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アドボカシー
(公開日:2021.09.27)

【気候危機】子どもたちが直面する気候変動問題−森林火災・洪水・ 干ばつ−報告書『気候危機の中に生まれて』発表

 
セーブ・ザ・チルドレンは、ブリュッセル自由大学(the Vrije Universiteit Brussel:VUB)を中心とした気候研究者の国際チームと共同で、報告書『気候危機の中に生まれて:子どもの権利を守るために、なぜいま行動を起こさなければならないのか(Born into the Climate Crisis: Why we must act now to secure children’s rights)』を発表しました。この研究結果は、科学誌「サイエンス」にも掲載されています。


セーブ・ザ・チルドレンはこの報告書で、1960年に生まれた人と比較して、2020年に生まれた子どもたちが、さまざまな異常気象をはじめとする気候関連の危機に生涯にわたって晒されることを示しています。

たとえば、2020年に生まれた子どもたちは、生涯にわたって、平均して祖父母の世代の7倍の熱波に直面することが予測されます[1]。また、今すぐに行動を起こさなければ、気候危機が子どもたちに及ぼす壊滅的な影響についても訴えています。

そして、気候変動問題が子どもたちの生活にどのような影響を与えているかについて、11ヶ国の子どもたちの声を紹介するとともに、気候変動問題に対処するための提言も行っています。

2015年に採択されたパリ協定の排出削減目標に基づくと、世界の気温は産業革命前の水準よりも2.6度から3.1度上昇すると予測され、子どもたちにとって深刻な影響を及ぼすことが懸念されます。この結果、2020年に生まれた子どもたちは、1960年に生まれた人と比べて、平均して2倍の森林火災、2.8倍の農作物の不作、2.6倍の干ばつ、2.8倍の河川の氾濫、6.8倍の熱波に直面することになります。

アフガニスタンでは、子どもたちは年長者の世代よりも最大18倍も熱波に晒される可能性があります。また、マリに暮らす子どもたちは、祖父母の世代と比較して最大10倍の農作物の不作に直面する恐れがあります。

なかには、複数の自然災害を同時に、あるいは連続して受け、さらに深刻な影響を受ける子どもたちもいるでしょう。

さらに、低・中所得国や社会の中で周縁化されたコミュニティに住む子どもたちは、水系感染症や極度の食料不足、栄養不良に陥るなどのリスクがはるかに高く、また、洪水やサイクロンなどの異常気象の影響を受けやすい地域に暮らしていることが多いため、最も多くの影響を受けます。

このような気候変動の影響は、数百万人の子どもたちを長期的な貧困に陥れる危険性があり、飢餓や発育阻害を終わらせるための数十年にわたるこれまでの進歩を後退させてしまう恐れがあります。

その一方で、この先行きの暗い未来を変えるにはまだ時間があります。温暖化を1.5度に抑えることができれば、子どもたちがその生涯において直面する猛暑の割合は45%、干ばつは39%、洪水は38%、農作物の不作は28%、森林火災は10%減少します。

報告書で明らかになった点は次のとおりです。
  • •気候変動問題の影響により、子どもたちの保健医療サービスの利用や教育の機会が妨げられます。特に、少女や難民、障害のある子どもたち、先住民族の子どもたちなど、すでに不利な状況に置かれている子どもたちにはさらに大きな影響が及びます。たとえば、パキスタンでは2010年の洪水が起こった後、6年生に在籍していた少女のうち24%が退学したのに対し、男子は6%でした[2]
  • •北米や西ヨーロッパの子どもたちは、農作物の不作に直面する可能性はより低いと見られますが、サハラ以南アフリカで生まれた子どもたちは、年長の世代に比べて2.6倍、中東・北アフリカの子どもたちは最大で4.4倍の農作物の不作に見舞われることになります。


気候危機に対して各地から届いた子どもたちの声を紹介します。
バングラデシュ南東部ロヒンギャ難民キャンプは、ここ数ヶ月間に何度も洪水に見舞われています。父親を亡くしこの難民キャンプで母親と避難生活を送るアスラムさん(8歳)は、洪水により腰まで浸水し、食料をすべて失い、高台に逃げなければなりませんでした。住居に戻りましたが、床がぬれていて泥だらけだったため料理もできず、寝ることもできませんでした。


アスラムさん(8歳)

アスラムさんは、次の通り話します。
「洪水が自宅に浸水してきたとき、丘の上に避難しました。食料や衣類などすべて水浸しになり、床がぬれていたため自宅に戻ることはできませんでした。もし家を建てなおすことができれば、またもとのように家で暮らせます。炊事をすることもできないため、いまは食料を配る場所で食べ物を受け取り、毎日の食事をしています。」

フィリピンに暮らすチャッタンさん(16歳)は、8歳のときに台風「ハイエン」により家屋が倒壊しました。2013年に発生したこの台風は、同国に壊滅的な影響を及ぼしました。チャッタンさんはこのときの経験から気候変動問題の活動家になることに決め、現在セーブ・ザ・チルドレンと一緒に活動しています。
チャッタンさんは、次の通り訴えます。
「気候変動の影響をこの目で見てきました。台風「ハイエン」は、私が暮らす地域で数千棟の家屋を倒壊し、多くの友人や親せき、同級生なども家を失いました。台風がくる以前からこの地域では多くの気候関連の災害が発生していましたが、年々悪化しています。近年では、干ばつや猛暑、大雨による地滑りなどが起こっています。本来晴れるはずの月に雨が降り、雨が降るはずの月が晴れになっています。現在生まれている子どもたちが、その祖父母の世代よりもさらに多くのサイクロンや猛暑などの災害を経験しながら生きていくと考えると、悲しくなります。子どもは気候危機へ最も影響を与えていないにも関わらず、最も被害を受けるのは、私たちなのです。」

チリに暮らすローラさん(16歳)は、「私たちは、自分たちの役割を果たし仲間の意識を高め、大人にもこの問題を認識し意識してもらうようにします。私たちだけでは達成することができません。一緒に考え活動することと、大人からの真のサポートが必要であり、特に意思決定者からのサポートが必要です」と述べています。

セーブ・ザ・チルドレンは、気候変動問題に対する行動は、道義的責任のみならず、各国政府が子どもたちの最善の利益のために行動するという法的義務でもあると考えています。

しかし、この問題が子どもたちの生活に最も影響を及ぼし、今後数十年にもわたって影響が続くにもかかわらず、子どもたちはこの問題に対する重要な決定への参加が保障されていません。

気候変動問題に関するさまざまな決定においては、特に格差や差別の影響を受けている子どもたちが重要な役割を果たす必要があります。各国政府は、子どもたちの声に耳を傾けるだけでなく、彼らの提言に基づいて行動する必要があります。

さらに、私たちは、気候変動が数百万人の子どもたちの生活に及ぼす影響を食い止めるために、化石燃料の使用を速やかに中止するなど地球温暖化を1.5度に抑えることや、子どもたちやコミュニティが気候危機に適応するための気候変動問題対策への資金拠出を増やすこと、子どもたちの声や要求、権利を気候変動問題対策の中心に据えること、気候危機により生活が脅かされている子どもやその家族のためのセーフティーネットに投資することなどを要請します。

■報告書の概要(日本語)はこちら
■報告書全文(英語)はこちら


[1] Research compared children born in 2020 to people born in 1960
[2] Women, girls and disasters – A Review for DFID. Available from https://gsdrc.org/document-library/women-girls-and-disasters-a-review-for-dfid/

【参考】
Climate researchers led by the Vrije Universiteit Brussels used five sources of data: newly-generated global-scale simulations of climate impacts across six extreme event categories; life expectancy data from the United Nations World Population Prospects; global mean temperature scenarios compiled in support of the IPCC Special Report on Global Warming of 1.5 degrees Celsius; gridded population reconstructions and projections; and country-scale cohort size data provided by the Wittgenstein Centre’s Human Capital Data Explorer. 

The research calculates the exposure of an average person to climate impacts across their lifetime in 178 countries, 11 regions and the globe, then compares different age groups to calculate conservative estimates of lifetime extreme event occurrence as a consequence of climate change, while controlling for changes in life expectancy. The study defines current policies as the climate pledges outlined in each state’s Nationally Determined Contributions (NDCs) following the Paris Agreement and in this content considers a scenario with a global mean temperature increase of 2.4°C by 2100. The methods and results are documented in detail in a scientific publication published today in the renowned journal, Science.

Save the Children’s report was developed with the support of a Child Reference Group, made up of 12 children aged between 12-17 years old from Albania, Bangladesh, Chile, El Salvador, Guatemala, Kosovo, Norway, Somalia, Sri Lanka, the United States, and Zambia. The children laid out how the impacts of intergenerational climate change are infringing on their rights to life, education, and protection.

 

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