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アドボカシー
(公開日:2021.05.31)

新型コロナウイルス感染症 いまこそ、国際社会の対応をより公正な方向に転換する極めて重要なタイミングです

 
新型コロナウイルス感染症の世界的大流行(パンデミック)の影響は世界中に及び、子どもたちにも壊滅的な影響を与えています。今年の最初の数ヶ月間だけでも、約50%の国で、子どもの保健サービスを含むプライマリーヘルスケアサービスに何らかの支障が生じています。早急に対策を講じなければ、2022年までにさらに930万人の子どもたちが消耗症を患い、16万8,000人の子どもたちが栄養不良で死亡する可能性があります。



昨年(2020年)は、1億4,200万人の子どもたちが貧困に陥り、また数億人の子どもたちがいまだに学校に通えず、数百万人が学校に戻れないリスクに晒されています。そして、こうした状況は、すでに子どもたちとその家族の健康や栄養、生存に壊滅的な影響を与える気候危機や紛争に直面する中で起きています。

希望の光は、みんなに見えているわけではない
一部の国では、トンネルの終わりに光が見え始め、「正常な状態」に戻り始めています。新型コロナウイルス感染症のワクチンの接種が大きく前進している国もあります。それとは対照的に、他の多くの国では第2波、第3波に直面し、保健システムが疲弊しています。

例えば、インドでは変異株により感染者数が急増し、30万人近くの命が失われています。すでに医療従事者や資金が不足していた同国の保健システムにも壊滅的な影響がもたらされています。医療従事者は対応に苦慮しており、その多くが自ら感染しています。病院では、医療用酸素や必須医薬品、ベッドが不足しており、農村部では感染が拡大しています。母子保健サービスの中断により、子どもたちの命を救うための保健医療サービスを受けられなくなっています。

インドの隣国であるネパールでも、今月に入って感染者が急増しており、必要な保健サービスや教育が受けられなくなったり、貧困が拡大したりすることで、子どもたちへの深刻な影響が懸念されています。資源不足を抱える同国の保健システムでは、病院のベッドが不足しており、医療用酸素の供給も滞っています。

深まる格差
新型コロナウイルス感染症のパンデミックは、社会の不平等を増幅させました。富裕国と貧困国の間の経済格差は、富裕国の方が社会的セーフティネットを提供するための設備が整っているのみならず、個人用防護具、医療用酸素、ワクチンなど、対応のための医療品へのアクセスにおいてはるかに優位であることを意味しています。

高所得国は世界のワクチン供給量の3分の2を調達し、米国と英国だけで、世界で接種された10億3,000万回分のうち30%を占めています。低所得国のワクチンへのアクセスを目的としたCOVAXという枠組みで、これまでに提供された約6,800万本のワクチンは、それに比べるとはるかに少なく、世界全体の7%にも満たない状況です。また、アフリカでは、世界全体の2%しか接種されていません。

今回のパンデミックで、保健上の緊急事態への対応は富裕国の方が有利であるという厳しい現実が、再び明らかになりました。

世界的な連帯が叫ばれていますが、これまでのところ、国益や自衛のための空虚な言葉に過ぎません。世界が一丸となってこの世界的な保健上の脅威に取り組むべき時に、多くの国やその他の主要な機関の行動、および行動のなさは、私たちが住んでいる世界の不平等を明らかにしました。

保健システムへの投資を対策の中心に
新型コロナウイルス感染症による追加的な負荷を吸収し、支払い能力にかかわらず必要な保健医療サービスを継続的に提供するためには、回復力のある保健システムが不可欠です。

また、強力な保健システムは、新型コロナウイルス感染症やその他のワクチンを効果的に、かつ衡平に展開するための鍵となります。倉庫にワクチンがあっても、各国でそれを提供する仕組みを持っていなければ意味がありません。

国際社会は、この危機をチャンスに変え、パンデミックからより力強く立ち上がらなければなりません。

セーブ・ザ・チルドレンは、5月24日から6月1日まで開催中の第74回世界保健総会、これに続く6月2日の日本政府主催のCOVAXワクチン・サミット、さらに6月11日からのG7サミットにおいて、子どもたちの生存と成長の権利を守るために、政府をはじめとする主要な関係者に早急かつ公正な対応を求めています。

日本政府を含むドナー国は、新型コロナウイルス感染症の医療品の国際協調の枠組みであるACTアクセラレーターとCOVAX、およびワクチンへの衡平なアクセスを確保するための配送費用に対する拠出を行い、すでに確保しているワクチンの一部を緊急にCOVAXに提供しなければなりません。

さらに、ドナー(支援)国と製造会社は、新型コロナウイルス感染症の医療技術、知的財産、データの共有を支援し、ワクチンの潜在能力を最大限に引き出すために、他国の製造会社との投資や協力を優先しなければなりません。

いまこそ、パンデミックに対する国際社会の対応をより衡平な方向に転換する極めて重要なタイミングです。しかし、これを実現するためには、力ある立場の政府その他の機関が、緊急に行動を起こす必要があります。

 

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