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アドボカシー
(公開日:2021.02.18)

紛争下の子ども6人に1人が武装勢力による性暴力のリスク

 
セーブ・ザ・チルドレンは紛争下の子どもたち関する最新の報告書『戦争の武器:紛争下の子どもへの性暴力(Weapon of War: Sexual violence against children in conflict)』を発表しました。


英語(全文)はこちら



報告書では、紛争下に暮らす子ども4億2,600万人の6人に1人にあたる7,200万人の子どもたちが、子どもへの性暴力を行った武装勢力がいる周辺地域で生活していることが明らかになっています。また、1990年から2019年までの紛争下に暮らす子どもたちへの性暴力のリスクを分析した結果、現在1990年(850万人)の約10倍近くの子どもたちが性暴力のリスクに晒されていることも示しています。

紛争下の地域で、子どもが性暴力の被害に遭う危険が最も高い国は、コロンビア、イラク、ソマリア、南スーダン、シリア、イエメンです*。ここで指摘する性暴力とは、武装集団や政府軍、法執行機関によるレイプや性奴隷、売春の強制、強制妊娠、強制不妊手術、強制中絶、性器切除、性的虐待、性的拷問などが含まれています。

性暴力の被害に遭った子どもたちは、さまざまな困難や問題に直面していますが、それらは紛争下でさらに複雑になっています。例えば、犯罪を訴える制度やプロセスの欠如、スティグマ、報復への恐怖、さまざまな支援の欠如などがあります。

国連の「子どもと武力紛争に関する報告書」では、子どもに対する6つの形態の重大な人権侵害行為が報告されており、2006年以降、紛争に関連した2万件以上の子どもに対する性暴力が確認されています。また、2019年だけでも749件の子どもに対する性暴力が確認されており、そのうち98%が少女に対するものでした。そして、政府軍による件数は2018年の2倍近くに増加しています。しかし、今回発表されたセーブ・ザ・チルドレンの報告により、国連により確認されたこれらの事例は、実際の事例のごく一部であることが分かります。

報告書では次のことが明らかになっています。

  • •過去7年間に紛争下で性暴力を行った武装勢力の多くが、子どもも標的にしている。
  • •世界で起こっている54の紛争のうち22の紛争で民間人に対する性暴力が報告されており、うち15の紛争で武装勢力が子どもに対して性暴力を行ったと明確に報告されている。
  • •2019年に国連が報告した性暴力の事例のうち被害に遭った少年の割合は2%だったが、中央アフリカ共和国やコンゴ民主共和国、南スーダン、シリアの紛争では、過去数年間、戦略的に標的にされてきた。アフガニスタンでは、2019年に報告されたほとんどの事例で少年が被害に遭っており、彼らはしばしば権力のある男性によって搾取され、奴隷にされている。


セーブ・ザ・チルドレン・インターナショナル事務局長インゲル・アッシンは次のように訴えます。
「性暴力は、平時であっても実態よりも少なく報告されており、紛争下の地域ではなおさら報告は少なくなります。そして、特に子どもに対するこうした暴力の報告件数は実態とかけ離れています。事実、紛争地域で暮らす子どもたちに対する性暴力は、2019年には平均して毎日2件しか報告されていません。しかし、私たちは、レイプやその他の形態の暴力が紛争下の子どもたちに対してますます用いられるようになっていることを分かっており、この平均2件という数値は氷山の一角に過ぎないと考えています。私たちの知らないところで性暴力の被害に遭っている子どもたちはもっと多く存在しており、彼らは緊急の支援を必要としています。子どもに対するあらゆる性暴力は極めて残忍であり、今すぐ終わらせなければなりません。
政府軍による子どもへの性的な残虐行為が2018年から2019年にかけてほぼ倍増したという事実は恥ずべきことです。政府と軍は、子どもを含む紛争下で最も脆弱な立場に置かれた人たちを守るために、必要な措置を講じなければなりません。戦争の武器としての性暴力の使用は嫌悪すべきものであり、国際社会はこうした残虐な行為を受けた人たちに必要な支援を十分に行い、この重大な人権侵害を根絶するために団結しなければなりません。」

性暴力は、子どもを含む民間人を恐怖に陥れたり、政治的軍事的利益のために恐怖や脅迫を広めたり、民族を浄化したり、特定の民族に屈辱を与えたり、反対勢力への支援を疑われた民間人を罰するために、戦争の武器として使われることが多くあります。

性暴力による精神的苦痛は、身体的、心理的、社会的、経済的に長期的な影響を及ぼす可能性があります。そして、身体に対する残虐な行為そのものが、身体が完全に発達していない子どもたちに特に悪影響を及ぼします。少女の場合、子宮脱や産科フィスチュラ(瘻孔)、その他生殖器系の損傷のリスクや、早期妊娠や安全でない中絶による合併症の発症や死亡のリスクもあります。加えて、少女も少年も、泌尿器や肛門の損傷や性感染症にかかるリスクがあり、治療を受けずに放置しておくと、長期的に身体へ害を及ぼしたり死亡したりすることもあります。

2018年ノーベル平和賞受賞者でありコンゴ民主共和国にあるパンジ病院の設立者であるデニ・ムクウェゲ医師は、次のように話します。
「私は1999年にコンゴ民主共和国に妊産婦のための中核的な病院をつくるつもりでパンジ病院を開院しました。まさか最初の患者の中に、陣痛に苦しむ母親や新生児ではなく、レイプされた乳幼児がいるとは想像もしていませんでした。私が治療した最年少の子どもは、彼女が暴行を受けたとき、わずか生後6ヶ月でした。いま、世界で7,200万人以上の子どもたちが、未成年者に対して性暴力をふるう武装勢力の近くで生活していることは、絶対に容認できません。国際社会は、これまで以上に行動を起こさなければなりません。」

セーブ・ザ・チルドレンは世界各国の首脳やリーダー、安全保障の専門家、ドナー国、国連加盟国、NGOに対して次のことを求めます。

    • •紛争下の性暴力に反対する国際的な行動の中心に子どもたちを据え、子ども特有のニーズを認識し、それに応える体制やサービス、プログラムなどを強化すること
    • •子どもに対する性暴力の責任が問われるような法律の強化と法の執行により、加害者に責任を負わせること
    • •紛争下の子どもに対する性暴力に関するデータ収集のための連携を強化、改善すること


*アルファベット順に掲載しています(Colombia, Iraq, Somalia, South Sudan, Syria, and Yemen)


Notes:
•To estimate the number of children in conflict at risk of sexual violence, Save the Children, in cooperation with the Peace Research Institute Oslo (PRIO), has calculated how many children live 50km or closer to conflicts where at least one armed group or force has perpetrated sexual violence against children in a given year.
•Unlike UN reports, which cover a limited number of conflicts, this provides an estimate for the number of children at risk in all armed conflicts around the world.
•Save the Children and PRIO use Sexual Violence in Armed Conflict (SVAC) Dataset based on reports by Amnesty International, Human Rights Watch, and the US State Department, as well as subnational data on conflict events from the Uppsala Conflict Data Program Georeferenced Event Dataset (UCDP-GED), and population estimates from the UN Population Prospects. The data gathered covers the period of 30 years, from 1990 to 2019.

 

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