェリアで支援対象の子どもたちに充当されたのは、1人当たり6米ドル(約630円)未満でした。
報告書は、子どもの保護を紛争をはじめとする危機下における人道支援の中心に据えることを訴えるとともに、支援国に対して主に以下のことを求めています:
・特に資金が不足する国々に対するものを含め、人道支援に対する資金拠出を増やすこと。
・人道支援計画のあらゆる分野において、子どもの保護に対する資金計画に対して全額を拠出すること。少なくとも、子どもの保護が他の分野と同様のレベルで資金拠出されるようにすること。
・資金計画が『人道行動における子どもの保護の最低基準』を理解し、遵守する内容であるよう求め、そのために必要なコストが計上されていることを確認し、そのコストをカバーしうる資金拠出を行うこと。
・安定した事業計画立案を可能にする、予測可能かつ複数年にわたる資金拠出に移行していくこと。
・人道危機下においては特に地域の支援従事者に資金を提供し、地域の能力強化のために資金拠出を行うこと。
新型コロナウイルス感染症が最も脆弱な人々にさらなる影響を与え、紛争などの人道危機下にある子どもたちのリスクを増大させている今、子どもの保護を人道危機支援の中核とすることが一層重要となっています。
報告書全文(英語)はこちら
グローバル・キャンペーン「STOP THE WAR ON CHILDREN(SWOC)紛争下の子どもを守ろう」についてはこちら
*セーブ・ザ・チルドレン、人道行動における子どもの保護のためのアライアンス、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)、Child Protection Area of Responsibility